はりぼてスケバン

あさまる

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「ちょっとでもあの人に近づけるように……ちょっとでもあの人の役に立てるようにって思って……それで……。」

「へー、蝶華ちゃん、その辰美って人のこと好きなんだねー。」
華子の何気ない一言。

「っ!?」
爆発。
そんな比喩がピッタリな蝶華のリアクション。

オーバー過ぎる。
先ほどまでは少なからずクールな印象の美少女であった。

これはもしかすると、という考え。
ニヤリと口角の上がる華子。

これは、面白いおもちゃになるかもしれない。
彼女の中に、意地の悪い小悪魔が生まれた。

「どんな人、どんな人?教えてよー。」
ツンツン、ツンツン……。
蝶華の脇腹を突っつきながらニヤニヤとウザったい絡みをする華子。
とても白辰高校の実力者の一人にする態度ではない。

「う、うるさいっ!」
赤面し、声を荒らげる蝶華。

「ほれほれー。」
可愛らしい。
本来恐いはずの彼女が可愛くて仕方がない。

「ちょ、ちょっと……!」

もう少しおちょくっても良いかもしれない。
しかし、そろそろ止めて上げよう。
彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいるようにも見える。


「尾谷。」
彼女を呼ぶ男子の声。
野太く力強いものだ。

ぞろぞろと彼女らのところへやってくる。
白辰の制服を着ている者達だ。

「……。」
先ほどまで調子に乗っていた華子であったが、彼らの姿を確認するや否や、俯き黙り込んでしまう。

「どうした?」
冷酷で鋭い声。
今までの焦っていた彼女の声ではない。
これが本来の蝶華なのだろう。

「黒龍の奴らとやり合ってるの、こいつらだ。」

ドサドサ……。
まるでゴミでも捨てるかのように投げ捨てる。
それは、彼ら同様白辰の生徒だ。

「……ひっ!?」
そのあまりにも悲惨な光景に、短い悲鳴を上げる華子。
腰が抜け、情けなく座り込んでしまう。

彼女の視線の先。
そこには、投げ捨てられた白辰の生徒達がいた。
その様子があまりにも酷いものであったのだ。

制服はボロボロで、血まみれ。
うめき声を上げている。
辛うじて生きている。
それ以上には説明不要なほど悲惨な姿だ。

「……あぁー、なるほどね、こいつらか。……痛そうだね、可哀想に。まぁ、自業自得だね。」
ボソリ。
無表情に呟く蝶華。
その声も、感情など一切含まれていない棒読みなものであった。

だからこそだろうか。
まるで思考が読めない。
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