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微笑ましく見ていられたのは最初だけだった。
傍観しているとよくわかる。
ヒロインあざと過ぎるんだけど。
あれ絶対養殖だろ。
男子生徒の前でだけ露骨に態度が違う。
実際は計算高く、養殖ボケだというのは明白だ。
そういや私がゲームプレイしてた時も、がっつり計算して「男ってこういうのが好きだろ」って気持ちで選択肢選んでたっけ。
傍から見ると死ぬほどうざいなあれ。
私もゲーム世界のモブキャラからそう思われてたんだろうな。
そう気付いてからは関わらないようにした。
彼女のようなタイプは、私が最も苦手とする人種だったからだ。
なのに彼女は私をスルーしてくれない。
あからさまなのだ。私への敵意が。
見かけるたびに近付いてくる彼女に、すぐにうんざりするようになった。
トリスタンに興味を持つ気持ちはわかる。
くっきり二重まぶたに大きな口。快活な喋り方でコミュ強。友人も多いし貴族的立場も強い。
一見、超優良物件ではある。
実際はそれらの条件を上回るくらいのアホなのだけど。
婚約者の存在を恐れずアプローチする度胸は認めてあげよう。
ライバル意識を持つのもわかる。
だけど。
「なにか大変なことが起きたって聞いたんですけどぉ……本当になにもありませんかぁ?」
上目遣いに言って、緩く握った拳で口許を隠す。
出た、謎かわいいポーズ。
友人はまんまとポケッとした顔で見惚れている。
「お嬢、今の聞いた? 昨日の顛末知ってて聞いてるぜこの人」
背後に控えていたヨシュアが小声で言う。
もちろん私もわかっていた。
本題はこれだろう。
まんまと婚約破棄を言い渡されたのを知って、追い打ちをかけに来たのだろう。
「なになに、なんかあったの?」
隣にいた友人が私を見る。
好奇心に満ちた目だ。
彼は昨日のパーティを欠席していたから顛末を知らない。
だけど彼はお喋りで噂話が大好きだ。
トリスタンとの婚約破棄なんて、彼が知ったら学校中に知れ渡るはず。
エステルは狙ってこのタイミングで話しかけてきたのだろう。
「いいえなにも。私にとっては取るに足らない、とても些末ことなら起きたかも」
にっこり笑って凄味を利かせる。
どうやらこの女、まだ私とやり合う気らしい。
人の婚約者を惑わすだけじゃ飽きたりないようだ。
どうあっても私を悪役ポジションという名の引き立て役に置きたいらしい。
たぶん自分を可哀想で可弱く見せるには私の存在がちょうどいいのだろう。
目つきが悪くて背が高く、成績優秀で生意気で可愛げのない女。
一方どんぐりのような丸いお目めに庇護欲をそそる低身長、ちょっとお馬鹿だけど愛嬌だけはたっぷりな女。
並んで比較されると、自分がより可愛らしく見えるというのをよく理解している。
出会った時からずっと、私は彼女のブランディングのためにロックオンされ続けていたのだ。
トリスタンを奪えたとしても、婚約者を奪った女として自分が悪者にならないために絡まれ続けることだろう。
それが今ハッキリとした。
よろしい、ならばお望み通り、今から私はあなたの敵になりましょう。
傍観しているとよくわかる。
ヒロインあざと過ぎるんだけど。
あれ絶対養殖だろ。
男子生徒の前でだけ露骨に態度が違う。
実際は計算高く、養殖ボケだというのは明白だ。
そういや私がゲームプレイしてた時も、がっつり計算して「男ってこういうのが好きだろ」って気持ちで選択肢選んでたっけ。
傍から見ると死ぬほどうざいなあれ。
私もゲーム世界のモブキャラからそう思われてたんだろうな。
そう気付いてからは関わらないようにした。
彼女のようなタイプは、私が最も苦手とする人種だったからだ。
なのに彼女は私をスルーしてくれない。
あからさまなのだ。私への敵意が。
見かけるたびに近付いてくる彼女に、すぐにうんざりするようになった。
トリスタンに興味を持つ気持ちはわかる。
くっきり二重まぶたに大きな口。快活な喋り方でコミュ強。友人も多いし貴族的立場も強い。
一見、超優良物件ではある。
実際はそれらの条件を上回るくらいのアホなのだけど。
婚約者の存在を恐れずアプローチする度胸は認めてあげよう。
ライバル意識を持つのもわかる。
だけど。
「なにか大変なことが起きたって聞いたんですけどぉ……本当になにもありませんかぁ?」
上目遣いに言って、緩く握った拳で口許を隠す。
出た、謎かわいいポーズ。
友人はまんまとポケッとした顔で見惚れている。
「お嬢、今の聞いた? 昨日の顛末知ってて聞いてるぜこの人」
背後に控えていたヨシュアが小声で言う。
もちろん私もわかっていた。
本題はこれだろう。
まんまと婚約破棄を言い渡されたのを知って、追い打ちをかけに来たのだろう。
「なになに、なんかあったの?」
隣にいた友人が私を見る。
好奇心に満ちた目だ。
彼は昨日のパーティを欠席していたから顛末を知らない。
だけど彼はお喋りで噂話が大好きだ。
トリスタンとの婚約破棄なんて、彼が知ったら学校中に知れ渡るはず。
エステルは狙ってこのタイミングで話しかけてきたのだろう。
「いいえなにも。私にとっては取るに足らない、とても些末ことなら起きたかも」
にっこり笑って凄味を利かせる。
どうやらこの女、まだ私とやり合う気らしい。
人の婚約者を惑わすだけじゃ飽きたりないようだ。
どうあっても私を悪役ポジションという名の引き立て役に置きたいらしい。
たぶん自分を可哀想で可弱く見せるには私の存在がちょうどいいのだろう。
目つきが悪くて背が高く、成績優秀で生意気で可愛げのない女。
一方どんぐりのような丸いお目めに庇護欲をそそる低身長、ちょっとお馬鹿だけど愛嬌だけはたっぷりな女。
並んで比較されると、自分がより可愛らしく見えるというのをよく理解している。
出会った時からずっと、私は彼女のブランディングのためにロックオンされ続けていたのだ。
トリスタンを奪えたとしても、婚約者を奪った女として自分が悪者にならないために絡まれ続けることだろう。
それが今ハッキリとした。
よろしい、ならばお望み通り、今から私はあなたの敵になりましょう。
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