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【樹玄海暴走編】
第36話 帰ってこないんです
しおりを挟む召太のアトリエで話を聞く巡とカーヤ。
「魔導志って魔法は使えない代わりに、魔法氏の数倍数十倍の魔力を持っているんです…」
「魔力?」
召太は続ける。
「はい…。魔法氏は魔力が少ない分、発動できる魔法は限られています。それを魔導志と契約することで魔導志の魔力を自分に共有することができるんです…。あ!すみません。こんな話最初にちゃんと説明されるのでもう知ってますよね…。ごめんなさい、偉そうにベラベラと」
当然のことながら、カーヤからそんな説明を受けているわけもない巡はカーヤを睨む。
しかしカーヤは目線を反らし、召太が煎れてくれたお茶を飲んでいる。
ため息をついた後、巡は言う。
「いや、召太君。続けて」
「え、あっ。はい…。じゃあ、僭越ながら…」
そう言って、召太は説明を続ける。
「魔導志というのはいわば、魔力のタンクです…。そのタンクに溜まった魔力を利用して魔法氏が様々な魔法に変換するんです。魔導志から得る魔力が多い分、より強力な魔法が使えるんです…」
「なるほど」
「あっ…でも、使える魔力が増えても、魔法氏自身が術式を覚えていなければ魔法は使えません…」
それを聞いてカーヤはバッと立ち上がる。
「ちょっとあんたっ!!それじゃまるで私がほとんど魔法が使えない魔法氏みたいじゃない!バカにしないでくれるっ!?」
「ひぃ~!!ごめんなさいごめんなさい!!もう喋りませんからっ!!」
カーヤの怒号に召太は顔を隠し怯える。
「落ち着きなさいよ」
今にも召太に飛びかからんばかりのカーヤの腕を掴み、巡が制止させた。
魔法氏と魔導志の関係がより明確になり、巡は納得する。
「今、このカーヤは魔法を一つしか使えないんだ。それで俺たちは魔法の数を増やすためにここに来たんだけど」
「…じゅ、術式を教えられるのは同じ魔法氏だけです。だから、教わるのなら僕じゃなく、僕との契約魔法氏に頼んでもらった方が…」
召太はそう言った。
「そっか。わかったよ。じゃあ、その魔法氏さんはどこに行けば会えるのかな?」
「………………すみません」
なぜか謝罪の言葉のみを口にする召太。
「ぼ、僕でもわからないんです。1ヶ月前にここを飛び出してったきり、帰ってこないんです…」
「はぁ!?」
「ひぃー!!!ごめんなさいごめんなさい!!!わからなくてごめんなさい!!!」
思わず、大きく驚いた巡の声に召太は再び顔を隠す。
「飛び出してったって、なんで?」
召太に対して発した巡の質問にカーヤが答える。
「ふんっ!どうせこいつのこのナヨナヨした性格に愛想でも尽かしたんでしょ!私もこいつ見てるとイライラしてくるもの!」
カーヤのキツい一言に召太はただ謝ることしかできなかった。
「カーヤ、落ち着けって。あと言葉が乱暴だ。俺に尽くしてくれるようになったのは嬉しいけど、少しは他の人にもマイルドな対応を…」
「他の男なんて興味ないもん!」
そういって頬を膨らますカーヤ。
ーなんだろう。悪い気がしない。むしろ嬉しいな。
巡は少し高揚した。
「あー…えっと!」
仕切りなおして巡が続ける。
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