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27.二人で一緒に
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「まぁ、それは……! おめでとうございます」
シャーロットは喜びが溢れてしまいそうで、思わず口を両手で覆った。
やっと報われたのだ。いつの間にイザベラ夫人と和解したのだろう。ついに結ばれる日が来るなんて、シャーロットは自分のことのように嬉しく思った。
「嬉しいニュースですわね」
はしゃぎながら、ルーク王子の顔をふと覗くと、何故かあまり嬉しそうではなかった。むしろ寂しげにも見えた。
「……どうかしたの?」
「アーチー王子の相手というのは、領主の娘のティエラだ」
ルーク王子は言いにくそうに答えた。それはシャーロットの知らない名前だった。
彼も、シャーロットの喜びの様子を見て、相手がサバンナだと誤解したことに気付いたのだろう。少し困ったような表情をしている。
「そうなの……」
思わずがっかりしたような声を出してしまう。ウォード家について何もかも知っているという訳ではないが、この短期間で新しい女性の名前を聞くことになるとは思わなかった。
それに、心のどこかでアーチー王子はサバンナを選ぶと信じていた。あの夜、彼女の手を取って晩餐会から連れ出した瞬間を見たときから。
てっきりサバンナだと思い込んでしまったせいで、二人の間にまた、気まずい沈黙が流れた。
めでたい話に水を差すようなことを言ってしまい、、シャーロットはひどく後悔した。なんとか誤魔化そうと口を開いた。
「きっと……素敵な方なのでしょうね」
それは本心だった。アーチー王子を射止めて、イザベラ夫人も認めた相手だ。素敵な相手であることに違いは無い。
「ああ、私も彼女を知っている。ゆっくりと話したことはないが、美しくてよく笑う、素敵なお嬢さんだったよ」
ルーク王子も相手の女性には好印象を抱いているようだった。
「でもアーチー王子にそんないいお相手がいたなんて……知らなかったわ」
「ああ、私もだ。まさか二人にそんな話が出ているなんて……」
ルーク王子は苦い表情をしている。どうやら彼も寝耳に水のようだった。朝食の時、あまり食欲がないように見えたのは、このことがあったからかもしれない。
「……アーチーが幸せになるのは嬉しい。だが、少し複雑だな。いずれ、彼女の耳にも入るだろう。それが心配でね」
「ええ、そうね」
シャーロットの胸がちくりと傷んだ。
サバンナのことは確かに心配だった。その事実を知ったら、彼女は泣いてしまうかもしれない。そうしたら、きっとルーク王子は出来る限りの方法で彼女を慰めるだろう。
栗色の髪を優しく撫でて、涙を拭ってあげる。必要なら、泣き止むまで抱き締めてくれる。
だって彼女は、大切な"友人"だから。
「近いうちに、様子を見に行こうかと思う。美味いものでも持って。こういう時は、甘い物と……酒がいいな」
行かないでほしい、シャーロットは咄嗟に出そうになった言葉を慌てて引っ込めた。そんなこと、彼を困らせてしまうだけだと分かっている。
傷付いている彼女を放って置けない気持ちも理解出来る。何より彼女自身がルーク王子の助けを必要としているだろう。美味しい物やお酒よりも、彼に話を聞いてもらうのが一番元気が出るはずだ。
ーーそれがわかるから、我儘も意地悪なことも言えないわね。
「……サバンナも心強いと思う」
そう言って、シャーロットは無理矢理に笑って見せた。行ってきて、とは素直に送り出すような言葉はどうしても言えなかった。今はこれが精一杯だ。
「その時はシャーロットも一緒に来てくないか?」
「私も……?」
思ってもいなかった提案にシャーロットが驚いていると、ルーク王子はふっと優しく笑った。
「ああ、私にはきっと上手く元気付けてやることが出来ない。だから、シャーロットが一緒にいてくれたら心強い」
シャーロットは喜びが溢れてしまいそうで、思わず口を両手で覆った。
やっと報われたのだ。いつの間にイザベラ夫人と和解したのだろう。ついに結ばれる日が来るなんて、シャーロットは自分のことのように嬉しく思った。
「嬉しいニュースですわね」
はしゃぎながら、ルーク王子の顔をふと覗くと、何故かあまり嬉しそうではなかった。むしろ寂しげにも見えた。
「……どうかしたの?」
「アーチー王子の相手というのは、領主の娘のティエラだ」
ルーク王子は言いにくそうに答えた。それはシャーロットの知らない名前だった。
彼も、シャーロットの喜びの様子を見て、相手がサバンナだと誤解したことに気付いたのだろう。少し困ったような表情をしている。
「そうなの……」
思わずがっかりしたような声を出してしまう。ウォード家について何もかも知っているという訳ではないが、この短期間で新しい女性の名前を聞くことになるとは思わなかった。
それに、心のどこかでアーチー王子はサバンナを選ぶと信じていた。あの夜、彼女の手を取って晩餐会から連れ出した瞬間を見たときから。
てっきりサバンナだと思い込んでしまったせいで、二人の間にまた、気まずい沈黙が流れた。
めでたい話に水を差すようなことを言ってしまい、、シャーロットはひどく後悔した。なんとか誤魔化そうと口を開いた。
「きっと……素敵な方なのでしょうね」
それは本心だった。アーチー王子を射止めて、イザベラ夫人も認めた相手だ。素敵な相手であることに違いは無い。
「ああ、私も彼女を知っている。ゆっくりと話したことはないが、美しくてよく笑う、素敵なお嬢さんだったよ」
ルーク王子も相手の女性には好印象を抱いているようだった。
「でもアーチー王子にそんないいお相手がいたなんて……知らなかったわ」
「ああ、私もだ。まさか二人にそんな話が出ているなんて……」
ルーク王子は苦い表情をしている。どうやら彼も寝耳に水のようだった。朝食の時、あまり食欲がないように見えたのは、このことがあったからかもしれない。
「……アーチーが幸せになるのは嬉しい。だが、少し複雑だな。いずれ、彼女の耳にも入るだろう。それが心配でね」
「ええ、そうね」
シャーロットの胸がちくりと傷んだ。
サバンナのことは確かに心配だった。その事実を知ったら、彼女は泣いてしまうかもしれない。そうしたら、きっとルーク王子は出来る限りの方法で彼女を慰めるだろう。
栗色の髪を優しく撫でて、涙を拭ってあげる。必要なら、泣き止むまで抱き締めてくれる。
だって彼女は、大切な"友人"だから。
「近いうちに、様子を見に行こうかと思う。美味いものでも持って。こういう時は、甘い物と……酒がいいな」
行かないでほしい、シャーロットは咄嗟に出そうになった言葉を慌てて引っ込めた。そんなこと、彼を困らせてしまうだけだと分かっている。
傷付いている彼女を放って置けない気持ちも理解出来る。何より彼女自身がルーク王子の助けを必要としているだろう。美味しい物やお酒よりも、彼に話を聞いてもらうのが一番元気が出るはずだ。
ーーそれがわかるから、我儘も意地悪なことも言えないわね。
「……サバンナも心強いと思う」
そう言って、シャーロットは無理矢理に笑って見せた。行ってきて、とは素直に送り出すような言葉はどうしても言えなかった。今はこれが精一杯だ。
「その時はシャーロットも一緒に来てくないか?」
「私も……?」
思ってもいなかった提案にシャーロットが驚いていると、ルーク王子はふっと優しく笑った。
「ああ、私にはきっと上手く元気付けてやることが出来ない。だから、シャーロットが一緒にいてくれたら心強い」
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