上 下
65 / 101
ヤクザと激甘新婚生活⁉

ヤクザと激甘新婚生活⁉⑥

しおりを挟む

 まさかそんなことを訊かれるとは思いもしなかったために、美桜はなんとも間抜けな声を出してしまう。

「え?」
「『え?』じゃない。いいから言ってみろッ!」

 だが間髪入れず、尊に鬼のような形相で鼻息荒く追い立てるようにして問いただされ、美桜は答えるしかなかった。

「あっ、はい。高校の頃に胸が下品だ……って言われて……」

 尊の追及に弾かれるようにして返事を返し答えていくうち、薫に言われた際の感情が呼び起こされる。いたたまれなくなってしまった美桜の声も徐々に弱々しいものになっていく。

 対して尊は、美桜の言葉を聞いた瞬間、美桜を抱く腕にプルプルと力を込め、至極忌々しそうに怒声を響かせた。

「あの女、思春期の子供相手にそんなことをいうとはデリカシーの欠片もないなッ!」

    どうやら美桜に対して怒っている訳ではなく、酷いことを言った相手に憤っているようだ。

 そしてその相手が誰であるかの見当もついているような口ぶりである。

 尊の反応にどうしたものかと思いつつも、自分のことのように怒ってくれている尊の言動が嬉しくもあった。

 胸にあたたかなものが満ちてきて、辛い感情などもうどこかに吹き飛んでしまったかのような心地がする。

 美桜が人知れず喜びを噛みしめていると、まだ怒りを抑えられないといった様子の尊から再び問い返された。

「他にはなんと言われた?」
「へ?」

 もうすっかり違うところに意識が向いてしまってた美桜は、素っ頓狂な声しか出ない。

 そこへ尊はさっき同様、尚も厳しく追及してくる。

「『へ』じゃない。継母だからって庇う必要なんてない。事と次第によっちゃ、この俺が葬り去ってやるから、さっさと答えろッ!」

 その言葉には、物騒なものが混じっており、美桜は驚きのあまり一瞬唖然となる。

 ーー葬り去ってやるって。まさか、殺しちゃうってこと?

 だがすぐに一大事だと気づいた美桜は、尊のことを阻止しようと大慌てで声を放つ。

 同じく、自分の問いに答えようとしない美桜に痺れを切らしたらしい尊もまた、美桜のことを追及しようと行動に移す。

「いくら酷いことを言われたからって、殺すなんて駄目ですッ!」
「お前が許しても俺は許さないからな。妻であるお前を傷つけられて黙ってられるかッ!」

 その結果、美桜と尊の声とが同時にハモってしまうこととなった。

 尊は美桜の身体を組み敷いて見下ろしており、美桜は尊の顔を見上げるという体勢となっている。

 互いに言い切った直後、尊からの言葉を脳内で反芻している美桜の元に、一瞬だけハッとした様子を見せた尊から優しい声音が届いたときには、尊によって美桜の身体は再びぎゅっと抱きすくめられていた。

「怖がらせて悪かった。葬り去るって言ったのは、社会的地位を奪うってことだ。実際に殺す訳じゃないから安心しろ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

もう二度と、愛さない

蜜迦
恋愛
 エルベ侯爵家のリリティスは、婚約者であるレティエ皇太子に長年想いを寄せていた。  しかし、彼の側にはいつも伯爵令嬢クロエの姿があった。  クロエを疎ましく思いながらも必死に耐え続ける日々。  そんなある日、クロエから「謝罪がしたい」と記された手紙が届いて──  

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...