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なるほど、彼女の考えは、実に良いものだ。
しかし、それは出来ない。
「うーん、それは無理かな?」

「……なんで?今ならかすみちゃんの着替え私が独り占め出来るのに……。もしかして、エル達にも見てもらいたいの?」

「いや、別に二人にも見せたくないし、出来れば見られたくないんだけどなぁ……。」
あはは。
苦笑いするかすみ。

「……ならなんで?」

「だって、ほら。」
ゆかりの質問に、かすみが指を指しながら答える。
それは、今まさに騒いでいるエルと美咲へ向いていた。

さらに厳密に言えば、美咲へ向けられていた。
彼女の今着ているもの。
それが、本来かすみが着るはずの制服なのだ。

「……は?」
その可愛らしい容姿から出たとは到底思えないほど低い声。
そんな、背筋を凍らすものをゆかりが出した。

これだけはかすみにも分かる。
間違いなく彼女は今急激に機嫌が悪くなった。

「え?ゆ、ゆかりちゃん?」

「……羨ましい……。」

「う、羨ましい?」

「……私もかすみちゃんの制服着たい!」

「え?」
聞き間違いだろうか?
彼女は一体何を言っているのだ?
まるで分からないかすみ。
つい、間抜けな声が出てしまう。

「なっ!?あなた今着てるのはかすみさんの物なんですか!?」
どうやら今のやりとりが、エルの耳にも届いてしまったようだ。

「そうよ!何か問題ある!?あんた達と違って私はかすみとは本当の幼馴染なの!これは正当な権利よ!?」

そんなものは初耳だ。
そんなものは全くもって、暴論だろう。
美咲の言葉に、流石のかすみも苦笑いしてしまう。

きっと、こんなものは二人も納得出来ないだろう。
そう思っていた。
しかし、それは甘かった。

「くっ、これがぐうの音も出ないというやつですか……。」

「……悔しいけど正論……。私達には何も出来ない……。」

なんということだ。
どうやらこれは世間一般、もとい吸血鬼の間では正しいものであったようだ。

なんだかんだ言いつつ、美咲はエルやゆかりと打ち解けたようだ。
三人のすったもんだを見て、そう思うかすみであった。

「……。」
渦中のはず。
それなのに、なぜか第三者視点になってしまっているかすみであった。

この気持ちはなんだろう?
彼女らを見ていると、無視されているわけでもないのに、なぜか寂しくなってしまうかすみであった。
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