13 / 34
海部照姉妹の日常
4
しおりを挟む
「ここに来る途中、泥だらけの子達が走って行ったけど……。」
「それには訳があるんです!」
「良いよ、もう帰りな。」
「で、でも……。」
「良いから……私の自己満足だし……あんたを助けた訳じゃないから……。」
「……あずさちゃん、ありがとうね!」
あずさの意思を汲み取ったのだろう。
彼女は深々と頭を下げた後、走ってその場を去るのであった。
「だからあんたの為じゃ……ってもういないか……。」
「あずさ……あんた、またこんな揉め事起こして……。」
呆れ気味に言う蜜柑。
「はいはい、悪う御座いました、品行方正なお姉様。」
悪びれる様子もなく、あずさが返す。
反省の色はない。
それどころか、どこか彼女を挑発しているような態度だ。
「あんたね、そんな他人にばかり……。」
「はいはい、お説教は良いよ。また反省文書けば良いんでしょ?」
蜜柑の言葉を遮り、あずさが声を被せた。
「……もう良い。行きなさい。」
「はいはい……言われなくてもそうするよ……。」
呟くようにそう言うと、あずさは本当にその場を立ち去ってしまうのであった。
そろそろ自分も戻ってしまおう。
そう思い、生徒会室へ向かおうとした蜜柑。
「あ、あのっ!」
そんな彼女へ届いた声。
先ほどあずさに庇われていた女子生徒だ。
彼女はもう立ち去ったはずだ。
それなのに、まだこの場にいた。
「……どうしたの?」
「あずさちゃん、私を助けてくれたんです!」
「……。」
知ってる。
そんなこと、言われなくても分かっている。
「生徒会長が誤解したままあずさちゃんを怒ってしまうのは嫌だったので……。」
違う。
そんなことで怒っていたわけではない。
「そう。ありがとう、教えてくれて。」
「で、では失礼します……。」
そう言い、彼女が去ろうとする。
「あ、ちょっと良い?」
それを止めるのは、蜜柑。
「……?」
「今回は、たまたまあの子が助けてくれたようだけど……。」
「……。」
「次からは他人の助けを期待しない方が良いわよ?」
「は、はい……。」
「なら良いわ。じゃあね。」
「はい、失礼します……。」
蜜柑は知っていた。
一度でも助けてしまえば、それがやがて当たり前になってしまう。
そして、今度も助けてもらえると勝手に期待し、断れば勝手に失望して憎しみが生まれる。
だから、過度に干渉してはいけないのだ。
「それには訳があるんです!」
「良いよ、もう帰りな。」
「で、でも……。」
「良いから……私の自己満足だし……あんたを助けた訳じゃないから……。」
「……あずさちゃん、ありがとうね!」
あずさの意思を汲み取ったのだろう。
彼女は深々と頭を下げた後、走ってその場を去るのであった。
「だからあんたの為じゃ……ってもういないか……。」
「あずさ……あんた、またこんな揉め事起こして……。」
呆れ気味に言う蜜柑。
「はいはい、悪う御座いました、品行方正なお姉様。」
悪びれる様子もなく、あずさが返す。
反省の色はない。
それどころか、どこか彼女を挑発しているような態度だ。
「あんたね、そんな他人にばかり……。」
「はいはい、お説教は良いよ。また反省文書けば良いんでしょ?」
蜜柑の言葉を遮り、あずさが声を被せた。
「……もう良い。行きなさい。」
「はいはい……言われなくてもそうするよ……。」
呟くようにそう言うと、あずさは本当にその場を立ち去ってしまうのであった。
そろそろ自分も戻ってしまおう。
そう思い、生徒会室へ向かおうとした蜜柑。
「あ、あのっ!」
そんな彼女へ届いた声。
先ほどあずさに庇われていた女子生徒だ。
彼女はもう立ち去ったはずだ。
それなのに、まだこの場にいた。
「……どうしたの?」
「あずさちゃん、私を助けてくれたんです!」
「……。」
知ってる。
そんなこと、言われなくても分かっている。
「生徒会長が誤解したままあずさちゃんを怒ってしまうのは嫌だったので……。」
違う。
そんなことで怒っていたわけではない。
「そう。ありがとう、教えてくれて。」
「で、では失礼します……。」
そう言い、彼女が去ろうとする。
「あ、ちょっと良い?」
それを止めるのは、蜜柑。
「……?」
「今回は、たまたまあの子が助けてくれたようだけど……。」
「……。」
「次からは他人の助けを期待しない方が良いわよ?」
「は、はい……。」
「なら良いわ。じゃあね。」
「はい、失礼します……。」
蜜柑は知っていた。
一度でも助けてしまえば、それがやがて当たり前になってしまう。
そして、今度も助けてもらえると勝手に期待し、断れば勝手に失望して憎しみが生まれる。
だから、過度に干渉してはいけないのだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
蟻喜多利奈のありきたりな日常2
あさまる
ライト文芸
※こちらは『蟻喜多利奈のありきたりな日常』の続編となります。
※予約投稿にて最終話まで投稿済です。
この物語は、自称平凡な女子高生蟻喜多利奈の日常の風景を切り取ったものです。
※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。
苦手な方はご遠慮下さい。
※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。
誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。
甘え嬢ずな海部江さん。
あさまる
ライト文芸
※最終話2023年2月18日投稿。(完結済)
※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。
苦手な方はご遠慮下さい。
人は接する者によって、態度を変えている。
それは、多かれ少なかれ、皆そのはずだ。
どんな聖人君子でも、絶対の平等などありえない。
多かれ少なかれ、二面性があり、それが共存して一つの人格となっている。
それは皆が持っているものだ。
そのはずなのだ。
周囲の視線。
それが一変した。
尊敬や羨望の眼差し。
それが嘲笑や蔑視へ変わった。
人間とは、身勝手な生き物で、自身の抱いたイメージとかけ離れた者を見るとそれを否定する。
完璧主義の押し付け。
二面性を認めず、皆は彼女に完璧を求めた。
たとえそれが本人の嫌がる行為であっても善意の押しつけでそれを行うのだ。
君はそんな子じゃない。
あなたには似合わない。
背が高く、大人びた見た目の海部江翔子。
背が低く、幼い印象の雨枝真優。
これは、そんな二人の少女の凸凹な物語。
※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。
誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。
毎週土曜日更新予定です。
※また、タイトルの読み方は『あまえじょうずなあまえさん。』です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あなたにかざすてのひらを
あさまる
ファンタジー
※最終話2023年4月29日投稿済。
※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。
苦手な方はご遠慮下さい。
紅花かすみ。
ごく普通な女子高生。
そんな彼女には、幼馴染が二人いた。
いつから一緒にいるのか。
どのようなきっかけで仲良くなったのか。
そんなものは覚えていない。
それでも、かすみは彼女らの幼馴染であった。
雲一つない青空。
真っ黒な日傘と真っ赤な日傘。
今日もかすみは彼女らと登校するのであった。
※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。
誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる