はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
82 / 118
7

1

しおりを挟む
無駄に疲れる平日。
そんな数日を何とかこなし、漸く訪れた休日。
土曜日。

雲一つない空。
所謂晴天というやつだ。

十時前。
華子はとある駅前に来ていた。

十時集合。
その為、それよりも早く来た彼女は待つこととなっていた。


「……あっ、すみません、友人を待ってるので……。そういうの興味ないんで……本当すみません……。」
なるべく視線を合わせずに答える華子。
興味がないというのを伝えるのにはこれが一番だと考えたからだ。

そのお陰だろうか。
彼女に声をかけてきた者はそそくさと立ち去った。

ため息。
今日、これで何回目だろうか。

華子は辟易していた。
先ほどから何度も見知らぬ青年に声をかけられ続けているからだ。
所謂ナンパだ。

今まであまり街中へ行ったことがなかった。
それに、数少ない訪問時も、秋姫がいた為、自身が対応せずにいれた。
しかし、今は違う。

「……秋姫……早く来てくれないかな……。」
ボソリ。
呟く華子。


そんな彼女にゆっくりと近づく影。
それは、彼女の背後に立つと、肩を叩いた。

「おわっ!?」
ビクッ!
突然の接触に驚く華子。
すぐさま振り返る。

「よう。」

「……あ、鯉崎……君……?」

「すまないな、待たせたみたいだ。無事か?」
彼女へ向けた言葉。
亥玄の口から出たものだ。

彼の私服を初めて見た。
どうやらそのポテンシャルを侮っていたようだ。

テレビで見るようなアイドルやイケメン俳優と遜色ない。
その証拠に、華子の視線の隅にいる少女から女性と呼べる年代の者達が皆彼に釘付けになっていたのだ。

「うん、大丈夫だよ。私も今来たところだから。」
周囲の視線、主に嫉妬の含まれたものを感じつつ、華子が返事をする。

「……奴はまだ来ないのか?」
奴。
秋姫のことだ。
彼も華子が彼女と待ち合わせをしていることを知っているのだ。

「う、うん。まだみたいだね。」

「……罠じゃないのか?」

「そ、そんなことないよ!秋姫、ちゃんと反省してたもん!」

「……まぁ、どちらでも良いがな。」

「そ、そんな言い方しなくても……。」

「どちらにせよ俺はお前を守るだけだ。」

「……。」
どう返答して良いものか分からず、声が出ない華子であった。


なぜ華子が亥玄とともに秋姫を待っているのか。
その理由は、数日前に遡る。

教室内。
自席で携帯電話を眺めている華子。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

曙光ーキミとまた会えたからー

桜花音
青春
高校生活はきっとキラキラ輝いていると思っていた。 夢に向かって突き進む未来しかみていなかった。 でも夢から覚める瞬間が訪れる。 子供の頃の夢が砕け散った時、私にはその先の光が何もなかった。 見かねたおじいちゃんに誘われて始めた喫茶店のバイト。 穏やかな空間で過ごす、静かな時間。 私はきっとこのままなにもなく、高校生活を終えるんだ。 そう思っていたところに、小学生時代のミニバス仲間である直哉と再会した。 会いたくなかった。今の私を知られたくなかった。 逃げたかったのに直哉はそれを許してくれない。 そうして少しずつ現実を直視する日々により、閉じた世界に光がさしこむ。 弱い自分は大嫌い。だけど、弱い自分だからこそ、気づくこともあるんだ。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...