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鳥籠から出るために
鳥籠から出るために⑫
しおりを挟む羞恥に襲われ身を縮こめている美桜の耳に、尊の不可解な言葉が流れ込んでくる。
「真っ赤になって恥じらう愛らしいお前と一緒で、美味そうだな」
ーー愛らしいって言った? でも、美味そうって、どういう意味だろう。
羞恥に塗れつつも、心の中で尊の言葉を反芻するも、『愛らしい』は理解できても、それが『美味い』にはどうしても繋がらない。
それに恋愛経験は皆無だが、こういうとき、男性が女性を褒めるものだということくらいは、知っている。
なので愛らしいと言われた嬉しさよりも、疑問のほうが上回っていた。
思考に耽っている美桜の視界のなかで、尊が微かに相好を崩す。
うっとりするほど艶かしいただならぬ色香を纏った尊のニヤリとした不敵な微笑。
目の当たりにした瞬間、美桜の身体がゾクゾクッと泡立つような可笑しな感覚に陥った。
そうしてその感覚が何からくるかもわからないまま、妖艶さを増した尊によって胸元へと顔を埋められてしまう。
当然だが、ただ埋められたわけではない。
粟立つ美桜同様に、ふるふると微かに悩ましく揺らめいていた胸の先端に、もう我慢ならないとばかりに、むしゃぶりつかれたのである。
「ーーひゃんッ!?」
たちまち美桜の身体はビクンと大きく跳ね上がった。
のたうつように跳ね上がる美桜の華奢な身体をシーツに押さえつけるような体勢で、尊が覆い被さっている。
その様は、あたかも飢えた獣が捕らえた獲物の急所に狙いを定め、とどめでも刺しているかのよう。
尊は、美桜に愛撫を施しつつ、身につけていたスーツのジャケットを手早く脱ぎ去り、ベッドの外へと放り投げた。
同じく煩わしそうにネクタイを緩め、シュルッと襟元から抜き去り投げ捨てる。
続いて右手では、熟れた果実のようにたわわな膨らみを淫らな形へ変えながら、やわやわと揉みしだく。
口腔にはツンと勃起した乳首を含み、熱くねっとりとした舌と唇とを巧みに使い、チロチロと舐めたり、コリコリ転がしたり、チュウッと吸引したりを繰り返す。
時折、尖った犬歯を穿ち、嬲るように弄ぶ。
「やぁ、ああッ……んぅ」
尊によって初めて味わわされる甘すぎる快樂に、美桜はあられもない声を発しながら、あられもない姿で善がり乱れることしかできずにいる。
美桜が持つ乏しい知識のなかにも、セックスがどういうものであるかということも、当然含まれている。
けれども実際に自分がそういう状況に置かれるのとではまったく違う。
胸を攻め立てられているだけだというのに、こんなふうになるなんて、思いもしなかった。
この世のものとは思えないほどの甘やかな快感に身悶え続ける美桜は、息も絶え絶えだ。
そんな美桜の眦には、悲しくもないのに透明な雫が滲みはじめていた。
悦楽に塗れて、今にも泣き出しそうな美桜の切なげな顔を一瞥すると、口での愛撫を中断させて、やはり感心したような声を放つ。
「まだ胸にしか触れてないのに、そんなに乱れて。えらく敏感なんだな」
その言葉に、自分がとても淫らではしたないと言い渡されている気がして、たちまち身体が滾るように熱くなる。
それなのに、美桜に追い打ちでもかけるようにして、尊から意地の悪い声音が投下されてしまう。
「この様子だと、もう濡れてるんじゃないのか」
だが、こういう経験が皆無な美桜にとっては不可解な言葉でしかなかった。
不適な微笑を湛えて見下ろしている尊の端正な顔を捉えてキョトンとしていると、乳房を鷲掴んでいた尊の手の動きがピタリとやんで離れていく。
ようやく絶え間のない快楽から解放されたと安堵する間もなく、あろうことか、着物の裾の合わせ目から手を忍び込ませてきた。
あっと驚きの声を発するよりも先に、下着のクロッチ越しに何かを探るようにして、厭らしい手つきで秘裂をなぞりあげられてしまう。
「////ーーッ!?」
絶え間のない快楽のせいで気づかなかったが、明らかに湿り気を帯びた下着の冷たい感触に驚愕した美桜は、声にならない声を発して身悶える。
不浄の場所に触れられたというだけでも恥ずかしくて堪らないというのに、それだけではなかった。
尊に胸を愛撫されている際、身体の芯が火照り、下腹部の奥にズクズクと疼くような妙な感覚を自覚してはいたのだが。
まさか下着まで濡らしていたとは思いもしなかったのだ。
美桜が下着がしっとりと濡れた感触に慄いているところに、相変わらず感心したような表情の尊から、なんとも意地の悪い言葉が寄越されてしまう。
「凄いな。下着までぐっしょり濡れてるぞ。俺に胸をしゃぶられるのが、そんなに気持ちよかったか?」
「////ーーち、ちがっ」
とんでもない羞恥に見舞われた美桜が叫ぶように反論を返すも。すかさず。
「そうか。なら、今度は、物欲しそうに涎を垂らしてる、こっちを可愛がってやらないとな」
口元に微かに不敵な笑みを湛えた尊から、なんとも卑猥で意地の悪い意味深な言葉が投下されてしまう。
その意味を美桜が理解したときには、もう既に下着を避け、溢れかえった蜜で、すっかり泥濘んでしまったいる蜜口へと、尊の長く節くれ立った指がズブズブと根元まで沈められていた。
「あっ、やぁ……んんッ」
尊の指を初めて胎内に受け入れたという異物感に、美桜が慄いているうちに、いつしか身体はくの字に折り曲げられてしまっている。
ほんの一瞬の出来事に、まったく思考が追いついていかない。
呆然としてしまっている美桜が目を瞠った先には、今まさに大胆に押し開いた美桜の股ぐらへと顔を埋めようとしている尊の端正な顔が待ち構えてるという、とんでもなく恥ずかしい状況に追い込まれてしまっていた。
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