44 / 60
スピンオフ「クリス✕リィト編」
スピンオフ「クリス✕リィト編」第11話
しおりを挟む
クリスがトイレに行った隙に、リィトはポケットから惚れ薬を取り出す。ガラス製の小瓶はキラキラとランプの明かりを反射して光っていた。
一日で効果が切れて、しかもその間のことは忘れてしまう。
クリスはリィトに対して、恋愛相手とは見られないようだった。
でないと、恋人ができれば嬉しいだなんて到底言えない。少なくともリィトはクリスに恋人が出来たら、発狂してしまう自信はある。
では、リィトがクリスに告白したらどうか。
何度も考えた可能性は、けれど幼馴染みを失いたくない一心で否定した。彼に断られ、気まずくなって会うこともできなくなるなんて嫌だ。
ぎゅ、とリィトは惚れ薬の蓋を開けるとクリスのワインに向かい全部入れたのだった。
「あれ? ワインの味、ちょっと変わってないかい?」
クリスは飲みかけのワインに再び口づけると首を傾げる。リィトは用意しておいた別の瓶を出した。
「バレたか……。実は、このワインが少し残っていたから僕のとクリスのに入れておいたんだ」
「へぇ、そうなんだ」
クリスはすぐに順応してワインを飲む。褒められた飲み方ではないが、案外混ぜても美味しいんだね、とクリスは笑ってくれていた。
じ、とリィトはクリスを観察する。
彼はリィトと目があうと、首をかしげて微笑んだ。かわいい。好き。とつい口に出しそうなところを我慢してリィトも笑顔を作る。
クリスの頬が赤くなった。ん? とリィトは目を細めクリスを観察する。
クリスの反応は、自分に好意を寄せる多くの男女と同じだった。瞳が潤み、熱がこもっていく。
リィトは自分の心臓が音を立てて暴れまわるのを感じた。
「……どうしたんだい? クリス」
わかっているくせに小首をかしげて尋ねる。クリスはぱっと目をそらした。
「ごめん……。なんでか今日の君はすごく綺麗に思えて……」
「そうかい?」
リィトは震えそうになるのを必死に堪える。緊張で喉が渇いていた。
クリスは視線を宙に浮かべる。
「えっと……、なんだか熱くなってきたな。酔っているみたいだし、今日のところはこれで帰ろうかな」
ガタ、とクリスは席を立つ。慌ててリィトは引き止めた。
「酔っているのなら、無理に帰るのは危ないんじゃないかい? 泊まっていきなよ!」
「え」
クリスは首まで赤く染まり、慌ててリィトの手から逃れる。
「だ、ダメだよ! そんなの、危ない……」
「危ない? なんでだい?」
更にリィトはクリスに近づく。
クリスがまた一歩下がるが、リィトも更に距離を詰めるだけだった。
「まさか君が僕を襲うなんて、そんなことあるわけないだろう?」
上目遣いに尋ねてみる。どうせ後で忘れるのだ。強気にもなれるというものである。
クリスは必死にコクコクと頷く。こんな時でも肯定するのかとリィトは苛ついた。
リィトはクリスの手を取ると、指をあわせる。
「……僕は別に、クリスになら襲われてもいいけど」
リィトは他人を誘惑したことはないが、誘惑を仕掛けられたことはある。
過去の体験を思い出しながら、リィトはねっとりとした手付きでクリスの胸板に触れた。相変わらず大きな体は熱い。心臓の方に手を置くと、バクバクと脈打っているのが聞こえたような気がした。
「……クリスは、僕とじゃ嫌?」
上目遣いに見つめる。クリスの喉がゴクリと鳴る。
イケる、とリィトは思った。
一日で効果が切れて、しかもその間のことは忘れてしまう。
クリスはリィトに対して、恋愛相手とは見られないようだった。
でないと、恋人ができれば嬉しいだなんて到底言えない。少なくともリィトはクリスに恋人が出来たら、発狂してしまう自信はある。
では、リィトがクリスに告白したらどうか。
何度も考えた可能性は、けれど幼馴染みを失いたくない一心で否定した。彼に断られ、気まずくなって会うこともできなくなるなんて嫌だ。
ぎゅ、とリィトは惚れ薬の蓋を開けるとクリスのワインに向かい全部入れたのだった。
「あれ? ワインの味、ちょっと変わってないかい?」
クリスは飲みかけのワインに再び口づけると首を傾げる。リィトは用意しておいた別の瓶を出した。
「バレたか……。実は、このワインが少し残っていたから僕のとクリスのに入れておいたんだ」
「へぇ、そうなんだ」
クリスはすぐに順応してワインを飲む。褒められた飲み方ではないが、案外混ぜても美味しいんだね、とクリスは笑ってくれていた。
じ、とリィトはクリスを観察する。
彼はリィトと目があうと、首をかしげて微笑んだ。かわいい。好き。とつい口に出しそうなところを我慢してリィトも笑顔を作る。
クリスの頬が赤くなった。ん? とリィトは目を細めクリスを観察する。
クリスの反応は、自分に好意を寄せる多くの男女と同じだった。瞳が潤み、熱がこもっていく。
リィトは自分の心臓が音を立てて暴れまわるのを感じた。
「……どうしたんだい? クリス」
わかっているくせに小首をかしげて尋ねる。クリスはぱっと目をそらした。
「ごめん……。なんでか今日の君はすごく綺麗に思えて……」
「そうかい?」
リィトは震えそうになるのを必死に堪える。緊張で喉が渇いていた。
クリスは視線を宙に浮かべる。
「えっと……、なんだか熱くなってきたな。酔っているみたいだし、今日のところはこれで帰ろうかな」
ガタ、とクリスは席を立つ。慌ててリィトは引き止めた。
「酔っているのなら、無理に帰るのは危ないんじゃないかい? 泊まっていきなよ!」
「え」
クリスは首まで赤く染まり、慌ててリィトの手から逃れる。
「だ、ダメだよ! そんなの、危ない……」
「危ない? なんでだい?」
更にリィトはクリスに近づく。
クリスがまた一歩下がるが、リィトも更に距離を詰めるだけだった。
「まさか君が僕を襲うなんて、そんなことあるわけないだろう?」
上目遣いに尋ねてみる。どうせ後で忘れるのだ。強気にもなれるというものである。
クリスは必死にコクコクと頷く。こんな時でも肯定するのかとリィトは苛ついた。
リィトはクリスの手を取ると、指をあわせる。
「……僕は別に、クリスになら襲われてもいいけど」
リィトは他人を誘惑したことはないが、誘惑を仕掛けられたことはある。
過去の体験を思い出しながら、リィトはねっとりとした手付きでクリスの胸板に触れた。相変わらず大きな体は熱い。心臓の方に手を置くと、バクバクと脈打っているのが聞こえたような気がした。
「……クリスは、僕とじゃ嫌?」
上目遣いに見つめる。クリスの喉がゴクリと鳴る。
イケる、とリィトは思った。
10
お気に入りに追加
1,869
あなたにおすすめの小説
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
【get a second chance】~イケメンに生まれ変わったら見える景色が鮮やかになった~
ninjin
ファンタジー
50歳、独身、引きこもりの俺は、自宅の階段から転げ落ちて死んでしまった。しかし、俺は偶然にも【get a second chance】の権利を得る事が出来た。【get a second chance】とは、人生をやり直す事が出来る権利であり、しかも、ゲームのように自分自身のレベルを上げる事で、イケメンにもなれるのである。一回目の人生は、不細工は不細工のまま、勉強しても頭が悪いのは悪いまま、運動神経がなければスポーツは上手くならない。音痴なら歌は上手くならない。才能がない者はどんなに頑張っても無意味だった。しかし、二度目の人生は違う。頑張れば頑張るほど成長できるやりがいのある人生だった。俺は頑張ってレベルを上げて二度目の人生を謳歌する。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
最強の吸血姫、封印から目覚めたら聖女だと誤解されてました ~正体がバレないように過ごしていたら、なぜかみんなから慕われたのですが
水無瀬
ファンタジー
最強の吸血姫であるテレネシアは、魔王を倒したあとに封印されてしまう。
そして1000年後に目覚めたら、なぜか人間たちから伝説の聖女として崇められていた。
な、なんでぇ!?
私、吸血姫なんですけど!
ヴァンパイアの力で怪我人を治療したら、なぜか聖女の神聖魔法と勘違いされて褒められたり、
女の子の首筋にかぶりついて血を吸ったら、特別な行為だと誤解されて告白されたりな生活を送るテレネシア。
けれどもこの国には、ヴァンパイア特効のチートアイテムが存在していた。
もしも正体がヴァンパイアだとバレたら、テレネシアは殺されてしまう。
そうならないために血を集めて魔力を回復して、チートアイテムを奪っちゃいます!
※表紙のイラストはそらかいと様よりいただいたFAになります
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる