甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「……。」

「……。」

無言の翔子と真優。
それと正反対に、騒然とする周囲。

朝の教室。
彼らの話題は、二人のことであった。
最近当たり前になっていた風景。
翔子と真優が仲良くしているもの。
そんな微笑ましいものも嘘だったかのようであったのだ。


「……た、たのもー。」
ひょっこり。
卯佐子が弱々しい声で廊下から声をかける。

「う、うさちゃん先輩。」
彼女に勝るとも劣らないようなか細い声。
翔子達のクラスメイトの一人だ。

「え、えっと……海部江さんと雨枝さん、いる?」

「い、いますけど……ちょっと待ってて下さい。」
卯佐子へのうさちゃん先輩呼びに対して無反応なことに困惑する。


「翔子ちゃん、真優ちゃん、うさちゃん先輩が呼んでるよ。」
二人へ声をかける。

「え?うさちゃん?」
卯佐子のニックネームを知らない翔子が聞き返す。

「あっ、風野先輩のことです。ほら、昨日の先輩です。」
真優が代わりに答える。

「あっ、あぁ……。」
彼女のことか。
思い出した翔子。

真優のように小柄で可愛らしく幼い印象の先輩。
そして、自身の中学生の頃のことをなぜか詳しく知っている者。

「ど、どうも……あはは……。」
弱々しい声。
そこには先輩の威厳などなかった。

「おはようございます、風野先輩。」
真優が挨拶をする。

改めて彼女を見る翔子。
風野という名前。
そして、彼女の幼いながらもいくつか似ているところのある顔。

「あ、あの!先輩、お姉さんいらっしゃいます?大学生くらいの……。」

「え?いる……けど……。」
そこまで言って、卯佐子はあることを思い出した。


それは、数日前のことだ。
夕飯時、彼女の姉であるあずみが携帯電話を見ながらニヤニヤしていた。

「どうしたの、姉ちゃん。」

「いや、これ見てよ……。」

そこに写るのは、彼女と、もう一人。
その美少女は、卯佐子も知る人物であった。

「なっ!?あ、海部江さん!?なんで!?姉ちゃん、なんで!?」

「この前一緒に遊んじゃったんだー。」

「な、なんだってー!?」


「あぁ……確か姉も海部江さんのこと言ってたわ……。」

時は戻り、現在。
自身の姉と、翔子の関係を思い出した卯佐子であった。

「なるほど、つまり、しょ、翔子さ、さんが無断欠席したのは風野先輩のお姉さんのせいということなんですね。」
真優が言う。
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