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「エ、エルちゃん……。」

「……か、かすみさん……。」
彼女の声が聞こえた。
エルが驚きの表情を浮かべる。

今まで避けられていた。
しかし、それは当たり前だ。
彼女を責められない。
自身のせいだ。
自業自得だから、仕方のないことなのだ。

それでも、叶うならまたかすみとともにいたい。
隣を歩きたい。
そんな我が儘を言いたかった。

そんな、エルの自分勝手な願いだ。
それは、彼女自身にも分かっていた。
だから、そんな夢のようなものではない。
きっと、かすみがここに来た理由も、そんかものではない。

絶縁だ。
きっと、縁を切る為に来たのだろう。

律儀なものだ。
今まで自身を裏切った者なのに、それを言いに来てくれたのだ。


「い、一緒に帰ろう?」
かすみが言う。
その声にはどのような意味が含まれているのか分からないが、震えていた。

「……え?」
聞き間違いだろうか?
それとも、幻聴か。

あり得ない。
彼女は拒絶しに来た。
そのはずだ。
受け入れてくれるわけがない。
そんな都合の良い話など、あるわけがないのだ。

「一緒に帰ろう?」
再度、かすみが言う。

「今……かすみさんはここにいますよね……?」

「え?う、うん……いるよ?」

「本当……ですよ……ね……?」
声が震えている。
今にも泣きそうなエル。

そんな姿すら、妖艶であった。
偽りではあるが、彼女の幼馴染であるという記憶が役に立った。
こんなもの、耐性がなければ気絶してしまう。

「本当だよ。……ほら。」
正直な気持ち。
まだ、彼女が恐いかすみ。
しかし、今なら大丈夫。
そんな気がした。

目の前の弱々しい姿の少女。
彼女、とても恐れるほどの存在ではなく、自分と同じようなものなのではないか?
そんな疑問も出てくる。

ゆっくりと、手を伸ばす。
そして、エルの目尻に浮いている涙を優しく拭った。

「ごめんなさい……私……私……。」
我慢の限界が来たのだろう。
かすみの胸元に抱きつくエル。

泣いているエルは、小刻みに震えている。
泣いていないかすみも、小さく震えていた。
未だに彼女が恐いのだ。


未だに残っていたエルのクラスメイト達。
最初は、その珍しさに野次馬となって彼女らを見ていた。
しかし、ずっと見ているわけにはいかないと思ったのだろう。
一人、また一人といなくなっていった。
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