狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

ヤクザと激甘新婚生活⁉

ヤクザと激甘新婚生活!?⑫

　しばらくすると尊からのご褒美である慈しむような優しいキスの嵐が過ぎ去っていた。

　尊は腕から解放した美桜の身体をベッドに横たえ、そのまま離れていこうとする。

　美桜は名残惜しさを覚えたが、今なにかを口にすれば余計なものまで口走ってしまいそうで、ぐっと堪えしのぐ。

　……そのつもりだったのだが。

　ベッド横のサイドチェストの引き出しから、尊が予め用意してあったらしい避妊具を取り出す姿を捉えた瞬間。慌てた美桜は尊の腕を掴んで言い募った。

「そのままの尊さんが欲しいです」

　その刹那、驚愕した様子の尊は口をあんぐりと開けたまま、その場に凍りついたように固まってしまう。

　だがすぐに我に返り、美桜の身体を引き剥がし肩をガッシリと掴んで、ドスの効いた低い声で凄んできた。

「お前、自分がなに言ってるかわかってんのか？」

　けれど尊と夫婦になると覚悟を決めて以来、心に決めていたことだ。今さらなにを言われようと美桜の心は揺るがない。

　なにより、こうして夫婦として尊の傍でいられるのには限りがあるのだ。その日がいつになるかもわからない。

　その日が訪れて、ひとりで生きていくためにも家族が欲しい。

　自分のことだけを必要としてくれる絶対的な存在。

　幼い頃に亡くした母がそうしようとしたように、愛した人との子供と生きていきたい。

　そして今度こそ、家族と一緒に幸せに暮らしたい。

　自分勝手で我が儘な望みでしかないのかもしれない。

　楽しいことばかりではないだろうし、辛いことの方が多いのかもしれない。

　実際、自分など生まれてこなければよかったのにと、思ったことだって一度や二度じゃない。

　でもそんなときには、祖父の弦一郎や麻美が傍にいてくれたし、兄の友人たちも励ましてくれた。

　そのお陰で、今こうしてここにいられる。

　尊の傍にいられなくとも、どんなに辛くとも、愛おしい尊との子供さえ傍にいてくれたら、なんだって乗り越えられるに違いない。

　達した余韻の冷めやらぬなか、美桜は気怠い身体にムチ打ち、そんな想いを込め、必死になって言葉を紡ぎ出す。

「わかってます。近い将来、ひとりで生きていくためにも、私を必要としてくれる家族が欲しいんです。母がそうだったように。それに夫婦なら子供をもうけるのは当然のことですよね。尊さんには迷惑かーー」

　だがその言葉は最後まで言い切ることは叶わなかった。

　なぜなら、尊が激情を押し殺すような苦しげな声音を喉奥から絞り出すように吐き出すと同時。美桜の身体に覆い被さってきたからだ。

「もういい、黙れ。俺の気持ちも知らねーで。お前はいつもいつもそうやって俺のことを……くそっ」

　突然のことに驚き、「キャッ」と短い悲鳴を放った美桜の身体をベッドに押さえつけるようにして、組み敷いた尊が怖いぐらいに真剣な強い眼差しで射るように見据えてくる。

「お前の望みは聞いてやる。だが子供を授かったら最後。なにがあろうと俺はお前を一生手放してやらないからな。嫌になって逃げても無駄だぞ。たとえ死んでも地獄の果てまで追いかけてやる」
「ーーん、んん～～ッ」

　そうして続け様に、有無を言わせない威圧感満載の重低音を轟かせ、呆気にとられ茫然自失に陥っている美桜の唇に噛みつくように口づけてきた。

　美桜のなにもかも全てを奪い尽くすような激しいキス。

　息継ぎをする暇さえも与えてもらえない。

　だがそれだけ尊が我を忘れているのだと思うと、どうにも堪らない気持ちになってくる。

　どうしてこうなったかの理由は不明だし、どこまで本気かはわからないが、図らずも、美桜の希望は叶えられそうだ。

　安堵した美桜は、たどたどしくも咥内で暴れまわる尊の舌に自分の舌を絡ませた。