はりぼてスケバン

あさまる

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「いや、先生に呼び出されただけだって!大丈夫だから着いて来ないで!」

「しかし、心当たりがないのだろう?罠かもしれないだろう。」

「そ、そんな罠って物騒な……。」
華子には考え付かないような思考。
それに戸惑う華子。

「まぁまぁ。姐さん、とにかく行こうっす。」
二人を宥めるように丸雄が言う。

「え、いや、それはそうだけど……。」
彼の言うことはもっともだ。
しかし、こんな大人数で向かうわけにはいかない。


そろそろ行かなければならない。
教室を出る。
そんな彼女に皆が着いていこうとする。

「ちょ、ちょいちょいちょいちょい!」
慌てて皆を制止する華子。

「うわっ!?姐さん、急に止まんないで下さいっすよ!」

「いや、止まるよ!なんで皆着いて来ようとしてるの!?着いて来なくて大丈夫って言ってるでしょ!?」

「そういうわけにはいかないんっすよ!」

押し問答。
互いに一歩も引かない華子と丸雄。
しかし、彼女にはもう時間がない。

「も、もうっ!好きにしてっ!」
そう吐き捨てると、小走りで廊下を進むことにした華子であった。

廊下は走ってはいけない。
そんな初歩的なことを破ってしまっている。
彼女の中に、少しの罪悪感、そして、少しの快感がグルグルと駆け巡る。
何とも言えない不思議な感覚の華子であった。


緊張か。
それとも動いたせいか。
華子の心拍数は必要以上に高いものになっていた。

目の前には扉。
生徒指導室。
華子は学生生活内で無縁な場所だと思っていた。
しかし、一年生のうちからこの場所に厄介になることになってしまった。

深呼吸。
そして、三回のノック。
すると、彼女の聞き覚えのある声が中から聞こえてきた。
それは、彼女の担任教諭である飛鳥のものであった。

見知った者の声。
そのお陰で少しは緊張が緩んだ。
しかし、それも室内に入ると戻ってしまう。

「……俺達も行くぞ。」

「はいっす!」

「だ、大丈夫だって!」
扉を挟んだ華子と亥玄達の攻防。


「す、すみません。……お騒がせしました……。」
深々と頭を下げる華子。
そこには飛鳥だけでなく、生徒指導の番仁朗もいた。

長机を挟み、彼らは窓側に座っている。
そして、恐らく彼女の為に用意されたパイプ椅子が一脚。

「あはは、まぁ、ここじゃあ騒ぎなんで日常茶飯事だから気にしないで。」
飛鳥が言う。
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