はりぼてスケバン弐

あさまる

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黒龍高校。
その体育館。
普段は閑散としているはずのそこは、今は大勢の学生がいる。

向かい合うのは県内屈指の不良校の生徒達。
圧倒的な武力で長年その名前を轟かせてきた高校である黒龍高校。
そして、黒高に匹敵する力を持ち、圧倒的なカリスマ性を持つ生徒により統治されてきた白辰高校。

その二つの高校の生徒が今、睨み合っている。
しかし、一触即発というわけではない。


「……それでは、僭越ながら私からご挨拶を……。」
口を開いたのは、白辰高校の制服に身を包んだ女子生徒であった。

尾谷蝶華。
真新しい白いブレザー。
白辰高校の一年生でありながら、中心人物となった少女だ。

「……。」
緊張している。
しかし、それが目の前の他校の生徒達に勘繰られるわけにはいかない。

鼬原華子。
こちらも新しい黒いブレザー。
黒龍高校の一年生であり、地域屈指の不良校であるそこの番長となった少女だ。


少し時間は遡り、三十分ほど前。
教室内。

ソワソワ。
浮き足立っている。
普段の彼女を知らなくとも分かる。
華子の挙動が今までにないほどに不審であった。

「……鼬原。」

「っ!?な、何っ!?」
ビクッ!
突如名前を呼ばれ、跳び跳ねる華子。

「落ち着け。」
低く落ち着いた声。
亥玄の発したものだ。

「お、落ち着け!?それ、ほ、本気で言ってるの!?」
パニック。
今の彼女にぴったりの言葉がそれであった。

「……本気だ。当たり前だろ……。」
呆れた様子の亥玄。
きっと彼はこう思っているだろう。
彼女を番長として認めたのは間違いだった。

「ま、まぁまぁ、姐さんでなくともこんな大舞台はソワソワしても仕方ないっすよ。」

「ふ、藤柴君っ!」
目をキラキラさせ、彼を見る。
弱っているせいもあるだろう。
丸雄がこの上なく頼れる存在に見える華子であった。

「でもっ!黒龍の番長としてバシッと決めてもらわないと困るんっすよ!」

「あ、あぁ……そっかぁ……。」
駄目だ。
彼も味方ではなかった。

「まぁ……どうしても無理だと言うのであれば……。」
亥玄が再度口を開く。

「い、言うのであれば……!?」
今度は彼が助け舟を出してくれたのか。
期待する華子。

「無言で白辰の頭を……八咫を見ていれば良い。」

「な、なるほど……?」
あながち悪くないかもしれない。
彼の言葉に少しばかり納得してしまう華子であった。
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