はりぼてスケバン弐

あさまる

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華子へ、その理由を聞いている。
彼もこの関係性に順応しているということだろう。

「い、いや、その……。」
話しにくい。
話しにくいことこの上ない。
しどろもどろになる華子。

「……?言いにくいことか?」

妙なところで鋭い。
可能なら、その鋭さをもっと日常に活かしてほしい。
亥玄の言葉に対してそう思う華子であった。

「姐さん、話してほしいっす!姐さんのそんな顔、見たくないっす!」

もう良い。
気を使っていたが、ここまで言われては仕方がない。

「藤柴君が赤点ばっかで単位落としそうって先生に相談されたの!」
華子が、周囲で騒いでいる者達全員に聞こえるように大きな声を上げる。


一瞬の沈黙。
その時、彼女は自身が仕出かしたことを理解した。

「あ、あの、ごめ……。」
しまった。
こんな大衆の面前で恥をかかされたのだ。
慌てて謝罪の言葉を発する華子。
しかし、それはすぐにかき消される。

「おぉ!やるな、シバマル!」

「ようやくか!」

「……え?ど、どういうこと?」
まさかの言葉が飛び交う。
何が何だか分からない。
戸惑う華子が謝るのを止め、困惑の声を上げる。
そして、丸雄の方を見た。

「い、いやーそれほどでもー。ほら、姐さんも褒めてほしいっすよ!」

「いや、いやいやいや!おかしいよ!単位落としそうって話したんだよ!?なんで褒めないといけないの!?」
華子が丸雄へ指摘する。
至極全うなものだ。

「なんでってそりゃあ、黒高の生徒なら単位なんて落としてナンボじゃないっすか。」
丸雄がさも当たり前かのように言ってのける。

「……。」
彼の言葉の意味がまるで理解出来ない。
絶句する華子。

あまりのショックに一瞬意識が飛んでいたようだ。
この短期間で番長にまで上り詰めた。
少なからず、慣れていると思っていた。
しかし、どうやらそれは華子の自惚れだったようだ。


「い、いや、そんなんじゃ駄目なんだって!」
ハッと我に返った華子が声を発する。

「いやいや、姐さん、黒高の歴代の有名人は皆単位を落としてるんっすよ?そんな人達と同じステージに立てたんっすよ!?こんな名誉なことないっすよ!」

「不名誉!これ以上ないほど不名誉だから、それ!」

「華ちゃん面白いこと言うねー。」

「今回の頭はユーモアだな。」

まるで華子がおかしいかのように周囲が笑っている。
頭がおかしくなりそうだ。
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