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「私が……その、幼馴染ではないのはご存知だと思いますが、人間でないことはご存知でしたか?」

「……。」
こくん。
頷くかすみ。

「しかし、私達も生き物です。かすみさん達のように、三大欲求というものがあります。」

私達。
つまり、エルだけでなく、ゆかりのことを指すのだろう。
そして、美咲が言っていたことも思い出す。
彼女らが吸血鬼であるということだ。

「そ、そうなんだね。」

「はい、そして、今食欲を満たすことが出来ました。……その分性欲が高まって危うくかすみさんを襲いそうになってしまいましたが……。」
ボソボソ……。
最初以外はかすみに聞こえるかどうか分からないほど小さな声でエルが言う。

エルの中で行われた性欲と理性の戦いは、接戦ではあったが、理性が勝った。
辛勝であったのだ。

そんなたいへんなことをしたのだ。
彼女に誉めてもらいたい。
そう思うエルであった。

「うん?そ、そっか。」
話の大半を聞き取れなかったかすみ。
しかし、追求しても無駄だろう。
そう思い、かすみが彼女へ聞き返すことはなかった。

「そうです。そんな私、偉いと思いませんか!?」

「う、うん?え、偉い……のかな?」
勢いに負けて、そう言ってしまうかすみ。

「はい!ありがとうございます。……さて、ゆかりさんの後を追いますか。」
彼女の言葉に満足したのか。
エルが笑顔になる。

もうずいぶん前に行ってしまったはずだ。
合流など不可能だろう。
しかし、エルは自信満々にそう言う。

「う、うん。」

その自信の正体は何なのだろう?
何か策でもあるのだろうか?
それとも説得力のないものなのだろうか?

「と、その前に……かすみさん、お荷物お預かりしても?」

「え?うん。」
言われるがまま、スクールバッグをエルへ渡すかすみ。

それを受けとると、自身のものをリュックサックの要領で背負った。
そして、かすみのものをひじにかけるのであった。

「それでは、失礼しますね。」
かすみの返答を聞かずに彼女を横抱き、つまりお姫様だっこをした。

「きゃっ!?」
急なことに驚くかすみ。
抵抗する間もなくそのまま担がれる。

「すみません、私に触られるの嫌かもしれませんが、少し我慢して下さいね。」
そう言うと、エルはかすみを抱えたまま走り出した。
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