56 / 101
ヤクザから突然のプロポーズ!?
ヤクザから突然のプロポーズ!?③
しおりを挟む来月の六月から週に一度、ハッピーフラワープロジェクト関連で動画配信をすることになった。
その打ち合わせを終えた美桜がスタッフに挨拶をしていたとき、尊から連絡を受けたらしいヤスの指示により、すぐに着物からラフな洋服へと着替えをすませた。
そうしてニマニマとしたふたり見送られつつ、わざわざスタジオまで迎えに来てくれた尊の車へと乗り込んだ。
いつもは運転手付きの大きな高級車だが、今日は尊が自らハンドルを握ってくれている。
車には詳しくないが、こちらも高級なのだろうことが窺える、スポーツカーだ。
勿論、男性とふたりきりで車に乗ったことなどない美桜は、充分広い車内だとは言え、尊と密室でふたりきりだと思うと、それだけで緊張感に見舞われてしまう。
運転席の尊にうるさいぐらいに高鳴る胸の鼓動が聞こえやしないかと、ハラハラしどうしだった。
なにより、片手でハンドルをさばく尊の姿があまりにも様になっているものだから、目を逸らそうにも、囚われたように惹きつけられてそれさえもままならない。
「仕事も順調だと聞いてはいるが、少しは慣れてきたか?」
「……え、あっ、はい。なんとか」
運転の合間に尊に何度か話を振られたが、どんな返事をしたかも記憶にないほどだ。
そうこうしているうちに、銀座にある商業施設近くの地下駐車場へと到着し、連れてこられた場所は、最新の技術を駆使した体験型のプラネタリウムだった。
これまで家の駒となるためだけに生かされてきた美桜にとっては、男性とふたりきりでのドライブもプラネタリウムも、当然初めてのことだ。
館内に入ってからも、丸みのあるふたりがけのソファ席で尊と隣り合って座ってからも、何もかもが目新しくてしょうがない。
車内での緊張感など忘れた美桜は、小さな子供のように円らな黒目がちの瞳をキラキラと輝かせはしゃぎどうしだった。
「わぁ、凄いッ! こんなの初めてでドキドキしますッ!」
「……たかがプラネタリウムで大袈裟だな」
ふっと笑みを零した隣の尊から、笑み混じりの声音が聞こえ、我に返った美桜は、周囲からも好奇の目が向けられていたことに気づき、途端にシュンとし身を竦ませ項垂れる。
「……せっかく連れてきてもらったのに、騒がしくしてしまい、すみません」
「いや、謝らなくていい。連れてきた甲斐があったってもんだ」
「……え?」
「以前も言ったと思うが、いくら政略結婚とは言え、恋の一つも知らないお前のためにも、できるだけこういうデートのような真似事も味わわせてやりたいと思っただけだから、気にするなってことだ。いいな?」
「は、はい。ありがとうございます」
けれど尊から思いがけない言葉をかけてもらったことで、何もかもがどうでもよくなってくる。
極心会で暮らすようになってからというもの、尊の仕事も忙しくなって、美桜も慌ただしい日々を過ごすようになった。
寂しくてどうしようもないときもあったが、ヤスやヒサを通して、極心会の若頭である尊のことを垣間見たり、尊の気遣いに触れるたびに、尊への想いも募りに募ってしまっていたのも事実だ。
よく、会えない時間が愛を育てるなどと言うが、どうやら本当にそうであるらしい。
ソファにゆったりと背中を預けている尊に、肩を抱き寄せられ、頭をポンポンと優しく撫でてもらった美桜は、返答しながら尊の広くてあたたかな胸へとそうっと頬を預けて、この幸せをひっそりと噛みしめていた。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「お腹の子も君も僕のものだ。
2度目の離婚はないと思え」
宣利と結婚したのは一年前。
彼の曾祖父が財閥家と姻戚関係になりたいと強引に押したからだった。
父親の経営する会社の建て直しを条件に、結婚を承知した。
かたや元財閥家とはいえ今は経営難で倒産寸前の会社の娘。
かたや世界有数の自動車企業の御曹司。
立場の違いは大きく、宣利は冷たくて結婚を後悔した。
けれどそのうち、厳しいものの誠実な人だと知り、惹かれていく。
しかし曾祖父が死ねば離婚だと言われていたので、感情を隠す。
結婚から一年後。
とうとう曾祖父が亡くなる。
当然、宣利から離婚を切り出された。
未練はあったが困らせるのは嫌で、承知する。
最後に抱きたいと言われ、最初で最後、宣利に身体を預ける。
離婚後、妊娠に気づいた。
それを宣利に知られ、復縁を求められるまではまあいい。
でも、離婚前が嘘みたいに、溺愛してくるのはなんでですか!?
羽島花琳 はじま かりん
26歳
外食産業チェーン『エールダンジュ』グループご令嬢
自身は普通に会社員をしている
明るく朗らか
あまり物事には執着しない
若干(?)天然
×
倉森宣利 くらもり たかとし
32歳
世界有数の自動車企業『TAIGA』グループ御曹司
自身は核企業『TAIGA自動車』専務
冷酷で厳しそうに見られがちだが、誠実な人
心を開いた人間にはとことん甘い顔を見せる
なんで私、子供ができた途端に復縁を迫られてるんですかね……?
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。
若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。
40歳までには結婚したい!
婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。
今更あいつに口説かれても……
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
泉南佳那
恋愛
植田奈月27歳 総務部のマドンナ
×
島内亮介28歳 営業部のエース
******************
繊維メーカーに勤める奈月は、7年間付き合った彼氏に振られたばかり。
亮介は元プロサッカー選手で会社でNo.1のイケメン。
会社の帰り道、自転車にぶつかりそうになり転んでしまった奈月を助けたのは亮介。
彼女を食事に誘い、東京タワーの目の前のラグジュアリーホテルのラウンジへ向かう。
ずっと眠れないと打ち明けた奈月に
「なあ、俺を睡眠薬代わりにしないか?」と誘いかける亮介。
「ぐっすり寝かせてあけるよ、俺が。つらいことなんかなかったと思えるぐらい、頭が真っ白になるまで甘やかして」
そうして、一夜の過ちを犯したふたりは、その後……
******************
クールな遊び人と思いきや、実は超熱血でとっても一途な亮介と、失恋拗らせ女子奈月のじれじれハッピーエンド・ラブストーリー(^▽^)
他サイトで、中短編1位、トレンド1位を獲得した作品です❣️
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる