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「……チェック……メイト……」
静かな空間に1人静かに呟いた。声は谺し、遠く、遠くへ響き渡った。
「凄いのです!治!一気に2人やっつけちゃうなんて!素晴らしいのです!」
ぴょんぴょん跳ねながら、いずみは精一杯大声を出していた。可愛い。こんな妹が欲しかったのに……。
「治!何言ってるの!?全然チェックメイトじゃないじゃない!」
「は?でも、ちゃんと倒したし……」
「あ・れ!!!」
ナイトが指をさす方を向くと、今にも爆破しそうな時限爆弾が置いてあった。……え!?全然ハッピーエンドじゃないじゃん!
「あと15分で、このホルストごとひとっ飛びよ。なんとかして、策を練らないと……」
「なあナイト。お前運は強いんだよな?そしたら、お前のスキルとかで、これを飛ばせないのか?どこかに」
「飛ばせるのは飛ばせるけど、自分の運がどうとかじゃないの。もし、飛ばしたないなら、治かいずみかノヴィアの運を借りる必要があるわ」
けど、俺らの中に特別強い幸運を持ってる奴はいないし……。
「そうだ、ナイト!そのスキルを俺に教えてくれ!俺が飛ばせば、ナイトの運も借りられるだろ!?な?」
「良いけど、少し難しいスキルよ?大丈夫なの?」
「大丈夫さ!多分……。まあ、とりあえず教えてくれ」
そうして、教えてもらう事約3分。殆ど習得してしまった。何が少し難しいだ。全然難しくないじゃないか。
「いい?治。難しいのはこれからよ。この時限爆弾を人が密集しているところじゃなくて、辺りに何もない所、林とか草原とかなんでも良いわ。何もない所に飛ばさなければ、市街地調査本部から連絡がくるわ。そして、治は塀の中よ。いい?それを逃れるためにも、必死に想像するのよ!」
「へ!?そんな事言われたって……。どこに落とせばとか、イメージできるわけ……」
「イメージしないと人が密集してる所に落ちてしまうの!!!そうだ!レザン草原!あの草原を思い出して!あそこに落とすの!絶対あそこには人がいないから!」
「レザン草原って、ふもとにある大きな草原のことか?」
「他に何があるっていうの!ほら!もう時間がないのよ!あと5分で爆破よ!?」
「ちょっと待て!さっきホルストごと吹っ飛ぶって!」
「レザン草原は別よ!早く!早くして!」
「分かったよ!じゃあ早く手をおけ!!!!いくぞ……。どうなっても知らないからな……。能力!月夜叉!!!!」
「お願い!落ちて!レザン草原に!」
スキルを発生したと同時に、時限爆弾は光に包まれ遥か彼方へ消えていった。あ、レザン草原に落ちたのかな……。これで捕まらなければ良いのだけれど。俺が。
「治!大丈夫!?多分レザン草原にはちゃんと落ちてるはず……!でもまあ、捕まるのは治だし!良い事にしましょう!」
「良くねぇよ!!異世界生活始まって以来、ロクなもんにあってねぇだろ!?あのデブとかユーリさんとかルイナとか!それに!今1番ロクじゃねぇのはお前だよ!ナイト!何、自分が捕まらなければOKみたいな言い方してんだよ!責任はナイトにもあるからな!」
「勝手にほざいてなさい。私は役者よ!そんな演技なんて容易くできるの!責任は私にもあるなんて、さっきは聞いてなかったんだから。大人しく治だけ捕まってればいいのよ」
こいつ……。この世の中でこんなに意地の悪い役者はいない……。大人しく捕まれなんて、底辺が言うようなことだろ……。よし、あいつのことも俺の最大限の演技力で言ってやろう。
「さあ!帰ってパーッと遊びましょう!あの人たちは、フォールダークネスよ!絶対賞金が出てるに違いないわ!早く戻りましょう!」
「はいなのです!私、早くお風呂に入りたいのです……。もう汗でベトベトなのです……」
「帰ろう……」
「そうだな。帰るか!」
こうして、フォールダークネスの跡地(?)を出た俺たちは、職業管理施設に戻った。
「どうして!?どうして、賞金がでてないの!?」
「そう言われましても……。一応ルイナ先輩はこの管理施設の受付をされていましたし、ユーリさんもライフスタイルの店主さんだったわけで……。なので、このような場合は賞金は出ないことになっているんです」
「なんでよ!?私たち命懸けで戦ったのよ!?それが賞金無しなんて、聞いてないわよ!早く出しなさいよ!賞金!!あなたのお金でも良いから!」
「申し訳ありません……」
ナイトは新受付のお姉さんのカレンさんにお金をねだっている。全く、女神だなんて。聞いて呆れるわ。ナイトが女神なら、誰でも女神になれる気がする。
「いずみ。もし、人が密集してる所に飛んだら、いつぐらいに連絡が来るんだ?」
「えっと……場合にもよりますけど、大体すぐに来るので、もう来ないと思いますよ」
こんな会話をして早2日。やはり、人が密集しているとこには落ちなかったららしい。本当に良かった……。捕まるなんてごめんだからな。
「あ、治。私依頼がきてるわ。新しく、異世界に来る人のね」
「あ、ああ。行って来い。ちゃんと紹介出来るんだろうな?」
「あったりまえでしょ!?私を誰だと思ってるの!?可愛くて清純な女神様よ!じゃあ、行ってくるわ」
あんな奴が女神なんて、やっぱり信じられない……。少しおかしかったので、笑ってしまった。
「お疲れ様です。あなたは今日をもって死人となりました……」
ここは笑って、紹介する。全力で!
「異世界へようこそ!!」
夜空にはキラキラと星が輝いていた。
******
最後まで、見てくださりありがとうございました。また、番外編つくるかもです。よろしくお願いします。
静かな空間に1人静かに呟いた。声は谺し、遠く、遠くへ響き渡った。
「凄いのです!治!一気に2人やっつけちゃうなんて!素晴らしいのです!」
ぴょんぴょん跳ねながら、いずみは精一杯大声を出していた。可愛い。こんな妹が欲しかったのに……。
「治!何言ってるの!?全然チェックメイトじゃないじゃない!」
「は?でも、ちゃんと倒したし……」
「あ・れ!!!」
ナイトが指をさす方を向くと、今にも爆破しそうな時限爆弾が置いてあった。……え!?全然ハッピーエンドじゃないじゃん!
「あと15分で、このホルストごとひとっ飛びよ。なんとかして、策を練らないと……」
「なあナイト。お前運は強いんだよな?そしたら、お前のスキルとかで、これを飛ばせないのか?どこかに」
「飛ばせるのは飛ばせるけど、自分の運がどうとかじゃないの。もし、飛ばしたないなら、治かいずみかノヴィアの運を借りる必要があるわ」
けど、俺らの中に特別強い幸運を持ってる奴はいないし……。
「そうだ、ナイト!そのスキルを俺に教えてくれ!俺が飛ばせば、ナイトの運も借りられるだろ!?な?」
「良いけど、少し難しいスキルよ?大丈夫なの?」
「大丈夫さ!多分……。まあ、とりあえず教えてくれ」
そうして、教えてもらう事約3分。殆ど習得してしまった。何が少し難しいだ。全然難しくないじゃないか。
「いい?治。難しいのはこれからよ。この時限爆弾を人が密集しているところじゃなくて、辺りに何もない所、林とか草原とかなんでも良いわ。何もない所に飛ばさなければ、市街地調査本部から連絡がくるわ。そして、治は塀の中よ。いい?それを逃れるためにも、必死に想像するのよ!」
「へ!?そんな事言われたって……。どこに落とせばとか、イメージできるわけ……」
「イメージしないと人が密集してる所に落ちてしまうの!!!そうだ!レザン草原!あの草原を思い出して!あそこに落とすの!絶対あそこには人がいないから!」
「レザン草原って、ふもとにある大きな草原のことか?」
「他に何があるっていうの!ほら!もう時間がないのよ!あと5分で爆破よ!?」
「ちょっと待て!さっきホルストごと吹っ飛ぶって!」
「レザン草原は別よ!早く!早くして!」
「分かったよ!じゃあ早く手をおけ!!!!いくぞ……。どうなっても知らないからな……。能力!月夜叉!!!!」
「お願い!落ちて!レザン草原に!」
スキルを発生したと同時に、時限爆弾は光に包まれ遥か彼方へ消えていった。あ、レザン草原に落ちたのかな……。これで捕まらなければ良いのだけれど。俺が。
「治!大丈夫!?多分レザン草原にはちゃんと落ちてるはず……!でもまあ、捕まるのは治だし!良い事にしましょう!」
「良くねぇよ!!異世界生活始まって以来、ロクなもんにあってねぇだろ!?あのデブとかユーリさんとかルイナとか!それに!今1番ロクじゃねぇのはお前だよ!ナイト!何、自分が捕まらなければOKみたいな言い方してんだよ!責任はナイトにもあるからな!」
「勝手にほざいてなさい。私は役者よ!そんな演技なんて容易くできるの!責任は私にもあるなんて、さっきは聞いてなかったんだから。大人しく治だけ捕まってればいいのよ」
こいつ……。この世の中でこんなに意地の悪い役者はいない……。大人しく捕まれなんて、底辺が言うようなことだろ……。よし、あいつのことも俺の最大限の演技力で言ってやろう。
「さあ!帰ってパーッと遊びましょう!あの人たちは、フォールダークネスよ!絶対賞金が出てるに違いないわ!早く戻りましょう!」
「はいなのです!私、早くお風呂に入りたいのです……。もう汗でベトベトなのです……」
「帰ろう……」
「そうだな。帰るか!」
こうして、フォールダークネスの跡地(?)を出た俺たちは、職業管理施設に戻った。
「どうして!?どうして、賞金がでてないの!?」
「そう言われましても……。一応ルイナ先輩はこの管理施設の受付をされていましたし、ユーリさんもライフスタイルの店主さんだったわけで……。なので、このような場合は賞金は出ないことになっているんです」
「なんでよ!?私たち命懸けで戦ったのよ!?それが賞金無しなんて、聞いてないわよ!早く出しなさいよ!賞金!!あなたのお金でも良いから!」
「申し訳ありません……」
ナイトは新受付のお姉さんのカレンさんにお金をねだっている。全く、女神だなんて。聞いて呆れるわ。ナイトが女神なら、誰でも女神になれる気がする。
「いずみ。もし、人が密集してる所に飛んだら、いつぐらいに連絡が来るんだ?」
「えっと……場合にもよりますけど、大体すぐに来るので、もう来ないと思いますよ」
こんな会話をして早2日。やはり、人が密集しているとこには落ちなかったららしい。本当に良かった……。捕まるなんてごめんだからな。
「あ、治。私依頼がきてるわ。新しく、異世界に来る人のね」
「あ、ああ。行って来い。ちゃんと紹介出来るんだろうな?」
「あったりまえでしょ!?私を誰だと思ってるの!?可愛くて清純な女神様よ!じゃあ、行ってくるわ」
あんな奴が女神なんて、やっぱり信じられない……。少しおかしかったので、笑ってしまった。
「お疲れ様です。あなたは今日をもって死人となりました……」
ここは笑って、紹介する。全力で!
「異世界へようこそ!!」
夜空にはキラキラと星が輝いていた。
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最後まで、見てくださりありがとうございました。また、番外編つくるかもです。よろしくお願いします。
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