はりぼてスケバン弐

あさまる

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「そっか、ありがとう。なら、空き教室に来てほしいな。」
優しく微笑む巳白。

「う、うん……分かった。」

後は彼女を丸め込むだけ。
きっかけさえあれば、どうとでもなる。

秋姫に忍び寄る影。
それは文字通り、蛇のように絡まり逃げることの出来ないものであった。

時は進み、放課後。
秋姫は巳白に言われた通り、下校せずにいた。

どうやら何か話があるようだ。
しかし、本当に何についてなのか分からない。

ぼんやりと窓の外を眺める。
雲がゆっくりと流れている。

「ごめんね、橋川さん、お待たせ。」

「うん、大丈夫だよ。それで何かな?」
視線を移動させる秋姫。
声の主は、彼女が待っていた巳白であった。

「……最近、減ったよね。」

「……え?」
最近減った。
何がだ?
まるで意味が分からず、秋姫はつい聞き返してしまった。

「ほら、俺らみたいな高校から入って来た奴らだよ。」

「あぁ……なるほど、うん。そうだね。」
そういうことか。
彼の言葉が理解することが出来た秋姫。

白百合高校。
幼稚園から、所謂エスカレーター式に進学する者達。
そして、高校入試により入学して来た者達。

ここには、その二種類の生徒がある。
巳白と秋姫は、後者だ。
そして、様々な面で肩身の狭い思いをしてきてもいた。

「数少ない生き残りとして仲良くしたいなーって思ってさ。」

「……ふふふ。生き残りって、何それ。」
彼のおかしな言い回しに、秋姫はつい笑ってしまった。

妙な安心感。
彼とは今日初めて話した。
しかし、なぜだか落ち着ける。
秋姫は、無根拠でありながら、彼を信用し始めていた。

その後、取り留めのない雑談をした。
これほど面白い人物ならば、もっと早く話したかった。
そんな後悔をするほど、秋姫にとって彼との会話は楽しかった。


数時間後。
窓の外はもう暗くなっている。

「久しぶりにたくさん話したなー。」
満足げな秋姫。

「それは何より。こっちも楽しかったよ、ありがとう。」
ふふふ。
再度、優しい微笑みを浮かべる巳白。

「さて、すっかり暗くなっちゃったね。帰ろっか。」
秋姫が背筋を伸ばす。
パキパキと、間接が小気味良い音を鳴らした。

「あぁ、そうだね。」

空き教室。
今までいたそこから出る二人。

部活をやっていた者達も、下校しようとしていた。
そんな中、秋姫達は校庭を歩く。
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