上 下
18 / 151
3

3ー1

しおりを挟む
「これはまずいことになった。」

「……かすみちゃん?」

「どうしました?」

かすみの呟きに反応するゆかりとエル。
彼女らは今、中庭にいた。

ある日の昼休み。
三人で昼食をともにしていたのだ。

「いや、もうすぐ夏休みが始まるじゃん。」

「そうですね。楽しみです。」
この言葉に嘘はないのだろう。
ニコニコと可愛らしい笑顔を見せるエル。

「その……うーん。実はですねぇ……。」
言い辛そうなかすみ。

「……かすみちゃん?」

「一つ聞きたいことがあって……。」

「なんでもおっしゃって下さい!」
ずいっ。
詰め寄るエル。

「……かすみちゃんが私に興味を持ってくれて嬉しい。なんでも答える。」

「えっと、二人ってスタイル良いじゃん。」

「そ、そうですかね……自分では分かりませんが……。かすみさんにそう言って頂けるのは嬉しいです。……ふふふ。」

「……照れる。……えへへ。」

言葉通り。
嬉しそうにそっぽを向く二人。

そんな彼女らの様子に、少し驚くかすみ。
その美貌は、見た者全てを釘付けにする。
幼馴染であるかすみも、ふとした瞬間に見蕩れてしまうほどだ。

聞き飽きるほど聞いたであろう誉め言葉。
それなのに、正直に照れる姿は可愛らしいものであった。

「体型維持の為に何かやってることってあるかな?良かったら教えてほいしなぁーって……。」
有り体に言えば、ダイエットをしようと考えている。
しかし、素人が付け焼き刃で行動しても効率的ではないだろう。
かすみはそう考えたのだ。

身近にいる人物。
かつ、相談を茶化さずに聞いてくれる相手。
かすみにとって、両方を兼ね備えた者は限られてくる。

エルとゆかり。
彼女らは、その二つを兼ねていた。
さらに、こと今回に限って言えば二人以上に適任はいないだろう。

出ているところは出ている。
しかし、引き締まっているところはきっちりと締まっているエル。
小柄で細身なゆかり。
かすみは、是非とも彼女らに教えを乞いたいと思っていたのだ。

「体型維持ですか……。申し訳ありません、特に気にしていることはありませんね。……かすみさん、お力にかれずにすみません。」

気にしていることはない。
かすみには、グサリと刺さるものがあった。

「……よく寝て、よく食べる。そして、よく遊ぶ。この三つが重要。」
ふんす。
鼻息荒く、自信満々な様子のゆかり。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

タイツによる絶対領域

御厨カイト
恋愛
お昼前の授業も終わり昼休みになると、いつも私は彼女である澪と一緒に屋上でのんびり話をしながら過ごしていた。今日も私の膝の間に座り、嬉しそうに体を左右に揺らす澪とまったりと雑談をしていたのだが、その話の流れで澪の足を触る事に。しかし、そこで澪は足が弱いことが発覚し……

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...