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21.証明

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 ジャックはグッと言葉に詰まった。シャーロットの幸せを願っているのは自分も同じだ。むしろここに来るまでは、それ以上だと思っていた。

 他の誰よりもシャーロットを大事に思っているのは自分だ、と。

「……それなら、それを証明してください」

「言われなくとも」

 二人の間に緊張が走る。ルーク王子は相変わらず冷ややかな目でジャックを見ている。

「ジャック、葡萄酒を持ってきたわ」

 シャーロットは心配そうな表情で二人の顔を交互に見ていた。不穏な空気を察して動揺しているようだ。

「ありがとう、シャーロット。俺はそろそろ行くよ、顔を広げてくる」

「ああ、そうするといい」

 ルーク王子が取ってつけたような笑顔を貼り付けて、ジャックの背中を優しく叩いた。

 背中を押すような親しげな仕草に、シャーロットはほっとしたような顔をしていたが、ジャックは気付いていた。
 
ーーさっさとこの場から離れろ、という意思表示だ。

 悔しいがこれ以上この場にいたら言わなくてもいいことまで言ってしまいそうだった。

「ジャック」

 シャーロットがジャックを呼び止めた。ルーク王子に聞こえないように、ジャックの肩に顔を寄せて小さな声で囁いた。ふわっと懐かしい香りがする。

「私なら大丈夫よ、心配しないで」

 シャーロットはにっこりと笑った。

「ありがとうジャック。会えて嬉しかったわ」

 返事をする間もなく、シャーロットはするりとジャックの側から離れてしまった。慌てて引き止めようと手を伸ばすが、何も掴めなかった。

ーーいつもこうだ。上手く言葉も返せずに、ルーク王子の元へ戻る背中を見送ることしか出来ない。

 ローザから隣国の王子と婚約するらしいと聞いたときは冗談だと思っていた。それとも悪い夢でも見ているのか。

 ジャックとシャーロットは家同士でも仲が良い。一緒にいるのが当たり前だった。いずれは結婚、なんてこともあるかもしれない。そういう話が、全く出てきていない訳でもなかった。
 シャーロットはジャックのことを親しい友人だと思っている。二人に結婚の話が出るたびに茶化していたのは、シャーロットに振られてしまうのが怖かったからだ。そうしたら、きっと今までのような関係ではいられなくなってしまう。

 だからこんな日がいつか来るかもしれない、そう思ったことは何度もある。実際こうも早くそんな日が訪れるとは思ってもみなかったのだが。

「どうするかな……」

 シャーロットのことは諦めたわけではない。彼女の言う然るべき時機とやらまでにどうにかしなくては。
 
 見慣れない水色のドレスは、彼女にとてもよく似合っていた。

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