上 下
132 / 151
18

18ー7

しおりを挟む
良かった。
一先ず安心だ。
しかし、ただ安堵しているだけではいけない。
かすみは、今からのことも考えなければいけないのだ。

先手必勝。
逃げるが勝ち。
それらはいずれも昔からある言葉だ。

今回はこれに倣うこととしよう。
行動に起こすかすみ。

「い、いやー、仲直りしてくれて良かったよ。じゃ、じゃあ私はそろそろお暇しよっかなー……。」
ふらふらと立ち上り、立ち去ろうとする。

「……待って。」

「そんな悲しいこと言わないでよ、ほら、私の隣に来なよ。」

「い、いや、私いたらお邪魔じゃないかな?あはは……。」

「……。」

「……。」

「あっ、はい、座ります。」
無言の圧力に負け、再度座るかすみ。

「さ?かすみ?」

「……どっちから女王様にする?」

「あ、あぁ……えっと……。」

「……ちなみに、今日は泊まってってくれて大丈夫だよ?」

悲報だ。
頃合いを見て帰ろうと考えていたものを潰されてしまった。

「私も良い?」

「……仕方がない。今日は戦友として受け入れよう。」
機嫌が良いせいか。
美咲の提案をすんなりと受け入れるゆかり。

「やった。」
喜ぶ美咲。
彼女も帰宅しないようだ。

どうやら今日は帰宅を許されないようだ。
苦笑いで二人を見るかすみであった。


「あぁー、疲れたなぁ……。」
ボソリ。
呟く。

女王様ゲーム。
昨晩、それをやり続けたかすみ。
その結果、彼女は文字通り気絶する形で寝てしまった。

後半の記憶がほとんどない。
しかし、きっと思い出さない方が良いだろう。

朝日が昇り、そろそろ起きなければならないような時間だ。
しかし、布団から起き上がることが出来ない。
そんな状況であるにも関わらず、不思議と嫌ではないかすみ。

まず、右隣を見る。
可愛らしい寝顔のゆかり。
続いて、左隣を見る。
穏やかな寝息の美咲。
どちらも彼女に手足を絡ませて密着している。

このままというのも、きっと悪くないだろう。
しかし、今の彼女はそんな悠長なことを言っている場合ではなかった。


「ど、どうしよう……トイレ行きたい……。」
抜け出せそうにない。
これは、彼女らを起こすしかないようだ。


「ふ、二人とも起きて?ねぇ、起きてほしいなぁ……?」

「……。」

「……。」

無音。
正確には、寝息だけが聞こえる。
駄目だ。
こんなものでは起きない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

処理中です...