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先ほどかすみへ差し出した箸。
彼女の口に触れたものだ。

それぞれ自身の持つそれを、口へ運ぶ二人。
本来の使い方でない。
何も摘まずに箸単体で口へ先端を入れたのだ。


ビクッ!
電気が流れたような反応をする二人。
その顔は恍惚とした表情を見せている。

「……あぁ……かすみ……私の……かすみ……。……大好き……。」

「ひぃ……凄い……この量でこれほどなんて……かすみ……愛してます……私だけの愛しい人……。」


腰が抜けて立ち上がれない。
かすみがいなければこの場所にいる意味はない。
そう言っていた二人であった。
しかし、結局、彼女らがその場を去ったのは、昼休みが終わる直前であった。


「癒しが……癒しが欲しい……。」
机に突っ伏してそう一人言を呟くのはかすみであった。

昼休みも間もなく終わる。
しかし、先ほど教室へ戻ってからも弁当を食べようともしなかった。
空腹ではないと言えば、嘘になる。
しかし、それでも今の彼女にはそれを食べるだけの気力がなかった。

「癒しが欲しいって、贅沢なこと言ってるね……。」
苦笑い。
彼女の呟きに対しての言葉。

持田さくら。
かすみのクラスメイトであり、友人の一人だ。

「まぁ、それもそうだけど……。」
さくらの言葉に言い返すかすみ。
しかし、上手く反論出来ない。

「イギリスとのハーフの大人な美少女のエル様こと神良エル先輩と、日本人形みたいな不思議さと可愛らしさを持つロリ美少女のゆかりんここと、磯飛ゆかりちゃん。その両者と仲が良いんだからそれ以上高望みしちゃ駄目だよ。」
早口で言ってのけるさくら。

よく噛まないな。
感心するかすみ。
「……へぇ、ゆかりちゃん、ゆかりんこなんてニックネームなんだ……。」

「え、そこ?」

「うん。そっかぁ……今度言ってみよっと。りんこちゃん……りんこちゃん。」

「ゆかりんこね。りんこちゃんって誰よ。知らない子が急に出てきたけど……。」

「ふふ、確かに……。」

あぁ。
楽だなぁ。
さくらと話すかすみ。
気楽に話せる。

セクハラまがいな絡みをされない。
これが正しいコミュニケーションではないのだろうか?

いつからだろう。
こんな接し方になったのは……。
「……あれ?」

「うん?どうした?」

「い、いや、何でもないよ。あはは……。」
誤魔化すかすみ。

そうだ。
自分はいつから彼女らと一緒にいる?
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