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「うん、ありがとう。」
自分は幸せ者だな。
そう思うかすみであった。
昼休み。
いつも通り、彼女らがくるのだろうな。
そう身構えるかすみ。
「かすみさん、お待たせしました。」
「……かすみちゃん、お昼行こ?」
やはり来たか。
「う、うん……。今行くね。」
少しでも良い。
今までなぜそう思いこんでいたのか分からない。
しかし、その思い込みの原因を探らなければならない。
今日は中庭ではなかった。
三人は、屋上に来ていた。
「屋上に来るなんて珍しいね……。」
「はい、たまには気分を変えてみようと思いまして……。」
ニコニコ。
純粋無垢な笑みを見せるエル。
「……風が気持ち良いね、かすみちゃん。」
「そ、そっか……あはは。うん、開放感あるね。」
なぜ生徒に解放されているのか。
本来あり得ない。
嫌な想像というものは、無限に広がっていってしまうものだ。
彼女らの影響力。
それが及んでこのような結果になっているのではないか?
そんなことを思ってしまうかすみ。
中庭。
思えばそこで昼食を食べていた時も、他の生徒は近くにいなかった。
夏で暑い。
しかし、曇っていて涼しい日もあったが、そんな日も例外ではなかった。
校内から見られてはしたが、いつも三人だけであった。
今回はそんな周囲の視線すらない。
何かされてしまうかもしれない。
そう思うと、心臓が警鐘のように騒がしくなった。
そもそも。
そもそもだ。
日傘を差す二人。
皮膚が弱く、日光が苦手なのだと言っていた。
それならば、なぜ彼女らは中庭や、今回のような屋上を選ぶのか。
日光に晒された場所。
最悪なはずだ。
なにか思惑があるのか?
分からない。
かすみには、何一つ彼女らの考えが分からなかった。
思考がまとまらない。
どうすれば良いのか分からない。
怖い。
今まで当たり前だったことが崩れていく。
価値観が崩壊する。
人生を否定されている気がする。
「かすみさん顔色が優れないようですが、大丈夫ですか……?」
「……かすみちゃん、どうしたの?」
駄目だ。
もう、駄目だ。
二人の声など届いていない。
頭がくらくらする。
悲鳴がぼんやりと聞こえた。
そんな気がする。
誰かに呼ばれている気がする。
身体を揺すられている気がする。
頬が熱い。
それが床のコンクリートの熱だと気づかずに、かすみの意識は遠退いていった。
自分は幸せ者だな。
そう思うかすみであった。
昼休み。
いつも通り、彼女らがくるのだろうな。
そう身構えるかすみ。
「かすみさん、お待たせしました。」
「……かすみちゃん、お昼行こ?」
やはり来たか。
「う、うん……。今行くね。」
少しでも良い。
今までなぜそう思いこんでいたのか分からない。
しかし、その思い込みの原因を探らなければならない。
今日は中庭ではなかった。
三人は、屋上に来ていた。
「屋上に来るなんて珍しいね……。」
「はい、たまには気分を変えてみようと思いまして……。」
ニコニコ。
純粋無垢な笑みを見せるエル。
「……風が気持ち良いね、かすみちゃん。」
「そ、そっか……あはは。うん、開放感あるね。」
なぜ生徒に解放されているのか。
本来あり得ない。
嫌な想像というものは、無限に広がっていってしまうものだ。
彼女らの影響力。
それが及んでこのような結果になっているのではないか?
そんなことを思ってしまうかすみ。
中庭。
思えばそこで昼食を食べていた時も、他の生徒は近くにいなかった。
夏で暑い。
しかし、曇っていて涼しい日もあったが、そんな日も例外ではなかった。
校内から見られてはしたが、いつも三人だけであった。
今回はそんな周囲の視線すらない。
何かされてしまうかもしれない。
そう思うと、心臓が警鐘のように騒がしくなった。
そもそも。
そもそもだ。
日傘を差す二人。
皮膚が弱く、日光が苦手なのだと言っていた。
それならば、なぜ彼女らは中庭や、今回のような屋上を選ぶのか。
日光に晒された場所。
最悪なはずだ。
なにか思惑があるのか?
分からない。
かすみには、何一つ彼女らの考えが分からなかった。
思考がまとまらない。
どうすれば良いのか分からない。
怖い。
今まで当たり前だったことが崩れていく。
価値観が崩壊する。
人生を否定されている気がする。
「かすみさん顔色が優れないようですが、大丈夫ですか……?」
「……かすみちゃん、どうしたの?」
駄目だ。
もう、駄目だ。
二人の声など届いていない。
頭がくらくらする。
悲鳴がぼんやりと聞こえた。
そんな気がする。
誰かに呼ばれている気がする。
身体を揺すられている気がする。
頬が熱い。
それが床のコンクリートの熱だと気づかずに、かすみの意識は遠退いていった。
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