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ミロ✕省吾番外編

ミロ✕省吾番外編11

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 宴が進み、省吾がトイレへと席を立つ。彼の姿が見えなくなり、ミロはサイに首を掴まれた。
 
「どうしたのよ、アンタ達。喧嘩でもしてんの?」

 やはり彼には見抜かれていたか。ノアはそんな二人を酒により蕩けた瞳でぼんやりと見つめていた。見れば彼の近くに空になったグラスが何杯も転がっている。
 
「……やっぱ、サイもそう思うか?」
「全然目があわないじゃない! しかも省吾もなんかよそよそしいし!」

 ヒソヒソと耳元で囁かれる。
 
「……原因はわからないが、ここのところずっとそうなんだよ」
「喧嘩してるんなら、早めに仲直りしなさいよ?」
「喧嘩はしていないんだが……」

 ミロは眉尻を下げる。一気に色んな嫌なことを思い出した。省吾が浮気をしているなどと疑っているわけではないが、やはりそっけない態度は胸に来る。

「なんだかよくわからないけど、私が気がつくくらいなんだから、早めに話し合ったほうがいいわよ。ただでさえ普段会えないんだから」

 サイはミロから手を離して体を引いた。卓上の果物の一切れをフォークで突き刺し口へと運ぶ。

「恋人同士だからって胡座かいてると、他の人に奪われちゃうかもよ。あれで省吾モテるし」
「モテるのか!?」

 ば、とミロはサイの方を振り向く。サイは赤い果物を口内に入れた。

「モテるわよ。たまに男からも女からも食事に誘われてるし」

 そうなのか、と唇を引き結ぶ。ダミアン達にやたら気に入られていたようだが、彼等の場合裏に省吾の研究を探るという目的があった。
 モヤモヤと黒いものが胸の中に広がっていく。
 そうだろうな、とは思っていたが、実際にそうだと他人から聞くのではまた違う。外に出て省吾の世界が広がったのはいいことだ。けれど、多くの人間を知ってしまうことでミロ以外の人間に目移りしたらどうしよう、と考えないことはない。
 俯いてしまったミロの頭に手が載せられ、グリグリと撫でられる。視線をあげると、ノアだった。

「まぁまぁ。省吾は誘われたからって簡単についていくような子じゃないって。それは二年間一緒にいたからミロもわかっているでしょ?」

 ニコニコと笑う幼馴染みに心が癒やされる。ちょうどその時、省吾が戻ってきた。

「……何の話していたんだ?」

 省吾は貼り付けたような笑顔を浮かべ、元の位置に座る。ノアが口を開く前にサイが告げた。

「仕事の話よ。そんなことより、これ食べてみなさいな。美味しいわよ」

 相変わらず彼の空気を読む能力に助けられる。話題をシフトさせ、深く追求されることはなかった。




 サイとノアと別れ、ミロと省吾は二人で省吾の部屋へと行く。
 今日休んだぶん、明日は仕事だったが午後からだったので泊まっていく事にしたのだった。相変わらず二人きりになったら気まずい空気が流れる。ミロの少し前を歩き、話はするもののけして顔を合わせない省吾に抱えていた不満が、部屋で二人きりになると吹き出してしまった。

「なぁ、省吾。ちょっと話し合わないか?」

 部屋に入ると省吾は台所へ向かい、湯を沸かしていた。その背中に向かって声をかける。びくり、と省吾の肩が震えた。
 
「……何」

 どこか警戒するような顔をしている。気まずい雰囲気にしたくない。出来るだけ明るくミロは返した。
 
「なんか、最近色んなやつに食事に誘われるらしいな」

 浮気しているか? なんて直球には聞けない。言われた言葉に省吾は不思議そうに首をかしげた。
 
「あ、ああ。良くしてもらってるよ。ほら、隣のリィトともたまに食事に行くようになったし」

 ミロは省吾の隣人を思い出す。サファイアの瞳を持つ美しい男だった。人見知りらしく、未だにミロには慣れてくれていない。
 
「その……、夜とかも、よく行くのか?」
「うん。あまり酒は飲まないけど」

 省吾は首肯する。ミロはダイニングチェアに座り、視線を宙に彷徨わせた。ちょうど湯が湧いたので省吾はポットに入れ茶を蒸らす。
 
「そうか……。特別仲いい奴とか、いたりするのか?」
「特別……、うーん。ダミアン達とは仲良かったけど、ああなっちゃったしなぁ」

 ポットとカップを持って省吾も椅子に座った。湯気が二人の間を阻む。ミロはポットに視線を落としたまま続けた。
 
「……仲良くって、どこまで?」

 ダミアン達が省吾とセックスをしたとはミロも思っていない。けれど、グリゴリーが再生した音は未だに気になっていた。
 
「どこって……」
「部屋にあげたり……」
「ああ、たしかに部屋に来てゲームしたことはあったな。罰ゲームで三人がかりでマッサージされたんだけど、俺、体が硬くてさ。ツボとか足の裏とか押されるたびにすっごく痛くて……」

 省吾が笑いながら話をする。ミロは目を見開いた。
 
「……マッサージ」
「……? うん」

 ミロの態度に省吾は何度もまばたきをする。不審に思っているのだろう。ミロは頭を抱えて盛大に安堵のため息をこぼした。
 
「そうか……。なるほどな……」

 そして、ダミアン達に聞かせられた音源について話をする。聞き終えた省吾は頬を真っ赤にしてワナワナと震え始めた。
 
「なっ……、そ、そんな所録音していたのかよ!? 言っておくけど、体触ったっていっても服越しだからな!? てか、俺ミロ以外に触らせてなんかないから!」

 何度も机を叩きながら省吾は喚く。むしろミロの方が慌てて省吾の肩を掴んだ。
 
「……てか、もしかして、ミロ。お前、俺が浮気してるかもって疑ってたのか?」

 恨みがましい目である。ミロは視線をそらし、力なく首を横に振った。我ながら嘘をつくのが下手で嫌になる。省吾は眉間にシワを作った。
 
「それで言うなら、ミロだっていつもノアとベタベタベタベタして……! 今日だって居酒屋で頭撫でられてたし、学会の前も頭撫でてたし!」
「は? ノア?」

 ミロは目を丸くする。彼とミロがただの幼馴染みであることは省吾もよく知っているはずである。省吾の瞳はアルコールのせいか、他の原因か、少し潤んでいた。
 
「いや、ノアはないだろ……」
「他にも色んな女に声かけられてるし……!」
「あれもちゃんと断ってるだろ!?」
「それでも心配なんだよ! ミロ、成長するに従ってどんどん色気も出てくるし……、かっこよくなっていってるし」

 ボソボソと省吾がテーブルの木目を見ながら呟いている。最後の方は聞き取りづらかったが、ミロの耳にしっかりと入ってきていた。
 
「……色気?」

 コクリ。省吾が頷く。もしかして、とミロは思った。
 
「もしかして、最近俺の方を見なかったのって……」

 う、と省吾は呻いて椅子ごと後ずさる。狭い部屋でどこに逃げようと言うのだろうか。省吾は顔を覆う。
 
「あー……、そうだよ。照れてたんだよ。言わせんな、恥ずかしい……」

 彼の言葉に心臓の鼓動が早くなる。何なんだこの可愛い生き物は。
 ミロは立ち上がり、省吾の近くに移動すると彼の手を引き寄せる。
 
「もう一回言ってくれないか?」

 じ、と上目遣いに省吾を見る。少し甘えたこの表情は省吾の好きな顔の一つだ。省吾は何度か視線を左右に動かし、それから言葉のかわりに抱きついて乱暴なキスを返してきたのだった。
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みんなの感想(26件)

もくれん
2024.01.03 もくれん
ネタバレ含む
箱根ハコ
2024.01.03 箱根ハコ

もくれん様!
このたびはこちらのほうにもご感想をいただきありがとうございます。
ミロ✕省吾もクリス✕リィトも書いてて楽しかったので、
優しいコメントを頂き嬉しいです!

こちらこそ楽しんでいただきありがとうございました!

解除
由
2023.10.28

番外編も読みました!2人の焦ったさが可愛かったです。どの時代にも世界にも球体の様に火の当たる良い面と火の当たらない悪い面があるんだなぁ等とか考えました。でも妨害良くない。後前の感想でリィトを打ち間違えたまま…御免なさい。次回作品もあるのかなぁ?一先ず番外編迄完結お疲れ様でした!

箱根ハコ
2023.11.08 箱根ハコ

返信が遅くなってすみません!!通知に気が付かなかったです!
ご感想をありがとうございました!
普通にイチャラブな話にすればよかったのにそこのあたりが気になってしまいつい書いてしまいました……(笑)
しばらく別の小説書くのでこの話自体は終わりです!良ければまた別のお話を投稿した時に読んでいただければと!どうぞよろしくお願いします〜!

解除
あゆ
2023.10.22 あゆ

同じのが2個上がってますよ!

箱根ハコ
2023.10.23 箱根ハコ

ご指摘ありがとうございます!!
修正いたしました!

他にもご指摘を頂いた方、本当にありがとうございます。

解除

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