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第1話 「いや、冗談だろ。お前ホモだったのかよ。気持ち悪い」
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「いや、冗談だろ。お前ホモだったのかよ。気持ち悪い」
高校の卒業式のこの日、三崎省吾(ミサキショウゴ)の恋はあっけなく終わりを迎えた。愛した人の嫌悪感とともに。
そうだよなぁ。
省吾は初恋相手である飯島蓮(イイジマレン)の細められた目を見て納得する。
友達だと思っていた同性からいきなり恋愛感情を向けられたら気持ち悪いと思うよな。
そんなことはわかっていた。けれど、少しの望みにかけて卒業式の今日告白に踏み切った。希望はあっけなく打ち砕かれたけど。
体育館の裏というありふれた告白スポットは桜も咲いておらず、また、男女比9対1の工業高校ということもあり人はいなかった。だから告白しようと思ったのだ。
「そっか。うん、わかった」
省吾はせいいっぱいの笑顔を浮かべる。
「変なこと言って悪かったな。忘れてくれ」
蓮とは進路が分かれる。
こうして省吾は幼稚園からの幼馴染をたった一秒で無くしたのだった。
気持ち悪い、かぁ。
すぅ、と重苦しい風を胸いっぱいに吸い込む。山形の春はまだまだ寒かった。
家に帰る途中にある陸橋からぼんやりと空を見上げる。
まだ太陽は中空にあるため、春特有の薄青い空が広がっていた。
蓮の笑った顔が好きだった。そっけない中に隠し持った優しさに触れるたびに心がほんわりと暖かくなる気がしていた。身長が高くそっけない彼はクラスの中で怖いと言われることが多かったが、幾人かのクラスメイトからは慕われていた。省吾もその一人だった。
小学校三年生の春に蓮に誘われる形で入ったサッカー部は中学高校になっても継続し、お互いの家を行き来する形で交流は続いていた。弱小サッカー部だったのでふたりともレギュラーではあったが、よくて地区大会一回戦、悪ければ予選落ちをする程度のものだった。だから、練習はさほど厳しくはなく、多くの時間を蓮と省吾は省吾の家で過ごした。
省吾はというと、絵に書いたようなスポーツ少年で、髪も短く筋肉もついている。身長も175センチと到底女性には思えないような身長だった。
せめて自分がかわいらしく華奢で女性のような外見だったなら、少しは蓮のお眼鏡にかなったのかな。そんなありもしない事を考える。
省吾は即座に首を振る。
女性としてではなく、男性として蓮を愛し、蓮に愛されたかったのだ。
けれど蓮には気持ち悪いと言われてしまった。
「はぁ……」
ため息をつく。
家に帰りたくない。
帰ったところで母はいない。母子家庭である省吾の母は水商売をしており、めったに家には帰らず彼氏のところに居着いているようだった。
物心ついた時から、母は最低限の金を時折置いて出ていく、それだけの存在だった。そんな省吾に優しくしてくれたのが、蓮と、蓮の家族だった。
近所に住んでいた蓮は部活後にはほぼ毎日省吾の家に来てくれるようになったし、蓮の母も時折蓮に惣菜を持たせてくれた。彼は省吾が心配だと言っていた。家で一人でいるのはかわいそうだ、と。たまに母と居合わせた時などはもっと家に帰るようにも勧めていた。
そんな蓮に拒絶された。
世界の誰からも自分は必要とされていない気がして、視界が滲む。
「……死にたい」
心の底から呟いた。
その瞬間だった。
ふいに白い光に包まれ、次の瞬間には中世ヨーロッパの応接間のような空間に移動していた。
高校の卒業式のこの日、三崎省吾(ミサキショウゴ)の恋はあっけなく終わりを迎えた。愛した人の嫌悪感とともに。
そうだよなぁ。
省吾は初恋相手である飯島蓮(イイジマレン)の細められた目を見て納得する。
友達だと思っていた同性からいきなり恋愛感情を向けられたら気持ち悪いと思うよな。
そんなことはわかっていた。けれど、少しの望みにかけて卒業式の今日告白に踏み切った。希望はあっけなく打ち砕かれたけど。
体育館の裏というありふれた告白スポットは桜も咲いておらず、また、男女比9対1の工業高校ということもあり人はいなかった。だから告白しようと思ったのだ。
「そっか。うん、わかった」
省吾はせいいっぱいの笑顔を浮かべる。
「変なこと言って悪かったな。忘れてくれ」
蓮とは進路が分かれる。
こうして省吾は幼稚園からの幼馴染をたった一秒で無くしたのだった。
気持ち悪い、かぁ。
すぅ、と重苦しい風を胸いっぱいに吸い込む。山形の春はまだまだ寒かった。
家に帰る途中にある陸橋からぼんやりと空を見上げる。
まだ太陽は中空にあるため、春特有の薄青い空が広がっていた。
蓮の笑った顔が好きだった。そっけない中に隠し持った優しさに触れるたびに心がほんわりと暖かくなる気がしていた。身長が高くそっけない彼はクラスの中で怖いと言われることが多かったが、幾人かのクラスメイトからは慕われていた。省吾もその一人だった。
小学校三年生の春に蓮に誘われる形で入ったサッカー部は中学高校になっても継続し、お互いの家を行き来する形で交流は続いていた。弱小サッカー部だったのでふたりともレギュラーではあったが、よくて地区大会一回戦、悪ければ予選落ちをする程度のものだった。だから、練習はさほど厳しくはなく、多くの時間を蓮と省吾は省吾の家で過ごした。
省吾はというと、絵に書いたようなスポーツ少年で、髪も短く筋肉もついている。身長も175センチと到底女性には思えないような身長だった。
せめて自分がかわいらしく華奢で女性のような外見だったなら、少しは蓮のお眼鏡にかなったのかな。そんなありもしない事を考える。
省吾は即座に首を振る。
女性としてではなく、男性として蓮を愛し、蓮に愛されたかったのだ。
けれど蓮には気持ち悪いと言われてしまった。
「はぁ……」
ため息をつく。
家に帰りたくない。
帰ったところで母はいない。母子家庭である省吾の母は水商売をしており、めったに家には帰らず彼氏のところに居着いているようだった。
物心ついた時から、母は最低限の金を時折置いて出ていく、それだけの存在だった。そんな省吾に優しくしてくれたのが、蓮と、蓮の家族だった。
近所に住んでいた蓮は部活後にはほぼ毎日省吾の家に来てくれるようになったし、蓮の母も時折蓮に惣菜を持たせてくれた。彼は省吾が心配だと言っていた。家で一人でいるのはかわいそうだ、と。たまに母と居合わせた時などはもっと家に帰るようにも勧めていた。
そんな蓮に拒絶された。
世界の誰からも自分は必要とされていない気がして、視界が滲む。
「……死にたい」
心の底から呟いた。
その瞬間だった。
ふいに白い光に包まれ、次の瞬間には中世ヨーロッパの応接間のような空間に移動していた。
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