甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「ま、真優ちゃん……。」
困っているのだろう。
翔子の声が震えている。

「気にしなくて大丈夫だよ。さっきは無理だったけど、今度は近づけさせないから。」

「……。」
邪魔だ。
目の前にいる真優に、そんな気持ちを抱く。

美成実自身、決して大柄というわけではない。
むしろ、小柄な方だろう。
しかし、対格差では真優に勝っている。

力づくでいくか?
翔子に近づく為なら、そんな強引な手段も辞さない。

「あ、あの……二人とも……。」
流石に異変に気づいたのだろう。
翔子が二人を止めようとする。

前言ならぬ、前思撤回。
そんなことをしてしまえば、また翔子を傷つけてしまう。

「……分かったよ、翔子さん。弓浜さん、放課後空いてますか?」

「うん。」

翔子の前で事を荒げたくない。
どうやら彼女も同じ気持ちのようだ。

「翔子?」

「っ!?……な、なに?」
突如美成実に呼ばれた翔子。
驚きのせいか、それとも恐怖のせいか。
ビクッと身体が震える。

「私、翔子に久しぶりに会えて嬉しかった。」
それは嘘偽りのない、彼女の本音だろう。

「……。」

「翔子もそう思っててくれたら嬉しいな……。ごめん、言いたいことはそれだけ。もう席に戻るから安心して?」

「……。」
結局、翔子は美成実へ言葉を返すことが出来なかった。


午後の授業。
そんなもの、今の翔子が集中して受けれるようなものではなかった。
それは真優や、美成実も同様だった。

放課後。
いよいよだ。
立ち上がる美成実。
その視線の先には、翔子がいた。

一度手離してしまい、二度と手に入らないと思っていた大切なもの。
それが、今こうして目の前にいるのだ。

あと少し。
もう少しで再びこの手の中に戻ってくる。
それを考えれば、どんなことでも乗り越えられる。


美成実の元へ、真優と翔子が近寄った。
小柄な真優。
その後ろに隠れるように立つ翔子は、その大半を美成実から隠せていなかった。

「さて、お互いに色々言いたいことはあると思いますが、もう一人呼んでも良いですか?」

もう一人?
関係者などいないはずだが誰だろう?
「もう一人って誰?」

「私達だけでは何かあった時に困りますからね。見届人です。」

「そう……。」
答えになってない。
恐らく意図的だろう。

答える必要などない。
彼女はそう言いたいのだろう。
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