甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「ま、真優ちゃん落ち着いて。私が寝過ごしちゃったのが悪いんだから……。」
慌ててフォローする翔子。

「しかし……まぁ、しょ、翔子さんが良いならそれで良いですけど……。」

「……そんなにぎこちないなら、名前で呼ぶの止めたら?」


ピタッ。
空気が凍る。

「……あ、あはは……私また余計なことしちゃったかな?」
苦笑いする卯佐子。

「……いえ、その……ぎこちないことは事実でしたので……。」
真優が言う。
そんな言葉すらぎこちない。

それに無言で頷く翔子。
彼女は苦笑いを浮かべていた。

「まぁ、それは後で二人に話し合ってもらえば良いとして……。」
それは置いておいて……。
そう言いたいようだ。

「……?」

「海部江さん。」
翔子の方を見る卯佐子。

「は、はい。」

「昨日はごめんね。」

「え?」

「……無神経に過去のことを言っちゃったから……。」

「いえ、その……。」
確かに、思い出したくないことを思い出してしまった。
しかし、それと同時に新たに気づいたこともあった。

差引きで言えば、プラスの方が多いかもしれない。
チラリ。
真優を見る。
同時にだったのかは彼女には分からない。
しかし、二人の目と目が合う。

それは一瞬であった。
すぐに目を背ける。

「やっぱり気になる!何があったか教えてよ!」
ずいずいっ。

圧が強い。
ついそれに負けてしまい、言ってしまいそうになる翔子。
しかし、それは真優によって阻止された。

「……待って下さい。」

「えー!ねぇ、海部江さん、教えてよ!」

「駄目です、翔子さん。」
少し強い言い方であった。

これは彼女に従った方が良いだろう。
翔子はそんな真優の言葉に頷いた。

「えー!なんで教えてくれないのー!なんでなんでなんでー!」
じたばた、じたばた。
身体いっぱいに自身の感情を表す卯佐子。

理由など、簡単だ。
うっかり翔子の過去の話を彼女自身に話してしまったのだ。
どこから聞き出したのか分からない。
しかし、そんな大事なことを簡単に話してしまうような者に話してはいけないだろう。
もし、そんなことをしてしまえば最悪翌日には校内の生徒の大半が今の彼女らの状況を知ってしまうだろう。


始業を知らせるチャイムが鳴った。
助かった。
安堵する翔子と真優。
そして、悔しそうにする卯佐子であった。
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