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ヤクザから突然のプロポーズ!?

ヤクザから突然のプロポーズ⁉④

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 やがて上映時間となり会場内の照明が落とされ、周囲から見えないのをいいことに、美桜は尊の胸に頬をくっつけ寄り添ったままでいた。

 プラネタリウムなのだから星を見るものだと思っていたのだが。

 星だけではなく、幻の花と言われている花を探し求めて世界各国を旅するという、花好きの美桜にとって、わくわくドキドキ心躍るテーマだった。

 それが幸いし、ここのところ忙しくしていたので、もしかしたら居眠りしてしまうかもしれない、という心配はなさそうだ。

 上映と共に暗転した会場の一面がスクリーンのようになり、夜空にキラキラと瞬く星々が映し出された。

 ナレーターの穏やかな声と共に場面が切り替わり、あたかも自ら世界各国を旅しているような心地になってくる。

 ーーふふっ 、なんだか、新婚旅行みたい。

 来週には尊と正式な夫婦となるが、お互いの仕事の都合で新婚旅行の予定などはたっていない。

 政略結婚なのだから、それは当然のことなのかもしれない。

 でもこうして、わざわざ時間を作って連れ出してくれた。

   その気持ちだけでも嬉しいというのに、一緒に寄り添い合っていられるなんて。

 ーーなんて幸せなんだろう。こんなにも幸せでいいのかなぁ。

 尊の胸に頬を預けたままの美桜がふいに尊の様子を窺うと、日頃の疲れのせいか目を閉ざした尊が微かに船を漕いでいるようだった。

 一緒に暮らすようになってちょうど一月にあるが、尊が帰ってくるのは、いつも美桜が就寝した後だというのに、起きるのも早い。

 そのため、尊の寝顔などまだ一度も見たことがなかった。

 加えて、転た寝するほど疲れているのに、自分のことを色々と気遣ってくれているのだと思うと、堪らない気持ちになってくる。

    ーーなんだか子供みたいで可愛いなぁ。

    思いがけず、貴重な尊の寝顔を拝むことができた美桜は、この上ない喜びを覚えていた。

    それからは、プラネタリウムなどそっちのけで、尊の寝顔ばかり眺めていた。

 プラネタリウムの後には、とっぷりと日も暮れ、ネオンが煌めき始めた街並みを車で少し移動して、銀座にある老舗高級ホテルとして名高い『帝都ホテル』の最上階にあるお洒落なレストランへと赴いている。

 プラネタリウムで上映されていた夜空を彷彿とさせるような、星空をイメージしているのだという、綺麗なプレートに注がれた旬の野菜で作られたスープを皮切りに、野菜と魚介類のサラダに、山菜や鴨のローストが添えられたパスタに高級黒毛和牛の創作料理、美味しいスイーツなどなど盛りだくさんのコース料理を堪能しているところだ。

    これまで厳しく育てられてきた美桜は、当然テーブルマナーなどは既に身についている。

   なので、大人の雰囲気溢れる静かな空間に、少々気後れはしても、尊のさりげないサポートもあり、その点においては何の問題もなく、終始落ち着いて食事を楽しむことができていた。

   そんな美桜から見ても感心してしまうほど、さすがは今をときめくIT企業の経営者だけあり、尊のテーブルマナーもさり気ない気配りもスマートかつ完璧だ。

    立ち居振る舞いは勿論のこと、所作にしても優雅でとても洗練されている。

    おそらくここのスタッフも周りの客も誰一人、尊が極道者だなんて思いもしないだろう。

「どうした?  口に合わないか? 」
「とんでもない。どのお料理も芸術品のようでとっても綺麗で、食べてしまうのが勿体なくて」

    本当は見惚れていたのと、一緒に居られるのが嬉しくて、胸がいっぱいなだけなのだが。そんなこと言えないし、バレる訳にはいかない。

「ふっ、そんなこと言って眺めてばかりいたら、不味くて食が進まないのかとシェフが勘違いして泣くぞ?」
「そ、それもそうですね」
「ああ。もし酒が飲めるなら、これならアルコール度数もそれほど高くないし飲んでみるといい」
「シャンパン……ですか?」
「いや、スパークリングワインだ」
「じゃあ少しだけ」

 さっきまでとは違った緊張感に苛まれつつも食事の合間に尊と談笑を混じえていたのだが、美桜にはもう一つ気になることがあった。

 それは、この一月の間、時折ヤスやヒサから聞かされてきた尊の身の上のことだ。
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