甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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ここは彼女自身のクラスでも、友人のクラスでもない。
そして、特別仲の良い後輩がいるわけでもない。
そんなクラスに、わざわざやって来たのだ。
その理由は、彼女にしか分からなかった。

「それで、うさちゃん先輩今日はどうしたんですかぁ?」
まるで真優に話すかのような話し方。
とても歳上に向けるものではない。

「……あ、海部江さんってまだいるかな?彼女に用事があるの。」

「あまえさんですか……?えっーと、うちのクラスには二人いるんですけど……。背が高い美人な方ですか?それともちんまい可愛い方ですか?」

「え?海部江さんって二人いるの?双子?」
双子。
もしそうならば、初耳だ。

海部江と雨枝。
違う漢字だが、呼び方は同じであった。
これは、その為に生まれてしまったた問題であった。

「違いますよー、双子じゃないですよ。漢字は違いますし……。」
黒板に二人の名前を書く。

「あー、私が用あるのはこっちの子だよ、こっちの海部江さん。」
トントントン。
ひとさし指で黒板を三度叩く卯佐子。
海部江と書かれた方だ。

「あー、なら美人な方ですね、腰抜かすほどの……。」

……そこまでなのか。
しかし、申し訳ないが、それらしい生徒は教室にも廊下にもいなかったな。
そんなことを思う卯佐子。

「……もしかしてもう帰っちゃった?」

「もう行っちゃいましたねー……。確かモッチー達と一緒にカラオケに行くって言ってましたよ。」

「モッチー?」
誰だ、それは?
可愛らしく首をかしげる卯佐子。

「あぁ、クラスの子ですよ。」

なんだ、ただのクラクメイトか。
なら特に興味はないな。
「そっか。ちなみにどこのカラオケか分かる?」

翔子のクラクメイトに彼女が向かった場所を聞いた卯佐子。
すぐさまそこへ向かうのであった。


息が上がる。
苦しい。
吐き気がする。
嫌な鉄の味がする。
それでも走る卯佐子であった。

街中へ行くにつれ、人が増えていく。
彼女のに、制服のまま遊びに来ている者も大勢いた。

ドンッ!
ふらふらとよろけてしまい、隣を歩く女性にぶつかってしまった。

「ご、ごめ、ごめんなさい……。ついふらついてしまって……。」
息も絶え絶えな卯佐子。
彼女が謝る。
頭がくらくらし、視界がぼやける。

「い、いえ、こちらこそすみません。お、お怪我はありませんか?」
オロオロ。
大人っぽい見た目とは裏腹に慌てている。
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