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7.違和感
しおりを挟む随分と豪華な部屋ね。
天蓋付きのベッドはどこまでも広い、見上げた天井は高く、天使の絵が描かれている。
耳を澄ますと、雨粒が硝子を叩く音が聞こえて心地良い。
セレーノ王国は雨が少ない。雨は心が落ち着くから好きだ。そういうと、グラオ王国の民からすれば、こちらの大変さも知らないと怒り出してしまいそうだ。
目を閉じた途端、扉が締まる大きな音がして、体をびくりと振るわせた。外の廊下の、奥の部屋から聞こえたように思える。
何かあったのかしら。
ただならぬ雰囲気に不安になる。
「……レックス? ルーク王子?」
部屋の外に声を掛けても返事が無い。焦りと不安で心細くなったシャーロットは、重厚な扉を開けてることにした。
レックスは部屋の外で待機していると言ったが、姿が見えない。
ーーどこに行ったのよ。
シャーロットは一瞬迷ったが、部屋の外に出て様子を見てみることにした。勝手に城内を歩き回るのは気が引けるが、どうしても気になってしまう。
ふと、一番奥の部屋の扉が開いているが見えた。強く閉じた反動で開いてしまったのだろう。
そこで足を止めておけばよかったのだ。いや、早い段階で正体を見極めた方が良かったのか。
「……なんてこと」
僅かな隙間から見えたのは、二人の男女の姿だった。
女の方はこの城の使用人ではなさそうだった。腰まで伸びた栗色の髪はウェーブが掛かってふわふわと柔らかい。
男の方は紛れもなくルーク王子だった。
「サバンナ……、泣かないで」
サバンナ、そう言われた女は泣いているようだった。
泣かないで、と言ったルーク王子の方が泣き出しそうな顔をしていた。涙に濡れた頬を優しく指で拭っている。あの人にそんな顔をさせるなんて、一体どんな女性なのか。
盗み見るのに夢中になっていて、ドレスの袖が燭台に引っ掛かっていることに気が付けなかった。
「……っ!」
火が灯っていなくて幸いだったが、耳を覆いたくなるような音を立ててしまった。二人の視線が集まっているのが分かる。
サバンナ、と呼ばれた女性はシャーロットより大人びて見えたが年齢は変わらないように見えた。栗色の髪に栗色の瞳、色気のある艶やかな唇。涙で濡れた頬を乱暴に手の平で拭い、乱れた胸元を素早く正した。
シャーロットはその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
サバンナは気まずそうに顔を背けたまま、慌てた様子で出て行ってしまった。
「シャーロット……」
ルーク王子は立ち尽くすシャーロットに、戸惑った様子だった。
「彼女は私の……幼馴染なんだ」
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