甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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21ー2

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「どうぞー。」
気の抜けた声で扉越しにいる人物を呼ぶ。

「お、お邪魔しまーす……。」
緊張気味の梨華の声。

「はーい、いらっしゃいませー。」
招き入れる声。
対照的に、のんびりと、リラックスしている。

「……。」
先ほどまで運動でもしていたのかと思うほど疲弊した梨華が部屋の中へ入る。
その額と頬には大粒の汗が流れていた。

「大丈夫?ほら、座って、座って?」
翔子の純粋な視線が梨華を捉える。

「うん……ありがとう。」
翔子の優しさに罪悪感がわく。
チクリと胸が痛む梨華であった。

「どういたしましてー。」

「そ、それで何かな?」

「えっと、私の友達の……美成実ちゃん……覚えてる?」

「……え?う、うん……。」
弓浜美成実。
忘れる訳がない。
いや、忘れたくとも忘れることの出来ない憎い存在だ。

「実はね、美成実ちゃんが転校して来たんだ。」

「……は?」
梨華は、自身の耳を疑った。
嘘だと信じたかった。

エイプリルフールか?
違う。
今は四月ですらない。
それに、こんな嘘は許される範囲を越えている。

ドッキリか何か?
違う。
翔子がそんなことをするとは考えられない。

なぜ彼女の口からその名前が出てくるのか。
やはり分からない。
そして、それよりも何よりも不思議なことがある。
なぜそれを微笑みながら話しているのか。
梨華には、どうしてもそれが理解出来なかった。

「り、梨華ちゃん……?」
梨華の様子がおかしいことを心配した翔子が言う。

「……何で?」

「え?」

「何でそんな奴の名前が出て来るの?」

「梨華ちゃん?」

「何でそんな嬉しそうな顔してるの!?あいつのやったこと忘れたの!?」

「ひっ!?」
急に大声を出した梨華に驚く翔子。
しかし、そんな彼女に気を使えるほど今の彼女には余裕はない。

「そんな……そんなのおかしいじゃん!何で翔子ちゃんに酷いことした奴が翔子ちゃんに認められてるの!?私、ずっと翔子ちゃんに好かれる為に……一番になる為に頑張ってたのに!そんな顔して他の奴の話しないでよ!翔子ちゃんは私の姉なんでしょ!?妹のこと一番に思ってよ!……私だけの翔子ちゃんでいてよ!!」
我が儘。
これは無茶苦茶なものだ。
それは、今声を張り上げている梨華すら分かっていた。
しかし、一度溢れ出たものは止めることが出来なかった。
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