甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「……っ!」
乱暴に開けられた部屋の扉。
それは、美成実がしたことではない。
梨華自身がしたことであったのだ。

「わっ!?」
驚き情けない声を上げる美成実。
その場で小さく跳び跳ねてしまった。

「あんたに言われなくても分かってる……。」
そこにいたのは梨華。
目元が真っ赤に腫れている。
長時間泣いていたのだろう。
しかし、その瞳にはしっかりと光が宿っていた。

「え?」

「それに……あんたなんかに翔子ちゃんは渡さないから……。」
そう言うと、ドスドスと彼女を威嚇するようにわざと大きな足音を立てて梨華は廊下を歩いていった。

どこへ行くのだろう?
彼女を目で追う美成実。
その目的地は翔子の部屋であった。

「え?翔子のとこ……?」

まずい。
まずいまずいまずい。

何がかは言えないが、今の梨華を彼女の元へ向かわせては行けない気がした。
美成実は急いで彼女の跡を追う。


「り、梨華ちゃん!?」
驚く翔子。
美成実が梨華に追い付いた時には尻餅をつき、目を見開いていた。

真優も同じように驚いている。
恐らく彼女のその勢いに負けてしまったのだろう。

「今私が冷静じゃないって私が一番分かってる!でも言わせて!」
声を荒らげる梨華。
その瞳には決意が宿っていた。

間違いない。
彼女は何かとんでもないことをやろうと……やらかそうとしている。
固唾を飲む翔子と真優。

「……。」
困惑。
ただただ困惑しながら梨華を見る翔子。

そんな姿すら美しい。
彼女は本当に自分と同じ親から生まれたのだろうか?
そんな疑問が浮かんでしまうほど、翔子に魅了されてしまう梨華。
しかし、惚けている場合ではない。

「翔子ちゃん!」

「っ!?は、はいっ!」
ビクッ。
名前を呼ばれ、身構える翔子。

これは宣戦布告だ。
真優と美成美。
そして、翔子へ対してのだ。
そして、自身の逃げ場を無くす為の行為でもあった。

「私は翔子ちゃんが好き!真優さんになら翔子ちゃんのこと任せられるって思ってた……でもやっぱ嫌!取られたくない!」

彼女の言葉に驚く翔子。
そして、それは真優と翔子も同じであった。

やられた。
インパクトもさることながら、牽制する意味でも効果的だ。
美成実は無意識に歯軋りするのであった。

「……。」
そうか。
梨華もそうなのか。

これは駄目だ。
負けてられない。
真優の瞳に決意が宿る。
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