はりぼてスケバン弐

あさまる

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「……。」
きっと、これは本当だろう。
飛鳥は彼の言葉を信じることにした。

「さ、ジャンジャンゴミ拾いするぞーっと!」
そう言うと、心司は歩き出し、飛鳥から遠ざかるのであった。

「……まぁ、今はあいつを信じる他ないか……。」
飛鳥の結論は、そんなものであった。
そして、彼も歩き出した。


「……。」

妙な緊張感。
華子はプレッシャーを感じていた。

原因は分かっていた。
それは、周囲で監視する住民の目であった。

原因は分かっている。
黒龍高校の生徒達。

不良の巣窟である黒龍高校。
華子を含む、そこに属する者達が、いきなりゴミ拾いのボランティアをし始めたのだ。
何か裏があると疑わない方がおかしい。

華子も彼らの気持ちは分かる。
むしろ、本来彼ら側の考えに同意していただろう。

今まで好き勝手やっていた不良達。
そんな彼らが突然住民にとって良いことをしようしている。

疑わしい。
不気味。
恐い。
こんな感想を抱くのも無理はない。
華子もきっと、彼らと同じ立場になれば同じ考えを持つだろう。
しかし、だからこそ、変えたいのだ。

不良という烙印を押されている彼ら。
しかし、蓋を開ければ素直な少年達だ。
それを知ってほしい。
だからこそ、このきっかけは重要なのだ。

地道な積み重ね。
それこそが重要なのかもしれない。
現状のイメージを打破する為にはそれくらいのことをしなければならないだろう。

「よしっ!皆頑張ろうっ!」
黒龍高校の者達へ向けた華子の声。
そして、それに彼らは反応する。

彼女の声に、皆が声を上げる。
それは、うるさいほどのものであった。

これは駄目だ。
もう少し、おしとやかとまではいかないが、大人しくしてもらった方が良いかもしれない。
内心そんなことを思う華子であった。


ゾロゾロと移動する生徒達。
そして、その中で華子もゴミ拾いを行う。

不良である為、華子も彼らの行動にはあまり期待していなかった。
しかし、良い意味でそれを裏切ってくれた。

意外なことに、皆しっかりとゴミ拾いをしていたのだ。
これはどういうことだろう?
どういう風の吹きまわしだろう?
疑問に思う華子。
そんな彼女の視線に気づいたのか、彼らの一人が彼女を見て口を開く。

「鼬原?どうしたんだ?」

「え?あ、ごめん、皆ちゃんとゴミ拾いやってくれてるなーって思って……。」
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