22 / 28
21.証明
しおりを挟む
ジャックはグッと言葉に詰まった。シャーロットの幸せを願っているのは自分も同じだ。むしろここに来るまでは、それ以上だと思っていた。
他の誰よりもシャーロットを大事に思っているのは自分だ、と。
「……それなら、それを証明してください」
「言われなくとも」
二人の間に緊張が走る。ルーク王子は相変わらず冷ややかな目でジャックを見ている。
「ジャック、葡萄酒を持ってきたわ」
シャーロットは心配そうな表情で二人の顔を交互に見ていた。不穏な空気を察して動揺しているようだ。
「ありがとう、シャーロット。俺はそろそろ行くよ、顔を広げてくる」
「ああ、そうするといい」
ルーク王子が取ってつけたような笑顔を貼り付けて、ジャックの背中を優しく叩いた。
背中を押すような親しげな仕草に、シャーロットはほっとしたような顔をしていたが、ジャックは気付いていた。
ーーさっさとこの場から離れろ、という意思表示だ。
悔しいがこれ以上この場にいたら言わなくてもいいことまで言ってしまいそうだった。
「ジャック」
シャーロットがジャックを呼び止めた。ルーク王子に聞こえないように、ジャックの肩に顔を寄せて小さな声で囁いた。ふわっと懐かしい香りがする。
「私なら大丈夫よ、心配しないで」
シャーロットはにっこりと笑った。
「ありがとうジャック。会えて嬉しかったわ」
返事をする間もなく、シャーロットはするりとジャックの側から離れてしまった。慌てて引き止めようと手を伸ばすが、何も掴めなかった。
ーーいつもこうだ。上手く言葉も返せずに、ルーク王子の元へ戻る背中を見送ることしか出来ない。
ローザから隣国の王子と婚約するらしいと聞いたときは冗談だと思っていた。それとも悪い夢でも見ているのか。
ジャックとシャーロットは家同士でも仲が良い。一緒にいるのが当たり前だった。いずれは結婚、なんてこともあるかもしれない。そういう話が、全く出てきていない訳でもなかった。
シャーロットはジャックのことを親しい友人だと思っている。二人に結婚の話が出るたびに茶化していたのは、シャーロットに振られてしまうのが怖かったからだ。そうしたら、きっと今までのような関係ではいられなくなってしまう。
だからこんな日がいつか来るかもしれない、そう思ったことは何度もある。実際こうも早くそんな日が訪れるとは思ってもみなかったのだが。
「どうするかな……」
シャーロットのことは諦めたわけではない。彼女の言う然るべき時機とやらまでにどうにかしなくては。
見慣れない水色のドレスは、彼女にとてもよく似合っていた。
他の誰よりもシャーロットを大事に思っているのは自分だ、と。
「……それなら、それを証明してください」
「言われなくとも」
二人の間に緊張が走る。ルーク王子は相変わらず冷ややかな目でジャックを見ている。
「ジャック、葡萄酒を持ってきたわ」
シャーロットは心配そうな表情で二人の顔を交互に見ていた。不穏な空気を察して動揺しているようだ。
「ありがとう、シャーロット。俺はそろそろ行くよ、顔を広げてくる」
「ああ、そうするといい」
ルーク王子が取ってつけたような笑顔を貼り付けて、ジャックの背中を優しく叩いた。
背中を押すような親しげな仕草に、シャーロットはほっとしたような顔をしていたが、ジャックは気付いていた。
ーーさっさとこの場から離れろ、という意思表示だ。
悔しいがこれ以上この場にいたら言わなくてもいいことまで言ってしまいそうだった。
「ジャック」
シャーロットがジャックを呼び止めた。ルーク王子に聞こえないように、ジャックの肩に顔を寄せて小さな声で囁いた。ふわっと懐かしい香りがする。
「私なら大丈夫よ、心配しないで」
シャーロットはにっこりと笑った。
「ありがとうジャック。会えて嬉しかったわ」
返事をする間もなく、シャーロットはするりとジャックの側から離れてしまった。慌てて引き止めようと手を伸ばすが、何も掴めなかった。
ーーいつもこうだ。上手く言葉も返せずに、ルーク王子の元へ戻る背中を見送ることしか出来ない。
ローザから隣国の王子と婚約するらしいと聞いたときは冗談だと思っていた。それとも悪い夢でも見ているのか。
ジャックとシャーロットは家同士でも仲が良い。一緒にいるのが当たり前だった。いずれは結婚、なんてこともあるかもしれない。そういう話が、全く出てきていない訳でもなかった。
シャーロットはジャックのことを親しい友人だと思っている。二人に結婚の話が出るたびに茶化していたのは、シャーロットに振られてしまうのが怖かったからだ。そうしたら、きっと今までのような関係ではいられなくなってしまう。
だからこんな日がいつか来るかもしれない、そう思ったことは何度もある。実際こうも早くそんな日が訪れるとは思ってもみなかったのだが。
「どうするかな……」
シャーロットのことは諦めたわけではない。彼女の言う然るべき時機とやらまでにどうにかしなくては。
見慣れない水色のドレスは、彼女にとてもよく似合っていた。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
初恋は実らないものと聞いています。
豆狸
恋愛
「君だ!」
そのとき、アルバート殿下が叫びました。
殿下は立ち上がり、私を見つめてまくし立てます。
「私の初恋の相手は君だ!」
なろう様でも公開中です。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
もう一度だけ。
しらす
恋愛
私の一番の願いは、貴方の幸せ。
最期に、うまく笑えたかな。
**タグご注意下さい。
***ギャグが上手く書けなくてシリアスを書きたくなったので書きました。
****ありきたりなお話です。
*****小説家になろう様にても掲載しています。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる