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校舎と校舎。
その間にある中庭。
そこに張りつめた空気が漂う。
その原因は、エルとゆかりであった。

真っ赤な日傘を差すエル。
真っ黒な日傘を差すゆかり。
そんな二人の間に挟まれたかすみ。
いつものことだがやはり慣れない。
冷や汗が止まらない。


「い、いやぁ……その……良い天気だね……。」
恐る恐る声を出すかすみ。

「……うん、良い天気。隣にかすみちゃんがいるから余計に清清しいよ。まぁ、邪魔なものもあるけど……。」

「本当に、かすみさんとお昼を過ごせて幸せです……。目障りな方もいらっしゃいますけど……。」

ギロリ。
睨み合う二人。

仲が良いというわけではない。
恐らくかすみがいなければ一緒に行動することなど皆無だろう。
しかし、今日はいつもよりも酷い。


無言で食べる三人。
どちらかが喧嘩を売らなければ平和が保たれるようだ。
しかし、それも束の間のことであった。

それを壊したのは、ゆかりであった。
今朝のことを根に持っていたのだろう。

「……はい、あーん。」

「え?」

かすみの前に差し出されたたまご焼き。
それは、ゆかりが箸で摘まんで彼女の前に出したものであった。

「……あーん。」
再度言うゆかり。
そんな彼女が摘まんでいるものは、今にも地面に落ちそうになっていた。
プルプル……。
かすかに揺れている。

これは落ちるのも時間の問題だな。
もったいない。
そんなことは駄目だ。

隣に座っているゆかりの方を向くかすみ。
ぱくっ。
差し出されたものを食べる。

砂糖が入っているのからだろうか。
かすみの口の中に甘さが広がる。

あぁ、背後を見たくない。
口の中の甘さとは違い、辛い。
からいではなく、つらい。
かすみには、これから起きるであろうことが予想出来るからだ。

トントン。
肩を叩かれるかすみ。
誰が叩いたのか。
振り向かなくともかすみには分かった。

「……かすみさん?」

「あっ、はい……。」
声の主。
エルに反応するかすみ。

「そちらばかりではなく、こちらも向いて下さい。」

「……今かすみちゃんはこっちで仲良くお昼を食べている。邪魔しないで。」
かすみの代わりにエルに言うゆかり。

「かすみさん、こちらを向いて下さいな?」
ゆかりの声など聞こえていない。
そう言わんばかりのエルが再度かすみへ言う。

声は明るい。
しかし、それは何かどす黒いものを感じるものであった。
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