甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「へー、そんなことがあったんだね。」

「はい、そうなんです。流石にその時は肝を冷やしました……。未だになぜそうなったのか分かりません。」

「そっかぁ。不思議なこともあるんだねー。」

リビングで話している二人。
彼女らの話の中心。
それは、主に真優の中学の時の思い出話であった。

少し内容を誇張してしまった真優。
しかし、目の前で興味津々な翔子の姿を見てしまっていては、それも仕方のないことなのかもしれない。

大丈夫。
どうせ中学でのことなのだ。
知られるはずはない。
それに、嘘ではないのだ。
それよりも、今は彼女のこんな楽しそうな顔が見れたのだ。
それで良しとしよう。
そんなことを思っている真優であった。


「お二人さーん!お待たせしましたー!」
キッチンからの声。
梨華のものだ。


出来上がった料理からどんどん運ばれて行く。
手際が良く、梨華が普段から料理をし慣れているのが分かる。

「へいお待ちっ!」
にこにこ。
途中から運ぶのを手伝い始めた翔子。
満面の笑みで真優の座っている席の机に皿を置く。

「ありがとうございます。」

「いっぱい食べてねっ!」

「遠慮しないで下さいね。」

にっこり。
海部江姉妹に言われる。

そうは言われても、遠慮してしまう。
それを言おうと口を開く。
しかし、言葉は出なかった。

真優の視線の先には翔子。
すらりと伸びる手足。
それに比例し、当然高くなる背丈。

まさか。
真優が、ある仮説を立てる。

目の前に置かれた出来たての料理。
それらを食べれば彼女のようになれるのではないか?

「……うん?」
真優の視線に気づいた翔子。
首をかしげ、愛らしく目をパチクリさせる。

「い、いただきますっ!」
力強くそう言うと、真優はほかほかのからあげを食べ始めた。

「ふふふ。たーんと、召し上がれっ。」

「ほら、お姉ちゃんも食べてね?……いただきます。」


三人が食卓を囲んだ。
極々自然に始まった夕飯だ。

ふと、真優の頭に疑問が浮かんだ。
「そ、そういえばご両親は?」

「父は出張で、母は友人と夕食を食べてくるそうです。」
真優の疑問に答えたのは、梨華であった。

「え?じゃあお母さん今日帰り遅いの!?」
驚きの表情。
梨華の返答に先に反応したのは、真優ではなく、姉である翔子であった。

「うん、そうだよ。さっき連絡来てた。」
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