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無駄に疲れる平日。
そんな数日を何とかこなし、漸く訪れた休日。
土曜日。
雲一つない空。
所謂晴天というやつだ。
十時前。
華子はとある駅前に来ていた。
十時集合。
その為、それよりも早く来た彼女は待つこととなっていた。
「……あっ、すみません、友人を待ってるので……。そういうの興味ないんで……本当すみません……。」
なるべく視線を合わせずに答える華子。
興味がないというのを伝えるのにはこれが一番だと考えたからだ。
そのお陰だろうか。
彼女に声をかけてきた者はそそくさと立ち去った。
ため息。
今日、これで何回目だろうか。
華子は辟易していた。
先ほどから何度も見知らぬ青年に声をかけられ続けているからだ。
所謂ナンパだ。
今まであまり街中へ行ったことがなかった。
それに、数少ない訪問時も、秋姫がいた為、自身が対応せずにいれた。
しかし、今は違う。
「……秋姫……早く来てくれないかな……。」
ボソリ。
呟く華子。
そんな彼女にゆっくりと近づく影。
それは、彼女の背後に立つと、肩を叩いた。
「おわっ!?」
ビクッ!
突然の接触に驚く華子。
すぐさま振り返る。
「よう。」
「……あ、鯉崎……君……?」
「すまないな、待たせたみたいだ。無事か?」
彼女へ向けた言葉。
亥玄の口から出たものだ。
彼の私服を初めて見た。
どうやらそのポテンシャルを侮っていたようだ。
テレビで見るようなアイドルやイケメン俳優と遜色ない。
その証拠に、華子の視線の隅にいる少女から女性と呼べる年代の者達が皆彼に釘付けになっていたのだ。
「うん、大丈夫だよ。私も今来たところだから。」
周囲の視線、主に嫉妬の含まれたものを感じつつ、華子が返事をする。
「……奴はまだ来ないのか?」
奴。
秋姫のことだ。
彼も華子が彼女と待ち合わせをしていることを知っているのだ。
「う、うん。まだみたいだね。」
「……罠じゃないのか?」
「そ、そんなことないよ!秋姫、ちゃんと反省してたもん!」
「……まぁ、どちらでも良いがな。」
「そ、そんな言い方しなくても……。」
「どちらにせよ俺はお前を守るだけだ。」
「……。」
どう返答して良いものか分からず、声が出ない華子であった。
なぜ華子が亥玄とともに秋姫を待っているのか。
その理由は、数日前に遡る。
教室内。
自席で携帯電話を眺めている華子。
そんな数日を何とかこなし、漸く訪れた休日。
土曜日。
雲一つない空。
所謂晴天というやつだ。
十時前。
華子はとある駅前に来ていた。
十時集合。
その為、それよりも早く来た彼女は待つこととなっていた。
「……あっ、すみません、友人を待ってるので……。そういうの興味ないんで……本当すみません……。」
なるべく視線を合わせずに答える華子。
興味がないというのを伝えるのにはこれが一番だと考えたからだ。
そのお陰だろうか。
彼女に声をかけてきた者はそそくさと立ち去った。
ため息。
今日、これで何回目だろうか。
華子は辟易していた。
先ほどから何度も見知らぬ青年に声をかけられ続けているからだ。
所謂ナンパだ。
今まであまり街中へ行ったことがなかった。
それに、数少ない訪問時も、秋姫がいた為、自身が対応せずにいれた。
しかし、今は違う。
「……秋姫……早く来てくれないかな……。」
ボソリ。
呟く華子。
そんな彼女にゆっくりと近づく影。
それは、彼女の背後に立つと、肩を叩いた。
「おわっ!?」
ビクッ!
突然の接触に驚く華子。
すぐさま振り返る。
「よう。」
「……あ、鯉崎……君……?」
「すまないな、待たせたみたいだ。無事か?」
彼女へ向けた言葉。
亥玄の口から出たものだ。
彼の私服を初めて見た。
どうやらそのポテンシャルを侮っていたようだ。
テレビで見るようなアイドルやイケメン俳優と遜色ない。
その証拠に、華子の視線の隅にいる少女から女性と呼べる年代の者達が皆彼に釘付けになっていたのだ。
「うん、大丈夫だよ。私も今来たところだから。」
周囲の視線、主に嫉妬の含まれたものを感じつつ、華子が返事をする。
「……奴はまだ来ないのか?」
奴。
秋姫のことだ。
彼も華子が彼女と待ち合わせをしていることを知っているのだ。
「う、うん。まだみたいだね。」
「……罠じゃないのか?」
「そ、そんなことないよ!秋姫、ちゃんと反省してたもん!」
「……まぁ、どちらでも良いがな。」
「そ、そんな言い方しなくても……。」
「どちらにせよ俺はお前を守るだけだ。」
「……。」
どう返答して良いものか分からず、声が出ない華子であった。
なぜ華子が亥玄とともに秋姫を待っているのか。
その理由は、数日前に遡る。
教室内。
自席で携帯電話を眺めている華子。
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