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3 魔法
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11月25日 8:30
僕とアイリスは朝食後身支度を整え近場の公園へと出かけた。周りを見渡しても犬を散歩させているおじいさんくらいしか人は見えない。人はなるべくいないほうがいい。人がいたら危ないし何よりアイリスはアンドロイドだ。ばれない自信があっても見られないに越したことはない。でも今の僕にはそんなことより……
「さむっ」
「マスター。もう少し厚着してきてもよかったのでは」
自分よりずっと薄い服を着たアイリスが首をかしげて言った。
「そうだね」
冬の朝というのをなめていた。普段はすぐ暖房のきいたバスに乗っているから気になってなかっただけだろう。
僕がぶるぶると震えている横で待ちきれないといった風にアイリスはソワソワしている。その姿を見ていると子供のころの自分を思い出した。
「魔法使っていいですかね」
「ちょっ、ちょっと待って」
僕は急いで距離をとる。20メートルくらい走ってとまりアイリスに声をかける。
「もーだいじょーぶだよー」
大声でそう言うと向こうからも返ってくる。
「マスター、とーすぎませんかー」
「こーいうときには近くにいちゃダメなんだよー」
まあアイリスの言う通り正直距離取りすぎだとは思う。でも怖いんだもん。昔それで服を焦がされたことがあったし。
するとアイリスはたたたっと走って僕のほうによって来た。懐まで入ってきたあたりで上目遣いをしながらねだるように、
「マスター。私、魔法使うのちょっと怖いんです。だから近くにいたら心強いなって」
と言った。
嘘だ。さっきまでそんな仕草一切見せていなかった。しかし僕はアイリスのウルウルとした目を見たら誘惑に負けた。
「わかったよ」
「やったあ!」
騙せたからかうれしそうにしている。表情は数秒前とは打って変わって晴れやかだ。
それを横目に僕はため息をついた。やっぱり嘘だったか。少し人間らしく作りすぎたかもしれないな。そんな後悔のような自慢のような嘆きを心の中でした。
そんな中アイリスは準備OKといった風だった。
「いきますよ」
「おう」
するとアイリスの左手が白く輝き始めた。そして一瞬世界が真っ白になった。が、すぐに真っ暗になる。
僕はパニックになった、が、目の前からするりと布のようなものが落ちた。すると世界に色が戻った。
おそらくこれが目を隠していたのが原因だろう。そう思い布のようなものを手に取った。
紺色のワンピースだった、さっきまでアイリスが着ていたはずの。
「アイリス。だいじょう……」
いやな予感がしてアイリスのほうを見ると、予想通り白い下着姿のアイリスがいた。
「こっち見ないでくださいマスター!」
顔を真っ赤にしたアイリスは叫んだ。
「ご、ごめん!」
僕は即座に後ろを向く。起動する前にさんざん見た、何なら着せたまでしたアイリスの下着だったが妙な背徳感のようなものを感じドキドキする。
少しずつ僕に近づいてきながら言った。
「マスター。服返してもらえますか」
「ああ、うん」
僕が振り向こうとすると、
「こっちみないで!」
もう一度言われてしまった。
最終的には後ろを向いた僕が手に持ったワンピースをアイリスに渡すことになった。
しかし人がいなくて本当よかった。こんなところを見られたらなんて思われただろうか。想像するだけで恐ろしい。
するとアイリスは僕の肩をつついた。振り返るともうワンピース姿に戻っている。
「……帰りましょうか」
「……そうだね」
二人はとぼとぼと家に帰った。
僕とアイリスは朝食後身支度を整え近場の公園へと出かけた。周りを見渡しても犬を散歩させているおじいさんくらいしか人は見えない。人はなるべくいないほうがいい。人がいたら危ないし何よりアイリスはアンドロイドだ。ばれない自信があっても見られないに越したことはない。でも今の僕にはそんなことより……
「さむっ」
「マスター。もう少し厚着してきてもよかったのでは」
自分よりずっと薄い服を着たアイリスが首をかしげて言った。
「そうだね」
冬の朝というのをなめていた。普段はすぐ暖房のきいたバスに乗っているから気になってなかっただけだろう。
僕がぶるぶると震えている横で待ちきれないといった風にアイリスはソワソワしている。その姿を見ていると子供のころの自分を思い出した。
「魔法使っていいですかね」
「ちょっ、ちょっと待って」
僕は急いで距離をとる。20メートルくらい走ってとまりアイリスに声をかける。
「もーだいじょーぶだよー」
大声でそう言うと向こうからも返ってくる。
「マスター、とーすぎませんかー」
「こーいうときには近くにいちゃダメなんだよー」
まあアイリスの言う通り正直距離取りすぎだとは思う。でも怖いんだもん。昔それで服を焦がされたことがあったし。
するとアイリスはたたたっと走って僕のほうによって来た。懐まで入ってきたあたりで上目遣いをしながらねだるように、
「マスター。私、魔法使うのちょっと怖いんです。だから近くにいたら心強いなって」
と言った。
嘘だ。さっきまでそんな仕草一切見せていなかった。しかし僕はアイリスのウルウルとした目を見たら誘惑に負けた。
「わかったよ」
「やったあ!」
騙せたからかうれしそうにしている。表情は数秒前とは打って変わって晴れやかだ。
それを横目に僕はため息をついた。やっぱり嘘だったか。少し人間らしく作りすぎたかもしれないな。そんな後悔のような自慢のような嘆きを心の中でした。
そんな中アイリスは準備OKといった風だった。
「いきますよ」
「おう」
するとアイリスの左手が白く輝き始めた。そして一瞬世界が真っ白になった。が、すぐに真っ暗になる。
僕はパニックになった、が、目の前からするりと布のようなものが落ちた。すると世界に色が戻った。
おそらくこれが目を隠していたのが原因だろう。そう思い布のようなものを手に取った。
紺色のワンピースだった、さっきまでアイリスが着ていたはずの。
「アイリス。だいじょう……」
いやな予感がしてアイリスのほうを見ると、予想通り白い下着姿のアイリスがいた。
「こっち見ないでくださいマスター!」
顔を真っ赤にしたアイリスは叫んだ。
「ご、ごめん!」
僕は即座に後ろを向く。起動する前にさんざん見た、何なら着せたまでしたアイリスの下着だったが妙な背徳感のようなものを感じドキドキする。
少しずつ僕に近づいてきながら言った。
「マスター。服返してもらえますか」
「ああ、うん」
僕が振り向こうとすると、
「こっちみないで!」
もう一度言われてしまった。
最終的には後ろを向いた僕が手に持ったワンピースをアイリスに渡すことになった。
しかし人がいなくて本当よかった。こんなところを見られたらなんて思われただろうか。想像するだけで恐ろしい。
するとアイリスは僕の肩をつついた。振り返るともうワンピース姿に戻っている。
「……帰りましょうか」
「……そうだね」
二人はとぼとぼと家に帰った。
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