甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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16ー3

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「後で詳しく聞くからねっ!」

「……いえ、何度聞かれても教えませんから……。」

「あはは……風野先輩、また後で……。」

卯佐子が小走りで廊下へ出ていった。
そんな彼女の背中を見ていた二人と、彼女らのクラスメイト達。

苦笑いする翔子と真優。
彼女の様子にほっこりしている他の生徒達。
対称的であった。


一時限目の前。
担任教諭がやって来た。

いつも通りなら、連絡事項を伝えて一時限目の準備をさせるだけだ。
しかし、今日は違った。
隣に翔子以外にとっては初対面の少女を連れていたのだ。


真優には、彼女が誰かすぐに分かった。
前の席の翔子を見る。

先ほどまでのやり取り。
それで克服している。
そう思っていた。
しかし、それは甘かった。

後ろ姿しか見えない。
しかし、それだけで十分だ。
どんな顔をしているか、容易に想像がつく。
俯き、微かに震えている。

こんな彼女の姿は見たくない。
しかし、何もすることが出来ない。
歯痒い真優。


「皆の察しの通り、転校生です。入学してまだ一ヶ月もしてない段階での転入ですが、仲良くするようにお願いしますね。じゃあ自己紹介して下さい。」
気だるそうに言う。

「はい……。弓浜です……弓浜美成実。ち、父の転勤で引っ越して来ました。な、仲良くしてくれると嬉しいです……。」
伏し目がちに言う美成実。

その姿に見覚えのあった真優。
その正体は、すぐに分かった。
翔子だ。
入学したての時、誰とも話すことが出来ずにいた彼女だ。
しかし、同情することは出来ない。
仲良くすることは出来ないだろう。
梨華から聞いた話を鵜呑みすれば、彼女は有害だ。

翔子に近づけてはならない。
ジッと彼女を見てそう思う真優であった。

「じゃあ、空いてる席に行って。教科書はもう用意してありますか?」

「はい。」
そう言うと、美成実は歩き出した。

チラリ。
真優が彼女を見る。

一度も目が合わない。
それだけではない。
彼女はただ一点を見ていた。

翔子を、彼女のみを見ていた。
席に座る。

なんということだ。
転校生である美成実の席は、真優の隣。
つまり、翔子の斜め後ろであった。

担任教諭が一言、二言何か話していた。
しかし、真優と翔子の耳には右から左へ流れていく雑音でしかなかった。

「じゃあ、一時限目の準備しておいて下さいね……。」
そう言うと、教室を出る。
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