はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
94 / 118
8

1

しおりを挟む
亥玄と秋姫。
華子が、その二人と出かけた翌日。
日曜日。

華子は今、黒龍高校から近い図書館へ来ていた。
彼女の目的。
それは、読書などではない。

目の前にいる者とともに勉強会をする為だ。
その人物。
それは、丸雄だ。

「姐さん、一回休憩しないっすか?」
丸雄からの提案だ。
そんなもの、彼女が素直に受け入れられるわけがない。

「えー?これで何度目?」
当然の反応だ。

「さ、三回……っすか?」

「五回目。流石に一時間も経ってないのに休憩し過ぎだよ。」
苦笑い。
丸雄の集中力のなさに呆れててしまう華子。

「で、でも……っす……。」

「デモもテロもないんでしょ?」

「何っすか、それ?姐さん急にそんなこと言い出して……。」
苦笑いし困惑する丸雄。

「なっ!?」
以前自分が言っていたことなのに、丸雄はそのことを忘れていた。
そして、あろうことかその言動を小馬鹿にしている様子を見せる。
そんな衝撃から荒々しい声が華子の口から出る。

「……まぁ、おふざけはここまでにして、姐さん、これ教えてもらえないっすか?」

「え?あ、うん。えっと、それは……。」

華子自身、決して特別勉強が出来るわけではない。
しかし、それでも丸雄に教えることになっていた。


なぜこのような状況になったのか。
それは、数日前に遡る。

「……まさかここで先生らしいことが出来るなんて……ありがとう、鼬原さん。」

「あはは、いえ……その……心中お察しします。」

黒龍高校の廊下。
授業後の休み時間。

生徒達の提出したノートを職員室へ運ぶ華子。
その隣には教科担任。
若い女性で、華子と話している彼女の表情は柔らかい。

「ありがとう。私、今年からここに赴任って言われた時は絶望しかなくて……。でも、あなたが番長になってくれたおかげで授業出来るようになったからね。」

「あはは……授業……。あれが普通の授業かぁ……。」
華子の脳裏に過るいつもの授業風景。

談笑や、携帯電話を触っている。
それぞれ好き勝手な行動をしている生徒達。
授業を聞いているのは華子のみであった。

「ま、まぁ授業真面目に受けてくれてるのはあなただけなんだけどね……。」
苦笑い。

「それは……そうですね……。」
どう返答して良いか分からない華子は、そう答えざるを得なかった。

「ところで、鼬原さんはこの高校を選んだ理由はあるの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

曙光ーキミとまた会えたからー

桜花音
青春
高校生活はきっとキラキラ輝いていると思っていた。 夢に向かって突き進む未来しかみていなかった。 でも夢から覚める瞬間が訪れる。 子供の頃の夢が砕け散った時、私にはその先の光が何もなかった。 見かねたおじいちゃんに誘われて始めた喫茶店のバイト。 穏やかな空間で過ごす、静かな時間。 私はきっとこのままなにもなく、高校生活を終えるんだ。 そう思っていたところに、小学生時代のミニバス仲間である直哉と再会した。 会いたくなかった。今の私を知られたくなかった。 逃げたかったのに直哉はそれを許してくれない。 そうして少しずつ現実を直視する日々により、閉じた世界に光がさしこむ。 弱い自分は大嫌い。だけど、弱い自分だからこそ、気づくこともあるんだ。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...