甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「……えっ?……あの、ぐえっ!?」
突如肩を掴まれる真優。
そして、そのまま引っ張られ、胸元に抱かれてしまった。

真優の鼻にほのかに香る良い匂い。
そして、顔にかかる柔らかく大きな圧。
じたばたと両手を動かし抵抗する真優であった。
しかし、彼女の抵抗は無意味であった。

「もー、お母さん!雨枝さんは私の友達だよ!」
ぷんすか。
再び怒る翔子。

違う、そうではない。
確かにそこを否定するのは正しいだろう。
しかし、それは今でなくとも良い。
それよりも、早く助けてほしい。
そう思う真優であった。

「お母さん、雨枝先輩苦しんでるから。……ね?」

良かった。
なんとか助かった。
そう思い、安堵する真優。

落ち着けたところで、海部江姉妹の母の姿をよく見る。
なるほど。
翔子の容姿は彼女ゆずりなのだな。
そんなことを思う真優であった。

「あら、なら梨華が代わりにぎゅってさせてくれるの?娘だからって遠慮しないけど良いの?」
にやり。
不適な笑みを浮かべる。

「……。」
無言。
しまった、やってしまった。
そう言いたげな表情をする梨華。

目が泳いでいる。
どうやら彼女は抱き締められるのが苦手なようだ。

「あっ!ぎゅってして!私なら良いよ、お母さん!」
にこにこ。
翔子が声を上げる。
そして、両手を目一杯広げた。

「えー?翔子は身長高いから無理よー。」

「えー!?」

「まぁまぁ、二人とも。お母さん、そんなこと言わないで?ね?……あと私は今から雨枝先輩を送っていくね。」
二人を宥める梨華。
そして、さらっと自身の逃げ道を作っている。

「あら、そうなの?なら私が送って行く?それなら車出すけど……。」

「い、いえ、そこまでして頂くわけには……。」
真優が言う。

「遠慮しないで?こんな可愛い子が夜に出歩いてたら危ないよ?」

「大丈夫だよ、私も着いていくから。」

「余計に不安よー。梨華も可愛いんだからー。」
梨華の言葉にそう返す。

二人とも、小柄だ。
端から見れば、小学生が夜出歩いているように見えてしまうだろう。

「えー!?私はー?」

「あんたは可愛いっていうより美人って感じだからなぁ……。」

ぷんすか。
本日三度目であった。


「いってきまーす。」

「お邪魔しました。」
軽く頭を下げる。

また来てね。
翔子が満面の笑みで手を振る。
彼女の母も微笑んでいる。
印象は悪くなかったようだ。
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