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藍堂流奈と蟻喜多利奈の日常
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表札に記された名字。
それは、蟻喜多というものである。
流奈と一緒にいたものは、利奈であった。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
帰宅した利奈。
そして、訪問者である利奈。
それぞれがそれぞれの挨拶をして、玄関から入って行く。
勉強会。
それは建前だ。
利奈にとって、今回の最大の目的は、他にあった。
「狭い部屋でごめんね……。」
「滅相もないです!」
嬉しさが込み上がる。
つい声が上擦ってしまう流奈。
深呼吸。
少しでも多く、この場の空気を肺へ、そして細胞へ浸透させようと彼女は必死であった。
「あ、おかえり、利奈。」
「……は?」
その声に、冷たい声で反応した流奈。
彼女らを出迎える声をかけ、そこにいたのは路歩子であった。
そんな彼女は、まるで自宅でくつろぐかのようにいた。
利奈の部屋に唯一あるベッド。
その上で呑気に寝転がっているのだ。
利奈の部屋にあるということは、間違いなく利奈のもののはずだ。
それなのに、路歩子がさも当たり前かのようにその上にいるのだ。
神聖な、誰も汚してはならない聖地。
そんな場所に、いけしゃあしゃあと入り込んでいる。
流奈はその事実に怒りが込み上げたのだ。
「あ、飲み物とおやつ持ってくるね。先に二人は勉強会の準備しててねー!」
ニコニコと利奈がそう言い奥に引っ込む。
すると、必然的に路歩子と流奈が二人きりになってしまう。
どれほど空気が読めなくとも分かるだろう。
今、この部屋の空気は張り詰めている。
「……なんでそこにあんたがいるの?」
先ほどタクシーの運転手に話しかけた時のように冷たい声で流奈が路歩子へ言葉を投げ掛ける。
「おぉ、恐い恐い……今をときめく超人気アイドルから出たとは思えないほど恐い声だね。」
ふふふ。
笑いながら路歩子が返す。
言葉とは裏腹。
表情から察せられるように、彼女はまるで恐怖を感じてなどいない。
「良いから離れて。そこはあんたなんかがいて良い場所じゃない。」
「……私にはそれは通用しないよ?」
「……。」
それ。
路歩子は分かっていたようだ。
為す術なしだ。
「分かったなら、私は引き続き利奈に包まれてるから邪魔しないで。」
「やめ、離れてよ!」
寝ている彼女を無理矢理起こそうと、引っ張る。
「無理。その要求には答えられない。」
さも、当たり前かのように、この世の真理かのように路歩子が言う。
それは、蟻喜多というものである。
流奈と一緒にいたものは、利奈であった。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
帰宅した利奈。
そして、訪問者である利奈。
それぞれがそれぞれの挨拶をして、玄関から入って行く。
勉強会。
それは建前だ。
利奈にとって、今回の最大の目的は、他にあった。
「狭い部屋でごめんね……。」
「滅相もないです!」
嬉しさが込み上がる。
つい声が上擦ってしまう流奈。
深呼吸。
少しでも多く、この場の空気を肺へ、そして細胞へ浸透させようと彼女は必死であった。
「あ、おかえり、利奈。」
「……は?」
その声に、冷たい声で反応した流奈。
彼女らを出迎える声をかけ、そこにいたのは路歩子であった。
そんな彼女は、まるで自宅でくつろぐかのようにいた。
利奈の部屋に唯一あるベッド。
その上で呑気に寝転がっているのだ。
利奈の部屋にあるということは、間違いなく利奈のもののはずだ。
それなのに、路歩子がさも当たり前かのようにその上にいるのだ。
神聖な、誰も汚してはならない聖地。
そんな場所に、いけしゃあしゃあと入り込んでいる。
流奈はその事実に怒りが込み上げたのだ。
「あ、飲み物とおやつ持ってくるね。先に二人は勉強会の準備しててねー!」
ニコニコと利奈がそう言い奥に引っ込む。
すると、必然的に路歩子と流奈が二人きりになってしまう。
どれほど空気が読めなくとも分かるだろう。
今、この部屋の空気は張り詰めている。
「……なんでそこにあんたがいるの?」
先ほどタクシーの運転手に話しかけた時のように冷たい声で流奈が路歩子へ言葉を投げ掛ける。
「おぉ、恐い恐い……今をときめく超人気アイドルから出たとは思えないほど恐い声だね。」
ふふふ。
笑いながら路歩子が返す。
言葉とは裏腹。
表情から察せられるように、彼女はまるで恐怖を感じてなどいない。
「良いから離れて。そこはあんたなんかがいて良い場所じゃない。」
「……私にはそれは通用しないよ?」
「……。」
それ。
路歩子は分かっていたようだ。
為す術なしだ。
「分かったなら、私は引き続き利奈に包まれてるから邪魔しないで。」
「やめ、離れてよ!」
寝ている彼女を無理矢理起こそうと、引っ張る。
「無理。その要求には答えられない。」
さも、当たり前かのように、この世の真理かのように路歩子が言う。
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