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フェリシア家
3.アメリアの日記1
しおりを挟む今日はよく晴れていて洗濯物がよく乾いた。
クロエお嬢様は明日のパーティーが憂鬱だそう。きっと、恋人のダン•バーナードと喧嘩をしているから。理由はダンの浮気で、相手は誰か言わないのでクロエお嬢様はご立腹だ。
私としては、彼の屋敷に最近出入りしている家庭教師か、エミリア•テイラーが怪しいのではないかと思う。
家庭教師が怪しいと思うのは、ダンが頑なに相手の名前を言わないということ。もし、二人が深い仲になっていたとしたら、その家庭教師は追い出されてしまう。
クロエお嬢様とは対照的な肉感的な体付き、ブルネットの髪はまるで絵画を見ているようだった。
一度、通りですれ違ったら薔薇の香りがした。あれは高価な香水の香りだったからダンからの贈り物だろうか。
若いうちは特に、禁じられると燃え上がるところがある。以前勤めていたフレディ伯爵も、私が窓を拭いていると、硝子越しに熱い視線を送ってきたことがあった。
今から十年も前のことだけど、私もそれなりにちやほやされていたことがあった。
二人目のエミリー•テイラーは、ご近所に住んでいるダンの幼馴染だ。
エミリーはブロンドの美女だ。これもまたクロエお嬢様とは毛色の違う御令嬢。いつもつまらなそうに、遠くを見ているのを見かける。それは我が屋敷でも、他所のパーティーでも同じこと。
昼過ぎに、明日のパーティーの為の食材探しを手伝っていると、偶然見掛けてしまった。バーナード家の屋敷から飛び出してくるエミリーを。
いつも冷めた目で、口をへの字にしているエミリーが、人目も憚らず、瞳にいっぱい涙を溜めて飛び出してきた。
驚いたことに、ダンは追いかけてこなかった。みるみる遠ざかっていくエミリーの背中を見て、何があったかは知らないが、ダンはクロエお嬢様を選んだのだと思った。
今度のパーティーはご近所同士の小さなパーティーで、今年から子供たちだけで行われる。これは代々恒例となっっているようだが、フェリシア家のアナベル夫人もそろそろこの習わしを断ち切りたいと思っているようだ。
今朝クロエお嬢様が私に、「アメリアもパーティーの準備大変よね」なんて気に掛けて下さったが、私はパーティーを楽しんでいる。
あの華やかな舞台の裏で、愛憎が渦巻いている。
明日のパーティーでは、アップルパイにアイスクリームを添えるように料理人のナターシャに言う。ミントはクロエお嬢様が、育てたものを使いたいと話していた。ほとんど枯れてしまっているようにも見えたから、念の為裏庭から予備を用意しておこう。
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