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第二章
第二話 依頼はこれだ
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Dランクの依頼が張り出されているボードへ向かって、もう一度ヘリオスに抱っこしてもらい、依頼を吟味するが……。
「つまらぬっ」
「ふふ、お姉様にとってはそうかもしれませんね」
「じゃあ、あっちも見てみるか」
ヴェレッドがピンとくる依頼がなかった為、Cランクのボードの前に移動する。すると、上の方にあった一枚の依頼票に目が留まる。
「くふふ、夢では食い損ねてしもうたからのぉ」
そう、ヴェレッドが目を留めた依頼とは――。
「“村に出没するオークの群れの討伐”。これにするのじゃ!」
夢で食べられなかったオークの肉を、本当に自分で狩りに行くつもりなのだ。
「どんだけオークが食いたいんだよ……」
「いいじゃない、ヘリオス。オークなら私達でも倒せるし、ね?」
「まぁ、いいけどよ」
「よし、決まりじゃな」
依頼票をボードから剥がしてヘリオスの腕から飛び降りると、受付へ持って行き手続きを済ませる。
ルンルンと鼻歌を歌いながら軽い足取りで冒険者ギルドを出たヴェレッドは、ぐっと拳を空に突き上げ叫んだ。
「待っておるのじゃぞ、オーク肉~っ!」
肉への執念がすごすぎて、ヘリオスもセレーネも苦笑いするしかなかった。
* * * * *
依頼先の村へ向かう為に街を出て街道を歩きながら、依頼内容を確認しておく。
「え-っと、依頼主は村の村長か。今回は依頼主に先に会うんだよな?」
「ええ。まずは依頼主に話を聞かないとね。討伐したオークが、依頼主の指定したオークでなければならないもの。違っていたら依頼達成にはならないから、気をつけないと」
「ふんふ~ん♪」と、オークの肉が食べられるとあってご機嫌なヴェレッドはそのまま放置し、ヘリオスとセレーネの二人で打ち合わせる。
「一週間くらい前からオークが現れるようになった、か」
「村の人達で討伐、というのは難しいでしょうね」
「ああ。現れたのがオーク一体だけってのは考えにくい。まぁ、一体だけだったとしても村人の力じゃ倒せるかどうかは微妙だな」
オークは基本的に群れで行動する。そこそこ知能があり、村を自分達で作ってしまうこともあるほどだ。複数で現れた場合、大抵は司令塔がいてその指示に従って行動する為、オークに苦戦する冒険者の数は少なくない。一体いればもう二~三体はいると考えて行動した方が無難だ。
「お、姉貴よかったな。討伐したオークは持って帰っていいって書いてあるぜ」
「当然じゃ。妾の獲物じゃぞ? 持って帰るに決まっておる!」
話を振られてすぐに反応できるということは、話を聞いていないようで聞いていたようだ。
しかし、肉のことしか頭にないヴェレッドはすぐに話から離脱し、ルンルン気分でくるくる回りながら道を進む。今日着ている服は件くだんの服屋で購入したフリフリのワンピースだ。おかげで、くるくる回る度にふわふわとスカートが揺れている。
「お姉様が喜んでいるのは嬉しいけれど、それって珍しいんじゃない? 素材を含む、っていう依頼が多かったもの。何かあるのかしら?」
「報酬が少ないせいじゃねぇか? その分、倒したオークを報酬ってことにしてんじゃねぇの?」
今回の依頼、Cランクのものにしては報酬が少なかった。依頼主の懐具合によって報酬は変わってくるが、Cランクの最低額に少し届かないくらいであったのだ。ラファームのことだから、オークを報酬と換算して対応したのだろう。
ヴェレッド達はお金に困っていないので、報酬より依頼の内容、ヴェレッドがやりたいと思うかどうかで行動している。
「そうね。そうよね」
この時のセレーネの予想は、嫌な方向に当たることになる――。
「つまらぬっ」
「ふふ、お姉様にとってはそうかもしれませんね」
「じゃあ、あっちも見てみるか」
ヴェレッドがピンとくる依頼がなかった為、Cランクのボードの前に移動する。すると、上の方にあった一枚の依頼票に目が留まる。
「くふふ、夢では食い損ねてしもうたからのぉ」
そう、ヴェレッドが目を留めた依頼とは――。
「“村に出没するオークの群れの討伐”。これにするのじゃ!」
夢で食べられなかったオークの肉を、本当に自分で狩りに行くつもりなのだ。
「どんだけオークが食いたいんだよ……」
「いいじゃない、ヘリオス。オークなら私達でも倒せるし、ね?」
「まぁ、いいけどよ」
「よし、決まりじゃな」
依頼票をボードから剥がしてヘリオスの腕から飛び降りると、受付へ持って行き手続きを済ませる。
ルンルンと鼻歌を歌いながら軽い足取りで冒険者ギルドを出たヴェレッドは、ぐっと拳を空に突き上げ叫んだ。
「待っておるのじゃぞ、オーク肉~っ!」
肉への執念がすごすぎて、ヘリオスもセレーネも苦笑いするしかなかった。
* * * * *
依頼先の村へ向かう為に街を出て街道を歩きながら、依頼内容を確認しておく。
「え-っと、依頼主は村の村長か。今回は依頼主に先に会うんだよな?」
「ええ。まずは依頼主に話を聞かないとね。討伐したオークが、依頼主の指定したオークでなければならないもの。違っていたら依頼達成にはならないから、気をつけないと」
「ふんふ~ん♪」と、オークの肉が食べられるとあってご機嫌なヴェレッドはそのまま放置し、ヘリオスとセレーネの二人で打ち合わせる。
「一週間くらい前からオークが現れるようになった、か」
「村の人達で討伐、というのは難しいでしょうね」
「ああ。現れたのがオーク一体だけってのは考えにくい。まぁ、一体だけだったとしても村人の力じゃ倒せるかどうかは微妙だな」
オークは基本的に群れで行動する。そこそこ知能があり、村を自分達で作ってしまうこともあるほどだ。複数で現れた場合、大抵は司令塔がいてその指示に従って行動する為、オークに苦戦する冒険者の数は少なくない。一体いればもう二~三体はいると考えて行動した方が無難だ。
「お、姉貴よかったな。討伐したオークは持って帰っていいって書いてあるぜ」
「当然じゃ。妾の獲物じゃぞ? 持って帰るに決まっておる!」
話を振られてすぐに反応できるということは、話を聞いていないようで聞いていたようだ。
しかし、肉のことしか頭にないヴェレッドはすぐに話から離脱し、ルンルン気分でくるくる回りながら道を進む。今日着ている服は件くだんの服屋で購入したフリフリのワンピースだ。おかげで、くるくる回る度にふわふわとスカートが揺れている。
「お姉様が喜んでいるのは嬉しいけれど、それって珍しいんじゃない? 素材を含む、っていう依頼が多かったもの。何かあるのかしら?」
「報酬が少ないせいじゃねぇか? その分、倒したオークを報酬ってことにしてんじゃねぇの?」
今回の依頼、Cランクのものにしては報酬が少なかった。依頼主の懐具合によって報酬は変わってくるが、Cランクの最低額に少し届かないくらいであったのだ。ラファームのことだから、オークを報酬と換算して対応したのだろう。
ヴェレッド達はお金に困っていないので、報酬より依頼の内容、ヴェレッドがやりたいと思うかどうかで行動している。
「そうね。そうよね」
この時のセレーネの予想は、嫌な方向に当たることになる――。
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