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ヤクザと政略結婚!?
ヤクザと政略結婚!?⑥
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その間にも、尊はゆっくりジリジリと焦らすようにして、美桜との距離を詰めてくる。
いつしか吐息のかかりそうな近い距離に尊の端正な相貌が迫っていた。美桜は思わずギュッと目を瞑る。その刹那。
尊は美桜の耳元で、ふっと軽く笑みを零した。
「こんなところで処女のお前を抱く気はないから安心しろ。抱くなら、たっぷりじっくり時間をかけて、嫌というほど可愛がってやる」
たっぷりと含みを持たせた尊からの意味深な台詞に、美桜は見る間に、顔どころか全身まで、紅く色づけられてしまう。
真っ赤になって身悶える美桜のことを満足そうに見遣ると、尊はあっさりと美桜の身体から退いた。
そうしてさっさと身なりを整えると、長い脚を組み、前髪を掻き上げる。
ただそうしているだけで、絵になってしまうのだから、なんとも羨ましい。
特に、今日は政略結婚の申し入れをするということで、英国産のクラシカルなブライトネービーのスリーピーススーツをチョイスしているらしい。
おそらくオーダーメイドだろう。上品な光沢を放っている。
昨日のダークスーツとは違い、雰囲気も爽やかで、とても若々しく見える。
なにより、とても似合っていて、極道者には見えない。どこからどう見ても、IT企業の経営者である。
なんともスタイリッシュな尊の姿に、知らず魅了されてしまっていた美桜はポカンと見蕩れてしまっていた。
ーー凄く似合ってて、素敵だなぁ。こんな素敵な人と、結婚するんだ。奥さんになって、尊さんの子供まで……!
羞恥も忘れ、呑気なことを思考しているうち、子作りの過程を連想してしまう。
途端に昨夜のアレコレの記憶が蘇り、ボンッと発火しそうなほど、顔に熱が集中する。
焦った美桜は、大慌てで起き上がり、着物の乱れを手早く正した。続いてシートベルトを締めようにも上手くいかない。
焦れば焦るほど、ガチャガチャと金属音を響かせるだけだ。
そんな美桜の眼前に、不意に顔を寄せてきた尊が横から顔を覗き込んでくる。
ーーこ、今度はなに?
未だ羞恥に塗れていた美桜は、再びの至近距離に、思わず息を呑む。
「貸してみろ」
「ーーへッ!?」
尊のことを過剰に意識したせいで、言われた言葉が頭に入ってこず、素っ頓狂な声をあげてしまう。
そのことで、尊に揶揄われる羽目になってしまうのだが……。
「シートベルトのことだ。お前はいっつもボーッとしてんな」
「そ、そんなことないですよ。今のはたまたまです」
「ふっ、たまたまねぇ」
「あっ、信じてない。本当ですから」
「ああ、わかったわかった」
屈託なく笑う尊とのやり取りの中で、美桜は、既視感のようなものを覚えた。
おそらくそれは、こんなふうに時折尊が垣間見せる、子供のように笑う無邪気な笑顔が見慣れないせいか、幼い頃に機嫌をとってくれた兄の友人のことを思い出させたのだろう。
今まで、身近な男性と言えば、家族しかいなかったため、そう感じてしまうのかもしれないが、それだけじゃないような気もする。
ーーそう思ってしまうのも、尊さんのことを好きになってしまったからなんだろうなぁ。
これまでのように、これからもずっと家の駒としてしか生きられないと思っていたのに。
政略結婚ではあっても、こうして好きな人と結婚できるなんて、夢のようだ。
尊にシートベルトを装着してもらった美桜の胸は、ほんわりとあたたかなものに満たされていた。
それからは、もうさっきのように、尊が美桜の覚悟を試すようなこともなく。
「今から、極心会について説明しておく」
代わりに、尊が若頭として身を置く極心会のことを語りはじめた。
いつしか吐息のかかりそうな近い距離に尊の端正な相貌が迫っていた。美桜は思わずギュッと目を瞑る。その刹那。
尊は美桜の耳元で、ふっと軽く笑みを零した。
「こんなところで処女のお前を抱く気はないから安心しろ。抱くなら、たっぷりじっくり時間をかけて、嫌というほど可愛がってやる」
たっぷりと含みを持たせた尊からの意味深な台詞に、美桜は見る間に、顔どころか全身まで、紅く色づけられてしまう。
真っ赤になって身悶える美桜のことを満足そうに見遣ると、尊はあっさりと美桜の身体から退いた。
そうしてさっさと身なりを整えると、長い脚を組み、前髪を掻き上げる。
ただそうしているだけで、絵になってしまうのだから、なんとも羨ましい。
特に、今日は政略結婚の申し入れをするということで、英国産のクラシカルなブライトネービーのスリーピーススーツをチョイスしているらしい。
おそらくオーダーメイドだろう。上品な光沢を放っている。
昨日のダークスーツとは違い、雰囲気も爽やかで、とても若々しく見える。
なにより、とても似合っていて、極道者には見えない。どこからどう見ても、IT企業の経営者である。
なんともスタイリッシュな尊の姿に、知らず魅了されてしまっていた美桜はポカンと見蕩れてしまっていた。
ーー凄く似合ってて、素敵だなぁ。こんな素敵な人と、結婚するんだ。奥さんになって、尊さんの子供まで……!
羞恥も忘れ、呑気なことを思考しているうち、子作りの過程を連想してしまう。
途端に昨夜のアレコレの記憶が蘇り、ボンッと発火しそうなほど、顔に熱が集中する。
焦った美桜は、大慌てで起き上がり、着物の乱れを手早く正した。続いてシートベルトを締めようにも上手くいかない。
焦れば焦るほど、ガチャガチャと金属音を響かせるだけだ。
そんな美桜の眼前に、不意に顔を寄せてきた尊が横から顔を覗き込んでくる。
ーーこ、今度はなに?
未だ羞恥に塗れていた美桜は、再びの至近距離に、思わず息を呑む。
「貸してみろ」
「ーーへッ!?」
尊のことを過剰に意識したせいで、言われた言葉が頭に入ってこず、素っ頓狂な声をあげてしまう。
そのことで、尊に揶揄われる羽目になってしまうのだが……。
「シートベルトのことだ。お前はいっつもボーッとしてんな」
「そ、そんなことないですよ。今のはたまたまです」
「ふっ、たまたまねぇ」
「あっ、信じてない。本当ですから」
「ああ、わかったわかった」
屈託なく笑う尊とのやり取りの中で、美桜は、既視感のようなものを覚えた。
おそらくそれは、こんなふうに時折尊が垣間見せる、子供のように笑う無邪気な笑顔が見慣れないせいか、幼い頃に機嫌をとってくれた兄の友人のことを思い出させたのだろう。
今まで、身近な男性と言えば、家族しかいなかったため、そう感じてしまうのかもしれないが、それだけじゃないような気もする。
ーーそう思ってしまうのも、尊さんのことを好きになってしまったからなんだろうなぁ。
これまでのように、これからもずっと家の駒としてしか生きられないと思っていたのに。
政略結婚ではあっても、こうして好きな人と結婚できるなんて、夢のようだ。
尊にシートベルトを装着してもらった美桜の胸は、ほんわりとあたたかなものに満たされていた。
それからは、もうさっきのように、尊が美桜の覚悟を試すようなこともなく。
「今から、極心会について説明しておく」
代わりに、尊が若頭として身を置く極心会のことを語りはじめた。
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