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「……。」
彼はそこまで心配してくれていたのか。
罪悪感。
しかし、厳密に言えば少し違ったものが、華子の胸をチクリと刺した。
「鯉崎や……そこに隠れている藤柴のお陰……なのかな?」
廊下の方。
ここからでは見えないはずの者を見ているような視線を送りながら、飛鳥が言う。
「あっ……。」
彼がいるのを分かっていたのか。
つい、声が出てしまった華子。
「ど、どうもっす……あはは……。」
廊下から、ヒョコっと顔を出す丸雄。
少し気まずそうだ。
「これからも、鼬原を……お前達の番長を守ってやれよ。」
「も、もちろんっす!」
華奢な彼から力強い宣言。
頼もしいかと聞かれれば、頷き難いものではある。
しかし、それでも気持ちの良い返事は二人の心にしっかりと届いた。
「……そうか。……ところで、鼬原?」
「は、はい。」
「武蔵野に……どうやって勝ったんだ?」
満を持しての質問。
恐らくそれが最大の謎であったのだろう。
「え?あー……それは、その……。」
入学式の日。
あの日のことを話し出した華子。
拙いながらも一生懸命。
時に相槌て、時に表情によるリアクションを見せながら、飛鳥は最後まで彼女の話を聞いていた。
「……若いのにこの少しの期間に苦労してきたんだな……。」
「あはは……分かってもらえると嬉しいです……。」
「これからも大変なことは多いだろうが、お前なら大丈夫だろうな。」
「そうですか?ありがとうございます。」
「あぁ。だってきっと、この先あいつらが助けてくれるだろ?」
「……はい。私も彼らに恥じないような存在になりたいです。」
「お前なら、なれるさ。」
きっと、根拠のないものなのだろう。
しかし、今の彼女にはこれ以上にないほどに嬉しい言葉であった。
「ありがとうございます!それでその……。」
「うん?」
「白辰との争い事が解決し終わった時のことなんですけど……。」
「あ、あぁ。」
「今までの黒高のイメージを変えたいと思ってるんです。」
これこそが、今の彼女が本当にやりたいことであった。
白辰高校と並び、屈指の不良高校。
学力という意味だけならば仕方がない。
しかし、素行の悪さで有名である。
悪名。
そんなものはいち早く捨てた方が良いに決まっているのだ。
「お、おぉ!そうか!それで、まずはどうするんだ?」
「はい、まずは……。」
彼はそこまで心配してくれていたのか。
罪悪感。
しかし、厳密に言えば少し違ったものが、華子の胸をチクリと刺した。
「鯉崎や……そこに隠れている藤柴のお陰……なのかな?」
廊下の方。
ここからでは見えないはずの者を見ているような視線を送りながら、飛鳥が言う。
「あっ……。」
彼がいるのを分かっていたのか。
つい、声が出てしまった華子。
「ど、どうもっす……あはは……。」
廊下から、ヒョコっと顔を出す丸雄。
少し気まずそうだ。
「これからも、鼬原を……お前達の番長を守ってやれよ。」
「も、もちろんっす!」
華奢な彼から力強い宣言。
頼もしいかと聞かれれば、頷き難いものではある。
しかし、それでも気持ちの良い返事は二人の心にしっかりと届いた。
「……そうか。……ところで、鼬原?」
「は、はい。」
「武蔵野に……どうやって勝ったんだ?」
満を持しての質問。
恐らくそれが最大の謎であったのだろう。
「え?あー……それは、その……。」
入学式の日。
あの日のことを話し出した華子。
拙いながらも一生懸命。
時に相槌て、時に表情によるリアクションを見せながら、飛鳥は最後まで彼女の話を聞いていた。
「……若いのにこの少しの期間に苦労してきたんだな……。」
「あはは……分かってもらえると嬉しいです……。」
「これからも大変なことは多いだろうが、お前なら大丈夫だろうな。」
「そうですか?ありがとうございます。」
「あぁ。だってきっと、この先あいつらが助けてくれるだろ?」
「……はい。私も彼らに恥じないような存在になりたいです。」
「お前なら、なれるさ。」
きっと、根拠のないものなのだろう。
しかし、今の彼女にはこれ以上にないほどに嬉しい言葉であった。
「ありがとうございます!それでその……。」
「うん?」
「白辰との争い事が解決し終わった時のことなんですけど……。」
「あ、あぁ。」
「今までの黒高のイメージを変えたいと思ってるんです。」
これこそが、今の彼女が本当にやりたいことであった。
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学力という意味だけならば仕方がない。
しかし、素行の悪さで有名である。
悪名。
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「はい、まずは……。」
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