はりぼてスケバン

あさまる

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「これからも姐さんの一派として恥じないように精進して行くっす!」

「だからその姐さんって言うの止めてよー!」
それは、心からの彼女の叫びであった。


そうこうしているうちに、校舎が見えてきた。
その時、華子の瞳に見知った者の後ろ姿が写る。
亥玄だ。
登校中の彼の姿であった。

「おーい、鯉崎君、おはよー!」

「お、おう。」
突如名前を呼ばれ、振り向く亥玄。

「一緒に行こうよ。」
丸雄の自転車から降り、華子が彼に言う。

それに頷くと、三人で登校することとなった。
丸雄はスピードを合わせるべく、自身も降りて転がして行く。

前へ進む三人。
自身らが、やがてこの黒龍高校で有力な一派として知られるということを、この時の彼らは気づかなかった。


「姿が見えないと思っていたが……入院してたんだな、お前。」

「そ、そうっす。」

「もー、鯉崎君。先生が言ってたじゃん。私を助けてくれたんだよ。」

「そ、そうだったか?」

「あ、あはは。」
丸雄は、二人のやり取りに苦笑いしてしまう。

いつの間に二人はこれほど仲良くなったのか。
考えるまでもない。
自身が入院している期間中だろう。
しかし、この短期間で一匹狼の亥玄を取り込んだ。
恐ろしいことだ。


「いやぁ、シバ犬ちゃんが退院して良かったねー、めでたい、めでたい!」

時は進み、昼休み。
最早恒例となった生徒会室でのやりとり。
しばらく休んでいた丸雄へ、心司が言っている。

「ありがとうございます!嬉しいっす!」
ニコニコ。
無邪気な笑みを浮かべる丸雄。

癒される。
それに尽きる。
ほのぼのとする三人。
そう、三人だ。
亥玄もそう思っていたのだ。

「さて、祝福ムードはここまでとして……。」
先ほどまでとは明らかにトーンが違う。
真剣な声色で心司が言う。

「……。」
この場にいる皆が、彼をジッと見つめる。

「今後、どうしようかね……。」

「そうっすよねー。」

心司と丸雄。
二人が華子を見る。
彼らが言わんとしていることは彼女にも分かる。

「……?なぜ二人は鼬原を見てるんだ?」
取り残された亥玄。

そうだ。
この場にいる彼だけが、華子の秘密を知らないのだ。
双葉を倒した渦中の正体不明の女子生徒。
それこそが、彼女であるということを分かっていないのだ。

「え、えっとー……ほら、私紅一点だし!」
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