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憂鬱なパーティー

6.花開く頃

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 続々と人が集まってきました。全部で十二名……いえ、ジジ様を入れて十三名が集まりました。
 
 立食式で自由なパーティーです。音楽が始まって、踊りたい人は踊る。食べたい人は食べる。
 テーブルはいくつか用意して等間隔に置いていました。
 クロエお嬢様、ダン様、エミリア様、フレデリック様は寄宿学校も共にした古くからの友人同士です。自然と同じテーブルに集まってしまうようでした。
 クロエお嬢様はすっかりジジ様と打ち解けたようで、エミリア様はそれを気に入らなそうな顔で見ていました。
 自分のしたことなど、もう忘れているのでしょうか。

「……私、少し気分が悪いわ」

 エミリア様は頭を押さえて言いました。

「大丈夫かしら、少し奥の部屋で休む?」

 クロエお嬢様はお優しい方です。さっきまでのピリピリした空気からは想像できないほど、エミリア様にそっと寄り添いました。ジジ様も心配そうな顔で見ています。
 私には、エミリア様はただ構って欲しいだけのように見えていましたから。

「ええ、そうさせて……アメリア」

 エミリア様はぐったりとした様子で、鋭く私の名前を呼びました。部屋に連れて行けと言うのでしょう。

 この広間には、中央に大きな階段があります。その階段を登ると、人混みを避けて休める部屋がいくつかあるのです。クロエお嬢様はご存知ないようですが、フェリシア夫妻がご結婚される前はここで男女の営みをしている友人もいらしたとか。

「もういいわ、下がって」

 お部屋に案内すると、すぐにエミリア様は私を追い出しました。少しだけ寂しそうな表情を浮かべたように見えました。
 クロエお嬢様に冷たくされているのが堪えているのでしょうか。全て自らが蒔いた種でしょう、そう言ってしまう訳にもいきませんから、私は大人しく黙って下がりました。

 部屋を出るとすぐに、何故エミリア様が私をすぐに追い出したのか理由がわかりました。

 すっと、階段を登ってきたのは一人の男性でした。きょろきょろと視線を彷徨わせて、人目を避けているようでした。これはおそらく密会です。

 度重なるクロエお嬢様への裏切り行為に、私ははらわたが煮えくりかえるようでした。声を掛けてしまおうかとも思いました、何食わぬ顔で「クロエお嬢様をお探しでしょうか」とでも言ってやろうかしら。

 けれど私はそうしませんでした。こういう場合、第三者が絡むと碌なことが起きないものです。それにもしかしたら、お手洗いに上がってきたのかもしれない。

 私の僅かな祈りは、すぐに打ち砕かれてしまいました。
 ダン様は周囲を警戒しながら、エミリア様の待つ部屋に消えていきました。
 


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