はりぼてスケバン弐

あさまる

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「はい。」
辰美の言葉にはすぐに、そして素直に返事をする蝶華。
彼女はそのまま華子の方へ視線を移した。

「……。」
何を言われるのだろう。
つい身構えてしまう華子。
しかし、それは杞憂に終わる。

「そのお礼のお言葉……ありがたく受け取りますね。」
先ほどと言っていることが真逆である。
蝶華の口からそのような言葉が飛び出る。

「……え?あ、うん……。どうもです……。」
先ほどと真逆な彼女の回答に戸惑う華子。

蝶華の考え方は、こうも容易く変わってしまうのか。
それとも、彼女の中で辰美という存在が非常に重いのだろうか。


「……では、以上で終了と致します。」
蝶華のこの一言で、今度こそこの集まりは終わりを告げた。

ゾロゾロと館内から出て行く者達。
今はまだ、同じ高校の者達で固まっている。
しかし、いつかそれらが混じる日も来ることだろう。


「姐さん、俺らもそろそろ行かないっすか?」
いつまでも館内に残っている華子。
そんな彼女へ向けられた丸雄の声。

「う、うん。」
そうは言うものの、彼女は動こうとしない。

視線の先には未だに残る白辰高校の生徒達へ向けられている。
さらに厳密に言えば、蝶華を見ていた。

「……鼬原?」
同じように彼女を待っていた亥玄が口を開く。

「ご、ごめん、ちょっと待ってて。」
そう言うと、華子は早歩きで進み出した。
目的地は蝶華のところだ。

「……何か?」
途中で気づいた蝶華が彼女へ言う。

無表情。
そこからはどのような考えを持っているのかは分からなかった。

「え、えっと……。」
つい苦笑い。
自身の無鉄砲さに内心呆れてしまう華子。

「……。」
無言で彼女を見る辰美。
彼だけでなく、未だに残っていた白辰高校の生徒達も見ている。

「……。」
少し離れた場所。
そこで、丸雄や亥玄達黒龍高校の生徒達もそこへ注目している。

先ほど協定を結んだ。
しかし、それでも不安定なそれは、いつ崩れるか分からない。
それが数年後かもしれないし、明日かもしれない。
もしかすると、今ということもあるかもしれない。


無音。
にらみ合い。

「……行くぞ。」
最初に口を開いたのは、辰美であった。

「はい。」
華子のことが気になるのであろう。
彼に言われたことに従う意思を示しつつも、彼女への視線を外さない蝶華。

「いや、お前は良い。」

「……え?」
予想外。
蝶華が驚愕し、目を見開く。
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