上 下
51 / 151
8

8ー1

しおりを挟む
翌日の朝。
いつも通り起床するかすみ。
眠けでふらふらだ。

そんな彼女の部屋にいつも通り入る二人。
御機嫌なエルと、不機嫌なゆかり。

「おはよう、二人とも。」
彼女らに挨拶するかすみ。

「はいっ!おはようございます!」
明るく大きな挨拶。
満面の笑みでそれをするエル。
素晴らしいことだ。

「……おはよう。」
鈴の音のようなもの。
ゆかりもかすみに挨拶を返す。

いつもよりも声のトーンが低い。
他の者なら分からないような微細なものであったが、かすみにはすぐに分かった。

「昨日は置いていっちゃってごめんね、ゆかりちゃん。」

「……別に怒ってない。」

そんなもの、嘘だ。
怒っているに決まっている。
そして、その原因もかすみには分かっている。

「まぁまぁ、お二人ともっ!かすみさんは朝ご飯食べてないので早くリビングに行きましょう?」
ニコニコ。
可愛らしい笑みで言うエル。

「うん、そうだね。」

「……。」

それに従うかすみ。
つづいて部屋を出ようとする無言のゆかり。


「ふふふ……。」
かすみがいなくなった瞬間笑うエル。
つい漏れ出てしまったようなものだ。

「……何?」

「いえ、昨日はとても充実した日でしたので……。」

「……もしかして、喧嘩売ってる?」

「滅相もないです。私達が喧嘩をすればかすみさんを悲しませることになってしまいますので……。」

「……そう、なら良いけど……。」


朝食を済ませ、かすみの部屋に向かう三人。
制服に着替えるかすみ。
やはりそんな彼女をジッと見つめている二人。
その時、いつもと違うことにゆかりは気づいた。

「……かすみちゃん?」

「うん?」

「……制服新しいやつにした?」

「え?いや、どうなんだろ。」

「……どういうこと?」

「じ、実は……。」
チラリ。
エルを見るかすみ。

「ふふふ。」
かすみを見返すエル。
嬉しそうに微笑んでいる。

何だ?
その思わせ振りなアイコンタクトは何だ?
二人の間で何が起こったのだ?
嫌な予感がするゆかり。


「ふふふ、ゆかりさん、流石ですね。そうです、こちらは新品の物です。」
暗に言っている。
しかし、明確な回答を控えるエル。

ここで興味を示してしまっては彼女の思うつぼだろう。
「……ゆかりちゃん、どういうこと?」

エルに聞くのではない。
あくまで、かすみと会話をしているのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

処理中です...